●地球防衛艦隊再建(2)

 西暦(地球歴)2200年から新たに建造された艦艇は、大きく超大型旗艦、主力戦艦、戦闘空母、汎用巡洋艦、高速駆逐艦、高速補給艦に分類される。順に見ていこう。

 “超大型旗艦”は、乾燥重量9万8000トンに達する規格外の大型艦である。船体規模の大きさは「ヤマト」のおおよそ五割増しあった。しかも「ヤマト」と違って、移民船用の装備は乗員居住区として必要なもの以外は搭載されなかった。
 船体内部には、新型の大馬力波動機関、波動砲発射時の隙をなくすためでもある無数の補助動力機関、「ヤマト」の二倍の戦力となる12門もの20インチ3連装ショック・カノンや、埋没式の対空パルスレーザー砲などの無数の武装が据え付けられた。そして艦首に連装で装備された新開発の増幅装置を加えた波動砲、通称「拡散波動砲」が人目を惹いた。就役時未搭載だった艦載機も、小型機なら十数機が搭載可能なだけの格納スペースが確保されていた。
 スタイルも機能美に満ちあふれた洗練さを持ち、まさに復興した地球を象徴するような素晴らしい艦であった。しかも艦の自動化が推し進められ、「ヤマト」との重量トン当たりのマンパワーは半分近くになっている。
 無論、艦隊旗艦として使うため、指揮通信能力も極めて高いレベルで設置されていた。このため船体に対してやや小振りに思える艦橋構造物は、他の艦艇とは大きく異なった形状をしている。「耳」のように見える艦橋左右の張り出しは、次世代型のフェイズドアレイ型タキオンレーダーとタキオン通信システムの集合体であった。これらのシステムは、船体内部深くに設置された中枢コンピュータと連動する事で破格の艦隊運用能力と探知能力を誇っている。ただし、この通信指揮システムは非常に高価なもので、当初は旗艦クラスにしか搭載されていない。また能力自体も、依然として列強屈指のものがある。
 航空戦以外での戦闘力は「ヤマト」の二倍と判定され、新開発の「拡散波動砲」の破壊効率の高さは集束型の波動砲を装備している「ヤマト」とは比較にならないと判断されていた。この新鋭艦より「ヤマト」が優れていたのは、軍艦として不要なまでの耐久力、持ち前の搭載能力と防空力、そして波動砲の貫通力だけであった。
 そして超大型旗艦に一番求められたのは、「艦隊」という大きなシステム上での旗艦設備と残存性の高さであるため、「ヤマト」が持つ個艦レベルでの優位はほとんど必要のないものだった。旗艦に不足する能力は、他の艦艇が役割を補えばよいからだ。

