■『八八艦隊』計画 各艦概要
 
『88fleet・シスターズ』

 ここからは、主役である16隻の美姫たちについてもう少し深く掘り下げてみましょう。
 ゲームなどで言うところの、キャラクター紹介と言ったところでしょうか(笑)
 なお、史実の二倍の国家予算で建造されたものなので、個艦レベルで多少贅沢なドレスとなります。また軍縮条約上、基準排水量4.8万頓、改装分の3000頓を含めても5.1万頓が最大上限となります。
 また、採り上げる状態は、この世界での太平洋戦争が勃発する1934年時点となります。


■長門級戦艦(第一次改装後)
長門 1919年11月就役
陸奥 1920年7月就役

基準排水量 36200t
全長 224.94m
全幅 34.6m
機関出力 108000馬力
速力 28.0ノット
武装 41cm(L45)2*4 14(L50)1*18
装甲 舷側装甲:305mm 主甲板装甲:70+76mm

八八艦隊において最初に計画された戦艦であり、日本初の16インチ砲搭載の戦艦だったが、攻防走とバランスの取れた性能とそのスタイルは、日本の建艦技術が世界レベルに達した事を示しており、以後の日本戦艦のタイプシップ的な位置にある、エポックメイキング的なクラスである。
なお、世界で最初に就役した16インチ砲戦艦であり、その存在が世界中の列強に与えた衝撃は極めて大きく、以後就役したより強力な姉妹達よりも目立つ存在となった。

1934年時の姿は、第一次大改装後の姿になります。史実では34年秋から改装工事に着手していますが、この世界では史実より1年早く就役しており、日本の工業力の増大と技術の進歩に比例し、さらに、他の八八艦隊と行動を共にするため、風雲急を告げる中、早期に大改装されています。ただし、軍縮条約があるので、史実ほど防御力の強化はされていません。改装の重点は、十分とは言えない垂直防御の改善と他の妹達に比べて遅い脚の改善のための機関出力の強化、積み上げられ陳腐化した上部構造物の近代化にあります。ただ、全てを十分行うと史実のように3000トンの枠で収まらないので、装甲増加やバルジの装着が不十分なものとなっていますが、それでも500トンほど条約違反となります。そして、生き残っていれば彼女たちは再度のお色直しが待っている事になります。

※ちなみに、史実の長門クラスは約6000万円の予算が組まれました。その後若干の追加予算が必要でしたが、それでも6500万円程度です(推定)。つまり、排水量比だけから考えれば、13号クラスでも1億円かからない計算になります。
ついでに言えば、金剛級代艦(3.5万頓クラス)の見積もりは1隻当たり8500万円だったそうです。そして、第4次海軍補充計画では、同じような戦艦を最初の予算に盛り込もうとしましたがこれが果たせず、代わりに大和のカモフラージュとなった陽炎級駆逐艦3隻と潜水艦1隻の建造予算が復活したそうです。

■加賀級戦艦(第一次改装後)
加賀 1922年2月就役
土佐 1922年5月就役

基準排水量 43400t
全長 234.1m
全幅 34.8m
機関出力 128000馬力
速力 28.0ノット
武装 41cm(L45)2*5 14(L50)1*18
装甲 舷側装甲:279mm(15”) 主甲板装甲:102mm

長門級の設計をさらに洗練させ、16インチ砲を10門搭載した重戦艦である。速力こそ長門級と同じだったが、砲力はもちろん防御力においてもさらなる強化が施されおり、長門級との外見の違いが主砲一つ分と言うだけでなく、全く別物と言っても良い性能を持っている。
ただし、装備にスペースを取られたことで、居住性が若干犠牲になっており、艦隊将兵からは不評があった。
なお、建造においては、順調に伸展と続けるアメリカのダニエルズ・プランに対抗するため急がれ、日本戦艦としては建造期間の記録を塗り替える突貫工事が行われた。

彼女たちも、長門級と同様に早期に近代改装されます。
時期的には、戦争に間に合わせるためにも、大改装は長門級と全く同じ時期となります。
当然、この状態は第一次大改装後の状態ですが、元の姿は史実の計画と全く同じになります。
近代改装により、この戦争では最も近代的な姿をしている事となります。
ただ、改装すぐに戦争が始まるので、開戦当初は練度に不安が残っているかも知れません。

