■『3年計画』 各艦概要 『ダニエル・シスターズ』
さて、ここではライバルたるアメリカ合衆国の通称「ダニエル・プラン」の艦隊について少し触れておきたいと思います。 最強の存在たるもの、最強のライバルが必要なのは必然。これを補足説明しておく必要もあると言うものでしょう。 シスターズと紹介しましたが、もちろん全てが同型艦ではありません、史実のダニエル・プランによる戦艦たちです。 このダニエル・プランは、計画初期に11億ドル(日本円に換算して22億円)の予算が計上されたとされています。その後艦艇の設計変更や、日本と同様の建造予算の高騰などで予算が膨れ上がり、アメリカの国庫すら脅かすものになりました。 なお、最初に説明しますが、アメリカのダニエル・プランは、合衆国が第一次世界大戦に参戦していないので、計画に齟齬はきたしておらず、全艦八八艦隊よりも早期に就役しています。ゆえに、基本的に史実と同じ能力しか持ちません。 なおライバルゆえ、表現は少し変更してます。
■ダニエルズ・プラン戦艦
■サウスダコタ級戦艦
同型艦
アメリカの伝統的重防御、重砲撃力、長距離航続性能を備えたオーソドックスな重戦艦。 4万頓以上の排水量を持つ巨体に、合計12門もの50口径40.6cm砲をコンパクトに搭載、16インチ砲戦艦としては最強の暴力的なまでの圧倒的砲撃力を持つ。弾薬投射量においても、ライバルの18インチ砲搭載の日本戦艦にひけは取らない。 ただし、ライバルに比べて排水量が少ないことと32.2mの幅しかないことから、三連装砲塔装備の巨砲発射のプラットフォームとして必ずしも安定しているとは言えず(日本戦艦の方が巨体で船として安定している。)、実際の戦闘でのハード面での主砲命中率が悪い事が懸念されると言われる。 なお、史実の他の戦艦同様に改装はまだ手はつけられていないが、建造時期的に旧式艦の改装で同様の例がある事から、これにあわせて籠マストでなく、三脚型の艦橋を採用され就役している。
■レキシントン級巡洋戦艦
アメリカ海軍史上最初の巡洋戦艦。 巡洋戦艦の特徴である流麗な船体に内蔵された、大出力機関が生み出すハイパワーに任せた、圧倒的なまでのその俊足が最大の特徴である。 同クラスの艦でこのクラスに匹敵しうる速力を持っているのは、イギリスのI級のみである。 しかし、その圧倒的速力の代償として、装甲がWW1の英国巡洋戦艦程度しかなく、そのため本格的砲撃戦を行える能力はなく、あくまで超大型偵察巡洋艦としての側面が強い。実質的には高速戦艦である日本の巡洋戦艦と対決すれば、速力以外の面での苦戦は免れないと思われる。 ただしこれは、合衆国海軍が彼女を超大型の偵察巡洋艦として位置づけているからであり、その点から見れば妥当な設計と言え、決して彼女たちのバランスが悪いわけではない。 なお、史実の他の戦艦同様に改装はまだ手はつけられていない。 ■メリーランド級戦艦
※ダニエル・プランに属するが史実通りなので、要目は掲載せず。(以下同)
ダニエルズプラン最初の計画艦。一見オーソドックスな16インチ砲戦艦だが、本来はカリフォルニア級同様50口径14インチ砲を搭載して就役する予定だったが、ライバルの長門クラスが16インチ砲を搭載するとの情報から、カリフォルニア級に無理矢理45口径16インチ砲を搭載した戦艦のような格好で完成する。このため、14インチ砲戦艦とするなら満点以上と言える防御力を持っていながら、同クラスの戦艦と対抗する場合に防御力に若干の不安がある。特に改善されたとは言え、大落下角度から降り注ぐであろう、日本の41cm砲に如何に対抗するかがこの艦の最大の悩みである。
■プレ・ダニエルズ・プラン戦艦
■カリフォルニア級戦艦
プレ・ダニエル・プラン最後の戦艦。 50口径14インチ砲12門を搭載した重戦艦。 恐らく14インチ砲搭載の戦艦としては、世界最強と言って良い能力を与えられている。 重戦艦として極めてバランスが取れており、日本の扶桑、伊勢クラスでは苦戦は免れない優秀な能力を持つ。 最大の特徴は、16インチ砲戦艦並と言われる重装甲で、垂直防御以外なら45口径16インチ砲の攻撃にすら耐える能力を持っていると言われる。 ただし、アメリカ戦艦の伝統として速力だけは遅く、日本艦隊の機動力にどう対抗するかが、このクラスの唯一の問題となっている。