 一番艦の建造は、地球復興のため建造が急がれたが、最新型の自動機械群を取り揃えた工廠が総力を傾けても約半年がかかった。また初期計画でさらに4隻の建造が一年程度の建造予定で計画され、後に改良型を含めてさらに6隻が追加発注された。
 一番艦を含めた初期計画の5隻の使用目的は、1隻が地球防衛艦隊全艦隊旗艦、残り4隻のうち1隻は本国艦隊となる月面艦隊旗艦、他が常に一個艦隊が活動予定の外周艦隊第一から第三艦隊の旗艦用だった。
 ネームシップともなる一番艦の建造は、早くも2200年2月に超大型艦用の特別建造ドックで始まり、8月に日本地区新呉造船所にて無事就役した。竣工式には、地球の復興を祝う意味も込めて、2130年もののブルゴーニュ産シャンパンが使われたという。
 一番艦、ネームシップの名は「アンドロメダ」。クラス名も「アンドロメダ級」とされた。新たに設定された旗艦クラスの命名基準は、「神話や伝説上の名称を用いた天体の名」で、特にアンドロメダ級となる同クラスは、女性名称が続けられる事になった。
 しかし人々は、マゼラン星雲をしのぐ巨大星雲であるアンドロメダ星雲から取られたのだろうと考え、またそれは間違っていなかった。新造戦艦は、ガミラスを完全に克服するために建造されたのだ。
 なお、二番艦は太陽系第十番惑星から取った「エリス」が、三番艦は第十一番惑星から「ネメシス」が、四番艦は金星から「アフロディーテ」、そして月面艦隊旗艦となる五番艦には月の女神「アルテミス」の名が与えられた。
 嫉妬や復讐を象徴する名称が与えられた事に苦言もあったが、太陽系を守る艦隊の名称としては相応しいとおおむね好評だった。また、戦乱の勃発により急遽追加建造が決まった5隻については、今度は命名基準の枠を広げて男性名の天体名が与えられる予定だった。しかし、戦艦としての完成の機会を逸してしまったため、結局別の形で採用される事になる。
 また、実験艦としてシンガポールの地下ドックで建造が進められていた6番艦は、現地命名で当初「しゅんらん(春蘭)」という名が与えられる予定だった。だが、建造中に「アンドロメダ」が喪失したため所属が正規艦となり艦名の変更も行われ、「アンドロメダII」とされている。
 なお各艦の戦歴だが、後に説明するガトランティス戦役に参戦したのが「アンドロメダ」と「エリス」になる。この時「アンドロメダ」は全艦隊旗艦で、「エリス」は外周艦隊第一艦隊旗艦任務に就いていた。だが「アンドロメダ」は戦没、「エリス」も第二次土星沖会戦の中盤で敵旗艦からの遠距離砲撃を受けて大破。生き残れたのが奇跡、流石アンドロメダ級と言われたほどの損傷を負って、長らく修理ドックに身を横たえる事になる。他はガトランティス戦役には間に合わず、月面地下で建造中だった「アルテミス」と、ラグランジュポイントで建造中だった「アフロディーテ」は建造施設内で大きく損傷し、破棄にこそ至らなかったが建造はいったん延期され、その後新装備受け入れのため改設計された事も重なり就役を大きく引き延ばしている。
 「ネメシス」と「アンドロメダII」は、デザリアム戦役の敵母星遠征作戦に参戦しており、共に大きく活躍している。またその後も外周艦隊旗艦任務に交互に就き、後の銀河大戦では「ネメシス」が護衛艦隊任務の艦隊旗艦として派遣され、ボラー連邦軍との交戦も記録している。そしてアンドロメダ級全てが、近代改装のためのドック入りもしくは建造中の時、ディンギル帝国の侵略を受けてしまう。このため戦役初期においてアンドロメダ級は全く活躍することができず、戦争終盤に無理矢理稼働状態に持ち込まれた「アンドロメダII」だけが、残敵掃討で持ち前の威力を発揮している。
 そしてその後の2207年、ようやく全てのアンドロメダ級(都合5隻)が就役して、観艦式にその雄志を見せる事ができた。

 “主力戦艦”は乾燥重量が5万4900トンあり、当時の地球防衛軍としては大型の量産艦艇だった。与えられた能力は、艦隊システムの中での砲撃と波動砲発射、加えて分艦隊旗艦任務であり、他の多くは量産のため切り捨てられていた。
 船体は可能な限り単純化された直線や円構造が採用され、工数、パーツ数も少なく量産性と工期短縮が求められていた。また船体には予め余裕が与えられ、後の改良を受け入れる余地が大きく残されていた。
 主装備は、巡洋艦より強力な拡散波動砲2門と、16インチ三連装ショック・カノン3基になる。他ミサイルや対空用フェザー砲などを最低限装備しているだけで、接近戦時の個艦防衛力の低さを指摘される事が多い。比較的大きな格納庫も設けられていたが、当初は艦載機の手当が付かなかったため、ランチと救難艇少数を搭載している。
 なお、船体には余裕があり、またモジュール構造を採用している事から装備の選択や増設も容易く、派生型の艦艇すら建造されている。代表的な派生艦には各種戦闘空母があり、多い物では三分の二の共通パーツが使われている。
 初期並びに追加を合わせて100隻以上の建造が計画され、4隻で1個戦艦戦隊を編成し、圧倒的火力で敵を殲滅することが期待されていた。
 建造には最短で約五ヶ月かかるが、「ヤマト」帰還一周年にはすでに20隻近くが建造されており、同クラスが最大数参加した第二次土星沖会戦では34隻を揃えて見せている。
 しかしガトランティス戦役では約七割に当たる20隻以上が戦没しており、また建造施設の損傷などからその後の増強は思うに任せなかった。また、数年後には別の建造計画が立てられ、追加計画艦はほとんどがキャンセルされた。初期計画でも施設ごと攻撃を受けた艦などが破棄されているので、就役できたのは計画の約七割の73隻になる。そして就役艦の半数以上が、いずれかの戦役で戦没している。
 なお幾多の戦乱を生き残った約30隻は、改装を加えつつも現役を維持しており、汎用性とコストパフォーマンスに優れた同クラスの正しさを伝えている。
 ちなみに命名基準は「星座」名であり、最初期の12隻には黄道十二星座の名が付けら分艦隊旗艦用として、司令部施設や通信・管制装備の仕様も他より贅沢なため、特別にゾディアック級と呼ばれる事もある。