■赤城級巡洋戦艦
天城 船台上で大破・解体
赤城 1923年10月就役
愛宕 1925年1月就役
高雄 1925年4月就役

基準排水量 41200t
全長 252.4m
全幅 32.26m
機関出力 131200馬力
速力 30ノット
武装 41cm(L45)2*5 14(L50)1*16
装甲 舷側装甲:254mm(12”) 主甲板装甲:95mm

八八艦隊における、最初の巡洋戦艦。
加賀クラスと同じ攻撃力を持ち、防御力も実質的には長門級を上回るものが施された、実質的には高速戦艦である。
最大の特徴は、日本戦艦で初めて30ノットの速力を実現したことで、その俊足と戦艦としても十二分な能力を兼ね備えた本級は、日本の艦隊決戦ドクトリンが生み出したその寵児と言っても過言ではないだろう。
能力的には、ライバルとして米国のレキシントン級よりも英国のフッド級がその筆頭に上げられる。

これも、史実の計画と同様になります。ですが、就役して10年たったばかりなのでギリギリ大改装はまだ行っていません。就役当初より、水偵を搭載する設備を増設したり、艦橋の構造物が若干増えている程度です。
ただ、関東大震災は1923年なので、なぜ天城が大破したのかは全くの謎です。横須賀で大破するのは、紀伊級のどれかのはずなんですが(笑)(おそらくガントリー・クレーンがモロに激突でもしたのでしょう(笑))
なお、本格的な近代改装前なので、史実の長門クラスのように誘導煙突の形の違いが、姉妹達の見分けるチャームポイントとなっています。

■紀伊級戦艦
紀伊 1926年2月就役
尾張 1926年6月就役
駿河 1927年9月就役
近江 1927年6月就役

基準排水量 48000t
全長 274.0m
全幅 33.4m
機関出力 150000馬力
速力 29.5ノット
武装 46cm(L45)2*4 14(L50)1*16
装甲 舷側装甲:330mm(15”) 主甲板装甲:127mm

世界初の18インチ砲を搭載した戦艦である。
元来の計画では、アメリカ合衆国が建造しつつあるサウスダコタ級に対抗が難しい事から、同時期に設計が進んでいた13号艦級をタイプシップとして設計を新たにして建造された。
外見は長門級を一回り大きくしたようなイメージを受けるが、本級の最大の特徴は巨大な船体に装備された、マキシマムな破壊力を誇る主砲と、強靱な装甲、そして巡洋戦艦譲りの俊足にある。

このクラスを作り出すあたりで軍縮条約を迎えるので、これを踏まえて計画を練り直し、アメリカのサウスダコタ級に対抗できるよう計画が変更がされています。
計画は、なおも量産効果を期待するために13号艦が基本となります。このため、それまでの八八艦隊計画艦とは次元の違う強力なものとなります。
ただし、史実の基本計画のままだと、主砲を安定して使うには艦の幅が狭いので、これを少し余裕を持たせた艦形へと変更します。他はおおむね史実の13号艦と同じになります。このため、浮力は大きくなりますが、装甲と速力が若干犠牲になっています。そして、幅が太い分排水量が増え条約ギリギリとなります。
また、艦隊旗艦となるクラスなので、その分艦橋構造物が多く設置されています。
当時の状態は、天城級のようにカタパルトが装備されたり若干上部構造物が改造されています。

■富士級巡洋戦艦
富士 1929年10月就役
阿蘇 1929年8月就役
雲仙 1930年8月就役
浅間 1930年10月就役

基準排水量 48000t(49600t)
全長 278.0m
全幅 33.6m
機関出力 160000馬力
速力 30ノット
武装 46cm(L45)2*4 14(L50)2*8 12(L45)1*6
装甲 舷側装甲:330mm(15”) 主甲板装甲:127mm

世界最大の巡洋戦艦である。
紀伊級をさらに発展させた性能を与えられており、名実共に八八艦隊最強、そして世界最強と言っても過言ではない。
巡洋戦艦として30ノットを発揮する能力と、紀伊級と同等の防御力が与えられており、その能力はライバルである、アメリカのダニエルズ・プランの戦艦達を圧倒している。
ただし、46cm砲を搭載していながら、それに似合った防御力とは言えず、それが唯一の欠点となっている。