■ニューメキシコ級戦艦
45口径14インチ砲12門を搭載した重戦艦。 ペンシルヴァニア級の改良型として建造される。 防御力と速力の違いはあるが、日本の扶桑、伊勢クラスとほぼ同じ能力を持つ、バランスの取れた重戦艦である。 1933年中に近代改装を終了し、この改装の際に日英が塔型艦橋を採用している事から、実験的に塔型(箱型}の艦橋に改装され、アメリカ戦艦の中にあって異彩を放っている。
■ペンシルヴァニア級戦艦
45口径14インチ砲12門を搭載した重戦艦。 ネヴァダ級の発展型として砲塔を全て3連装としたことで、より大きな攻撃力を付与されている。 1931年に近代改装工事が終了しており、伝統の籠マストから三脚マスト型になっている。
■ネヴァダ級戦艦
45口径14インチ砲10門を搭載。 このクラスの完成により、アメリカ戦艦の基本的な形が確立している。 いささか旧式の感はあるが、砲撃力も高く重防御でありその能力は砲撃戦において決して侮れないものがある。 三連装と連装の二種類の砲塔を搭載しているのが最大の特徴である。 1929年に近代改装工事を終了している。
■ニューヨーク級戦艦
45口径14インチ砲10門を搭載。 連装砲塔を5基搭載し、アメリカ戦艦としてはオーソドックスとは言い難い形をしている。その姿は、一見したところ英国や日本のそれに近い。 日本の金剛型をライバルとするが、砲撃力と防御力に優れており、純粋な殴り合いになれば、ライバルに対して優位は揺るがないと思われる。 ただし、アメリカ戦艦の例に漏れず長大な航続力を持つ反面その速力は遅く、八八艦隊の高速戦艦に対して不利となっている。 1927年に近代改装工事を終了している。
■ワイオミング級戦艦
50口径12インチ砲12門を搭載。 完全な旧式戦艦であるが、英日への対抗上保有されている。 ただし、八八艦隊に対抗するにはいささか役不足なため、主に大西洋で行動している。
■フロリダ級戦艦
50口径12インチ砲10門を搭載。 完全な旧式戦艦であるが、英日への対抗上保有されている。 同型艦のフロリダは、練習戦艦として在籍。 どの日本戦艦とも対抗不可能な事から、主に大西洋で行動している。
■航空母艦・他
■ヨークタウン級航空母艦
アイランド型と呼ばれる艦橋構造物と、全通甲板式の飛行甲板を最初に装備した世界初の大型空母。ただし、アメリカが先駆けてこの艦を建造したのは、遠くアジアへの遠征を可能とする艦を欲した事からきており、また、対向者の英日がアメリカ同様戦艦の建造にかまけて、大型空母を保有していないからに他ならない。 建造時期は、1932〜34年。排水量は条約に従い1.75万頓となっている。最新鋭のホーネットは戦争開始半ばに就役し、戦争前半には関わっていない。
※名称は、史実のヨークタウン級から取ったが、史実のレンジャー級+レキシントン級÷2のような形になる。 レンジャーより若干大きな船体に、艦橋の前後に20.3cm連装砲を各1基搭載している。これでも十分有力な艦で、対抗上、日本が蒼龍級を建造する。
■重巡洋艦 各種条約型巡洋艦:3クラス10隻
日本がせっせとこのクラスを建造するので、この対抗上目下急ぎ建造中ですが、戦争に間に合ったのは、史実と同じ建造ペースとしたので10隻となります。 また、1年以内に4隻が戦線に参加できるタイムスケジュールにあります。
■軽巡洋艦 オハマ級:10隻
これについては、史実と全く同じです。 合衆国が最初に建造した近代的巡洋艦ですが、この当時の偵察巡洋艦としてバランスの取れた優秀な能力を持ちます。 この次の「ブルックリン」級は、戦時計画で立案されるでしょうが、戦列に出るまでには2年かかります。
■駆逐艦 平甲板型:110隻
第一次世界大戦に参戦していないので、俗に言う「フラッシュ・デッカー」は、あわせて110隻しか建造されていません。 しかし、それでも膨大な数には違いなく、以後の新規駆逐艦の建造には不景気の影響もあり、戦争に入るまで手はつけられていません。 なお、大戦前に史実のファラガット級が大量に計画、建造される事になりますが、就役は34年の後半に入ってからになります。