 “戦闘空母”は、主力戦艦の設計を流用して建造された航空機運用に重点を置いた艦艇だ。だが、波動砲、ショック・カノンを有したままであるため、艦種分類上でも空母ではなく戦闘空母と呼称されている。
 タイプは2種類あり、主力戦艦の後半部分だけを改造したようなタイプと、船体を大幅にストレッチして二段式の大型飛行甲板を設けたタイプがある。
 前者はとにかく早く就役させて、艦隊にまとまった数の航空機運用システムを与えることを目的としていた。後者は艦隊の後の発展のため、惑星下でも運用できる事を想定し、建造期間も十分にとって建造されている。また後者のタイプは船体規模が大きいため、アンドロメダ級を建造したのと同じ超大型ドックで建造されており、規格の面からも主力戦艦から大きく逸脱している。
 前者は「レキシントン級」と呼ばれ、建造された地域の有名な古戦場の名があてられている(艦名は「レキシントン」、「赤壁」、「壇ノ浦」、「カロドゥン」 ※月面建造の「赤壁」以外は地球各地で建造)。乾燥重量は、主力戦艦より重い約6万1000トン。
 主力戦艦より主砲1基少なくして、格納庫レイアウトを確保し速力を得るため、巡洋艦用の波動機関を並列で装備している、当時の地球防衛軍では珍しい二軸艦となっている。また、着艦甲板が船体内に設けられているのは、着艦の際に重力制御と磁場を360度方向から均等にかけて艦載機を制動するためであり、最上甲板に着艦するより危険性は低く、区画パフォーマンスに極めて優れている。ただし、船体に格納庫と着艦施設を設けたため、艦後部のレイアウトは主力戦艦とは大きく食い違っている。
 搭載数は、若干延長された船体の余剰区画全てを使い切た事で、小型機ならば軽空母並の約30機が有機的に搭載可能となった。通常は戦闘攻撃機27機と各種支援機6機程度を、格納庫と露天甲板に搭載する。“空母”としての用途目的は、近海防衛艦隊内での防空もしくは対艦攻撃にある。
 ガトランティス戦役では、主に雷撃任務の小型機を多数搭載して初陣を飾っている。ただし、ガトランティス戦役で作戦参加した初期型3隻全てが戦没しており、生き残りは訓練中だった「カロドゥン」1隻となっている。なお2207年現在「カロドゥン」は、練習空母に格下げされている。
 一方後者は「ソウリュウ級」と呼ばれ、伝説上の獣であるドラゴンの名があてられている。もっとも艦ごとの命名はかなりアバウトで、建造したのが日本地区と月面、ラグランジュポイントという事もあり、一部を除いて有名なドラゴンの名が与えられている(艦名は、「ソウリュウ」、「リヴァイアサン」、「ティアマト」、「ケツァルコアトル」、「ナーガ」、「ウロボロス」)。
 建造数は合計6隻。華々しい活躍をすることは珍しかったが、貴重な艦隊航空戦力としてガトランティス戦役以後に就役するとすぐに艦隊主力空母の座に位置した。また戦闘で損傷する事はあったが持ち前の頑健さを示し、戦没艦は今のところない。
 全長320メートルを越える就役当時地球防衛艦隊最大級の船の一つで、乾燥重量もアンドロメダ級に匹敵する9万5000トンある。基本となった主力戦艦としての装備や装甲を備えた上に、大きな飛行甲板と格納庫が加わっているため、雄大な艦様をしている。
 外観上の一番の特徴は、主に左側に大きくレイアウトされた二段式の飛行甲板で、これはガミラス軍の保有した三段空母を参考としていると言われる。また宇宙と大気圏内双方での運用を可能とするためのレイアウトを求めた結果、単に二段式の全通型滑走路となったとも言われる。経緯はともかく、STOL性能に優れた空間戦闘機にとっては雄大な艦であった事は間違いない。
 砲撃戦能力は「レキシントン級」とほぼ同じだが対空戦能力が強化されており、主船体の約半分を占める大きな多段式格納庫を有する。「レキシントン級」より「空母」としての汎用性は高く、また搭載機数も多い。
 搭載数は、露天搭載を含めて各種合計約50機。当初は、戦闘機27機と中型雷撃機12機、各種支援機10機程度を搭載した。大型機を多数運用するため搭載数が少ないようにも思えるが、運用機種の大幅な増加により汎用性と柔軟性は「レキシントン級」より遙かに高くなっている。初期の艦載機は、主にコスモタイガー系列を搭載し、ガトランティス戦役以後の艦隊航空戦力の中核を担った。初陣はデザリアム戦役である。
 なお、地球防衛軍が長らく「空母」ではなく「戦闘空母」に固執した背景には、相対した敵空母の多くが脆さを露呈した戦訓を反映させているためと言われる。
 そして地球防衛艦隊での運用実績は良好であり、続く艦艇も建造されている。もっとも、ガトランティス戦役終了時船体が完成するも損傷などで建造中止になったアンドロメダ級の船体を使い、「ジュピター級」戦闘空母となった。能力が高い分だけコストも高くなるが故の選択だ。