これは、先ほどの説明にもあるとおり、史実の13号艦から若干改訂されています。また、30ノット発揮のために機関出力が強化されたり、その他副砲を砲塔化するなど新装備を搭載し細々とした改良がされています。
また、この時期建造された史実英国のネルソン級に当たる艦を参考として、この時点で日本の戦艦も塔型艦橋を採用しているとします。
(この世界では、日英同盟は堅持されています。)
これらの改良により公称4.8万頓ですが、実際は5万頓近い条約違反の高速戦艦となります。ですが、お約束として対外的には4.8万頓で装甲を犠牲にした巡洋戦艦とされています。
長門級などとは次元の違う強力な高速戦艦で、いったい何がどう巡洋戦艦なのか問いただしたくなる存在です。多分30ノットを超えれば巡洋戦艦なのでしょう。

■葛城級巡洋戦艦
葛城 1931年4月就役

基準排水量 48000t(48500t)
全長 274.0m
全幅 33.4m
機関出力 160000馬力
速力 30.5ノット
武装 41cm(L45)3*4 14(L50)2*8 12(L45)1*6
装甲 舷側装甲:305mm(15”) 主甲板装甲:127mm

八八艦隊計画最後に就役した大型戦艦である。
位置的には地震で大破、建造中止になった天城の代艦であるが、全く新規に建造された事から、富士級の船体が使われ、また単艦の建造だったため、各種の実験的装備が施されており、その最大の特徴は、41cm砲が三連装でまとめられている事にある。
遠目には富士級と大差ないのだが、他の艦の主砲が全て連装である事から、非常に目立つ姿をしている。

さて、八八艦隊のどん尻は、天城の代艦として計画された、全く架空の存在です。
ですが、いくつか守るべきルールがあります。まず、この世界の軍縮条約にのっとり排水量4.8万頓以下。他の赤城などと共同行動するために30ノットの速力を発揮し、45口径の41cm砲を搭載する必要があります。ただ、このために唯一の三連装砲塔を装備した戦艦となります。
さらに、多少なりとも量産効果を期待したいので、富士級の艦をタイプシップにします。かなりの重戦艦ですが、以上のように、某越後のような無茶な艦にはなりません。
明治の思想を持っていれば、日本人達の思考は堅実なのです。

■蒼龍級航空母艦
葛城 1933年12月就役

基準排水量 35000t
全長 274.0m
全幅 33.4m
機関出力 160000馬力
速力 33ノット
武装 20.3cm(L50)2*3 1*6 12cm(L45)2*6
搭載機 60機(補用6機)

アメリカのヨークタウン級に対抗するために建造された、日本初の大型空母。
建造に際して参考とされたのは、対向者の米国の空母でなく、英国のフェーリアス級で、このため本級も二段の飛行甲板を持っており、さらに前線での活動が想定されていたので、空母としては破格の装甲と砲撃力が与えられている。
このため、航空機搭載能力は大型艦の割に小さな物となっている。

史実の蒼龍原案の航空巡洋艦が、現実的に修正されて建造されたものです。
数値は実際の数値として、妥協しうるところまで変化させています。(ある程度装甲化されているのを忘れないでください。)
船体設計には、量産効果を期待して葛城級のものを流用しています。
おそらく、史実の赤城(飛行甲板が一段少ない形)と初期計画の蒼龍級を足して二で割ったような形になるのではないでしょうか。一応完成時点では、世界最大の航空母艦となります。
もちろん、戦艦に改造したりはできませんし、甲板がひっくり返って大砲が出てきたりはしません(笑)
後に近代改装され、史実の加賀+赤城のような重厚な正規空母か、装甲空母に生まれ変わります。

※:金剛級、扶桑級、伊勢級のどれも長門に前後して大改装が施されます。
 これは、史実のものとは少し違い、どれも八八艦隊の大型戦艦の俊足に合わせるため、主に速力面での向上を目指した計画が立てられます。
 ですから金剛級は、この時点で30ノット発揮が可能の巡洋戦艦であり戦艦とはなっていません。また、扶桑級、伊勢級の双方とも機関の換装と艦尾の延長工事を受けているので、どちらも28ノット級の高速が発揮出来るよう改装が施されています。(八八艦隊が存在するのに史実と同じ改装が施されるのは不自然なので改訂しました。)


●おまけ

■高千穂級戦艦
高千穂 1941年2月就役
穂高 1941年3月就役

基準排水量 35000t(38500t)
全長 235.0m
全幅 33.4m
機関出力 136000馬力
速力 30ノット
武装 41cm(L50)3*3 15.5(L60)2*4 12.7(L40)2*4
装甲 舷側装甲:356mm(20”) 主甲板装甲:152mm