■大英帝国
ついで、英国の1921年度計画で立案された艦たちについても少し見てみましょう。 ただし、1924年に軍縮条約が締結され、再度計画が練り直されるので、艦の形は史実におけるネルソン級と同様になります。
■聖者級級戦艦
1921年度計画で成立した、英国最強の大型戦艦。 当初計画の50.8cm砲は、実際建造する上で現実的な数値でない点と、排水量を条約内に収めるためと、日本の主力戦艦への対抗から、ライバルと同様の口径の砲を採用しています。 艦形としては、計画時の主砲の間に艦橋を挟んだものではなく、純粋にネルソン級を18インチ砲戦艦にスケールアップしたものになります。 ただし、18インチ砲戦艦としては船体がやや小さく、巨砲のプラットフォームとしては相応しくないので、史実の初期計画より全幅を3m大きくなっています。(これでも小さいが。) 攻撃力、防御力については折り紙付きで、この当時の戦艦としては比較的高速な部類に入りますが、徹底した近代改装が施されないと、米戦艦同様、後に脚の遅さがネックの一つとなるでしょう。 ■I級級巡洋戦艦
能力的には元計画に近いですが完成した姿は、ネルソン級を細長くしたような優美な姿をしています。 筆者的には、ネルソン級がこの時代最も美しい艦の一つでないかと考えています。(やはり、フッド級の方が美人かな?) もちろん、巡洋戦艦としては重厚な装甲、圧倒的な俊足、堅実な砲撃力が生み出すパワーは、実質的に欧州一と言っても過言ではないバランスを持った高速戦艦と言えます。このクラスに対抗するには、欧州に存在する戦艦では難しく、八八艦隊かダニエル・プランの大型戦艦が必要でしょう。 もし、ビスマルクと対決する事になっても、何ら遅れはとらないだけの能力を持ちます。 ただ、出力比的には、32ノット出るか少し怪しいいんですが・・・。
これら以外に英国は、軍縮条約での取り決めと、日米への対抗から多数の戦艦を保持しています。 実際の数としては、1934年時で、戦艦はクイーン・エリザベス級:5隻、R級:5隻、アイアン・デューク級:4隻、エリン級:1隻の15隻で、巡洋戦艦はフッド級:4隻、レナウン級:2隻、タイガー級:1隻の7隻となり、これに加えて先述の聖者級とI級が各4隻ずつ加わり、合計30隻もの戦艦・巡洋戦艦を保有する事になります。 このため、多数の空母を保有するゆとりはなく、戦艦の内旧式艦のいくつかも(アイアン・デューク級、エリン級、タイガー級)、主に予算の問題から平時は、日米と違い実質的には保管艦状態に置かれることになります。
また、後日談的になりますが、1939年頃には、聖者級:4隻、I級:4隻、フッド級:4隻、レナウン級:2隻、クイーン・エリザベス級:5隻、R級:5隻程度の布陣で、起こっている可能性の高いドイツとの戦いに臨みます。 しかも、これに3.5万トンクラスの新型戦艦が順次戦列に加わります。 戦艦ばかりなので空母数が若干少ないでしょうが、ハッキリ言って、30ノット級の高速戦艦が10隻もあるので、ドイツ第三帝国が海軍を再建しても、到底水上艦で太刀打ちできるものではありません。装甲艦も肩身が狭い事になる可能性大です。もし、ドイツが英国海軍と対抗しようと考えるのなら、有名な「Z計画」が大過なく完成しなければならないでしょう。
なお、英国以外に、欧州にはフランスとイタリアという海軍列強が存在しますが、史実においてもこの時期ロクに大型戦艦の建造計画を立てていないので、これだけの差を付けられたらよけいに建造する気をなくしているかも知れませんので、この時期に建造された大型艦は両国に存在しないとしておきます。 もちろんこれは、純粋な国力的な問題から、余程大海軍建設に執着しない限り両国の国力では、超大型戦艦の建造など主に予算の問題から不可能だからです。
※ ダニエル・プランの戦艦は史実との変化がないので、八八艦隊と違いシルエット画像はあえて掲載していません。ご了承ください。