 “汎用巡洋艦”は、地球防衛艦隊の本来の意味での中核艦として、あらゆる任務に投入できる装備が施されていた。また量産性向上と設計の手間を省くため、戦列艦(パトロール艦)の設計を流用している。ただし、戦列艦の基礎設計が極めて優秀だった事を忘れてはならないだろう。
 乾燥重量は1万1000トン。主な装備は、中口径拡散波動砲1門、8インチショック・カノン連装3基、6インチ対空ショック・カノン3連装2基、宇宙魚雷・三連装発射管4基、長射程対空フェザー砲8連装1基、埋没型単装対空フェザー砲16門、近接用フェザー砲連装2基となる。しかもこの重武装を、大馬力機関によって高速機動させる事ができた。
 重武装の艦艇だが、小規模艦隊の旗艦任務から艦隊主力としての任務、船団護衛などあらゆる状況での使用が考えられた末の装備だった。また艦の自動化が進められているため乗組員は少なく、居住性や遠洋航海能力が低いという事はなかった。逆に居住性は戦列艦同様に高く設定され、周辺星域のパトロール任務にもうってつけだった。単艦での任務も、波動砲さえ装備していればある程度問題はないと考えられていた。まさに汎用艦、ワークホースだ。
 唯一の欠点は、搭載機を持たない点だった。たが、これは後に砲塔の一部を撤去して、艦後部に簡易格納庫とデッキが設けられるタイプが建造もしくは既存艦が改装されている。
 建造数は初期計画で120隻、さらに200隻が追加されたが、ガトランティス戦役の終了と共に建造ペースを大幅にダウン。その後も整備は続けられるが、結局後期計画の分は改良型や後継艦の計画が動いたため徐々に計画が縮小し、都合200隻余りが就役している。
 ガトランティス戦役では64隻が戦列に参加したが損害も大きく、またその後の各戦役でも戦没艦が相次ぎ、2207年現在の在籍数は120隻を少し越える程度だ。だが、その能力の高さと汎用性から、地球防衛艦隊の太陽系を中心とした地域でのワークホースという地位は当面不動のものと思われる。
 ちなみに名称は「都市(ポリス)級」。世界各地もしくは太陽系各地の都市の名がつけられている。

 “高速駆逐艦”は、かつての突撃駆逐艦の後継者であると同時に、地球防衛軍のとある懸念が生み出した兵器でもあった。対波動兵器対応防御が充実している敵に対して、自らの保有するショック・カノンで対抗が難しい場合への対処だ。
 設計は、量産建造の問題もあってコルベットから重武装を取り除き新型の大馬力機関を搭載した形で進められた。
 乾燥重量は3200トン。主装備は、中型宇宙魚雷4門・8発と3連装の旋回式発射台に据えられた小型宇宙魚雷12発。他の装備は必要最小限とされ、雷撃力と通常速力の向上にのみ努力が注がれていた。
 完成した姿は突撃駆逐艦の再来と言え、非常に精悍なスタイルを持っている。
 艦隊外周の護衛を受け持つ艦でもあるため、コルベット譲りの対空防御力の高さは維持されていたが、砲撃戦能力は最低限であり、また突撃を任務とするため当初から消耗が予想された。このため初期計画でも200隻の建造が計画され、最終的には500隻近くが量産予定だった。
 ガトランティス戦役での結果も良好であり、2204年以後は波動カートリッジ弾の導入によってその戦力価値をさらに高めている。
 ただし、人的資源の消耗の激しい兵器であるため、常に人材不足に悩まされる地球防衛軍内での受けは悪かった。また太陽系外で活発に活動するには船体規模が小さすぎる事もあって建造は2203年内に全て終了し、建造数は約270隻である。当然というべきか戦場での消耗は激しく、2207年現在は装備を変更して船団護衛に用途変更されたものも含めて150隻近くが在籍しているに過ぎない。
 クラス名には、地球上の自然現象の名が当てられている。その中で日本地区での建造の場合旧海軍の艦艇名がずらりと並び、地球防衛軍とは日本を守る軍隊だったのかと、各国からひんしゅくを買う状態となってしまった。この影響からか、旧軍時代の艦艇名をつける際にとかく神経が使われるようになったと言われている。