いわゆる条約型戦艦で、史実の大和級が建造された時と同じ年代に計画された事になります。と言うより、RSBCにおける高千穂級のデチューンと言えるかも知れません。もちろん、そうなっているのは条約を見た目に尊守するために他なりません。
一応、金剛級戦艦の藤本案の具現化案となります。
基本的にには、八八艦隊の建造経験を反映した中型戦艦で、まさにミニ大和と言えるものになります。
この世界では、来るべき不沈戦艦建造の問題をすべて洗い出すための実験艦的な要素の強いものとなります。
ですが、新装備がないと少し寂しいので、50口径砲を試験的に搭載しています。
完成すれば、使い勝手の良い中型戦艦ですが、八八艦隊の後期の戦艦に比べると、どう運用するかは判断の難しいところです。

■大和級戦艦
大和 1944年6月就役
武蔵 1944年10月就役

基準排水量 89000t
全長 288.0m
全幅 42.8m
機関出力 220000馬力
速力 28ノット
武装 51cm(L45)3*3 15.5(L60)3*4 10.0(L65)2*14
装甲 舷側装甲:457mm(20”) 主甲板装甲:254mm

八八艦隊が建造されれば、目指されたであろう能力を得た大和です。この時点では2隻ですが、当然4隻の建造が目指されるでしょう。
彼女の要目は、単純に51÷46から算出された船体に51cm砲を搭載した「大和」です。ですが、それだけに対艦戦闘能力は圧倒的なものがあります。ただ、速力だけは、他との運用問題もあるので八八艦隊の最低基準の28ノットとされています。
日本海軍の性癖と、世界の一般軍事常識からして、条約明けには、仮想的国が自分たちの戦艦を凌駕する戦艦を建造しようとすると考え、自分たちもこれに対抗、できるなら圧倒しうる艦を建造しようとするのは必然でしょう。
しかも、この世界の日本には、この規模の艦を実現できるだけの十分な造船力があります。
かくして、太平洋を睥睨する女王たるべく、彼女たちは建造されます。
予想されうる建造費は、1隻あたり2億円以上。彼女に仕える船員の数は4000名に上ります。
同時期に近代改装されドレスを新調した八八艦隊の姉妹達と言えど、彼女たちには一歩も二歩も譲る事になります。

■改翔鶴級航空母艦
千鶴 1943年8月就役
神鶴 1943年10月就役

基準排水量 29675t
全長 267.5m
全幅 28.0m
機関出力 160000馬力
速力 33.0ノット
武装 10.0cm(L65)2*8
搭載機 84機(補用12機)
甲板装甲 64mm+38mm

純粋な史実の翔鶴級の改良発展型になります。船首もエンクローズしていません。
主な改正点は、船体の大型化による搭載機数の増加、対空防御力の強化、飛行甲板装甲の可能な限りの強化です。
もちろん、戦訓により一部解放型格納庫に変更されます。
お気づきの方もあるかも知れませんが、いわゆる和製エセックス級です。能力は可能な限り近くなっています。
従来の翔鶴級に比べるとタフネスさが全然違っていると思います。
ただし、2段の格納庫に改訂はないでしょうし、少し大きくなっただけで翔鶴級からの基本的な変更はありません。
また、甲板装甲が他と異なっているのは、エセックス級と合わせるための単なるお遊びです(笑)

■大鳳級航空母艦
大鳳 1944年3月就役

基準排水量 45000t
全長 289.0m
全幅 33.0m
機関出力 180000馬力
速力 33.0ノット
武装 10.0cm(L65)2*8
搭載機 搭載機84機(補用4機)
飛行甲板装甲 75mm+20mm
本来の大鳳は、2.9万頓級の大型正規空母でしたが、ここでは贅沢に、史実の大鳳級の次のクラスとして建造が予定されていた超大鳳級の基本案の艦をいきなり建造します。
その理由は、この艦を前線の中継基地でなく、より広義な意味での艦隊防空のための移動基地として活用するには、自らも大量の航空機を運用できなければいけないからです。ゆえに、翔鶴級と同程度の航空機が搭載されます。
しかも、この艦は戦艦と共に最前線近くまで進出して、艦隊上空の制空権を獲得する事が期待される、まさに戦艦を護るための空母なのです。
また、この艦が建造出来る頃、日本の造船技術が史実より進んでいると言う理由もあります。
ただし、この艦の建造費は、史実の大和型に匹敵する1.5億円にもなり、お金持ちでないとまず建造する事は不可能です。


では最後に、『88艦隊』計画艦の戦艦・巡洋戦艦の同縮尺シルエットを紹介しておきます。
これで13号艦級がいかに巨大かよくわかると思います。


 


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