 “高速補給艦”は、普通の輸送船舶とは比べて特殊である。
 本来民間用の補給艦や輸送船は、積載量の大きさ、宇宙での効率的な物資運搬に適した形となるため、地球上に浮かべる“船”とは大きく異なる形となっていた。その例が、列車状で連結されムカデのような形の50万トン級輸送船になるだろう。形状もドラムを二つつなげたような形であり、いかにも宇宙時代を象徴する船としてガミラス戦役以前から数多くが活躍していた。
 だがイスカンダルやガミラスのオーバーテクノロジー取得により、少なくとも軍向けの高速輸送船にも劇的な変化が必要となった。何しろ新鋭艦艇のほとんどが亜光速航行が可能なのだ。これに随伴し、移動しながら補給すら出来るようにするには、輸送船の側も最低でも波動機関を備えた船でなくてはならなかった。加えて、できうるならワープ可能な機関を搭載した方がよく、波動機関の効率的運用という物理的な制約から、艦の形状も軍用艦艇に似た形状となった。
 そしてこの時建造されたのが、「サプライ級」と呼ばれる戦術補給艦だ。
 同クラスは乾燥重量6万トンと軍艦としては大型だが、戦闘艦艇としての構造は持たず、あくまで中型民間貨物船に大馬力波動機関を搭載した状態とされた。船の形状は前方からの被弾軽減と、舷側に複数の船を接舷させて移動補給すべく長船体が取り入れられ、かつて海上を駆け抜けた大型船と類似点を探すことができる。
 また同クラスは、2隻ペアで行動して1個外周艦隊に対する前線補給をする事になっている。主な積載物は、ミサイル、弾薬、食料、生活物資、そして水になる。また駆逐艦など生活環境の悪い艦艇に対するサービス任務を一部請け負っており、居住区は戦艦以上の贅沢さが設定されていた。
 なお、武装はごく軽いものしかほどこされず、当初はパルスレーザー砲が数基設置されるにとどまっている。しかし、ガトランティス戦役中に武装が強化され、パルスレーザー砲や防空ミサイルを新たに設置するようになっている。

 最後に艦載機だが、この当時の艦載機は計画当初は依然として「グラマンF-96 ブラックタイガー」が主力を占めていた。その他に少数の「ミツビシ コスモゼロ タイプ52」があったが、これは操縦が難しいためベテランパイロットしか乗りこなすことがでず、エリート部隊用とアグレッサー用に保有されているだけで配備を終えている。
 だが2201年に春に入ると、期待の新型「グラマンF-01 コスモタイガーII」の量産配備が開始される。
 同機はガミラス戦役中頃の2196年に開発の始まった機体だが、次世代機ということで今後解析されるであろう新機軸を受け入れるだけの発展余裕を与えられて開発が進められた。これが「コスモタイガーI」になる。
 そこにイスカンダルからの波動機関技術とその理論全てが得られたため、さらなる機関の改装が施されることになる。機関の改装は先に「ヤマト」搭載機全てに急遽施されたが、こちらは量産機のためより完全な形、より高度な形での完成が目指された。
 結果、本当の意味での初飛行は2200年に入ってからとなり、結局正式化と量産配備は2201年の夏にずれ込んでしまった。
 だが性能は折り紙付きであり、早速月面の教導隊に送られ本格的な運用が開始される。
 なお、派生型がすぐにも開発されており、三座の偵察・戦闘爆撃機型、簡易型の雷撃機型などが2202年までに量産配備された。また、2204年以後は、波動カートリッジ弾の量産配備に伴い戦力価値が大きく上昇し、2006年以後はさらなる改良型の「コスモタイガーIII」の量産配備も進んで勢力を大きく増勢させつつある。

 以上が、2200年から2201年にかけて建造された地球防衛軍の艦艇であり、これらの装備が拡充される頃次なる戦乱を迎える事になる。



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