■大日本帝国海軍連合艦隊、アメリカ太平洋艦隊編成表

■大日本帝国 海軍 連合艦隊編成表
(1934年2月マーシャル沖海戦時)
■アメリカ太平洋艦隊編成表
(1934年2月マーシャル沖海戦時)

所属艦艇
第一艦隊 第一戦隊:「紀伊」、「尾張」、「駿河」、「近江」
第二戦隊:「加賀」、「土佐」、「長門」、「陸奥」
第五戦隊:「伊勢」、「日向」、「扶桑」、「山城」
第七戦隊:「最上」、「三隈」、「熊野」、「鈴谷」
第十四戦隊:5500t型:4隻
第一航空戦隊
「鳳祥」、「龍驤」、「龍鳳」 小型艦隊型駆逐艦:4隻
第一水雷戦隊:5500t型:1隻 艦隊型駆逐艦:16隻
第一潜水戦隊:防護巡洋艦:1隻 潜水艦:12隻
第六潜水戦隊:母船:1隻 呂型潜水艦:12隻
第二艦隊 第三戦隊:「富士」、「阿蘇」、「雲仙」、「浅間」
第四戦隊:「葛城」、「赤城」、「愛宕」、「高雄」
第九戦隊:「古鷹」、「加古」、「青葉」、「衣笠」
第二航空戦隊:「祥鳳」、「瑞鳳」 小型艦隊型駆逐艦:4隻
第三水雷戦隊:5500t型:1隻 艦隊型駆逐艦:16隻
第二潜水戦隊:防護巡洋艦:1隻 潜水艦:12隻
第三艦隊 第六戦隊:「金剛」、「比叡」、「榛名」、「霧島」
第八戦隊:「妙高」、「那智」、「羽黒」、「足柄」
第十戦隊:「鳥海」、「摩耶」、「伊吹」、「鞍馬」
第十三戦隊:5500t型:4隻
第三航空戦隊:「蒼龍」 小型艦隊型駆逐艦:4隻
第二水雷戦隊:5500t型:1隻 艦隊型駆逐艦:16隻
第四水雷戦隊:5500t型:1隻 艦隊型駆逐艦:16隻
第三潜水戦隊:防護巡洋艦:1隻 潜水艦:11隻
第七潜水戦隊:母船:1隻 呂型潜水艦:11隻
第四艦隊 第十一戦隊:5500t型:4隻
第五水雷戦隊:5500t型:1隻
       艦隊型駆逐艦:8隻 小型艦隊型駆逐艦:8隻
第四潜水戦隊:母船:1隻 呂型潜水艦:12隻
第五艦隊(北方
 警備)
第十二戦隊:3000t型:2隻
第六水雷戦隊:5500t型:1隻 
       小型艦隊型駆逐艦:12隻
第五潜水戦隊:母船:1隻 呂型潜水艦:11隻
海上護衛
総隊
第七水雷戦隊
3000t型:1隻 艦隊型駆逐艦:2隻 小型艦隊型駆逐艦:6隻
第八水雷戦隊:小型艦隊型駆逐艦:8隻
第九水雷戦隊:旧式艦隊型駆逐艦:10隻
第十〜十五水雷戦隊:護衛駆逐艦:64隻
「千鳥」級海防艦:4隻
他小艦艇多数
赤文字:戦艦戦隊
緑文字:巡洋艦戦隊
桃文字:空母戦隊
青文字:水雷戦隊
紫文字:潜水艦部隊

所属艦艇
第一任務
部隊
第一戦隊
「サウスダコタ」、「インディアナ」、「マサチューセッツ」
第二戦隊
「アイオワ」、「モンタナ」、「ノースカロライナ」
第三戦隊
「メリーランド」、「コロラド」、
「ウェストヴァージニア」、「ワシントン」
第四戦隊:カリフォルニア」、「テネシー」
第五戦隊:「ニューメキシコ」、「ミシシッピ」、「アイダホ」
第一巡洋艦戦隊
「ノーザンプトン」、「チェスター」、「ルイスビル」
第三巡洋艦戦隊
「シカゴ」、「ヒューストン」、「オーガスタ」
第一空母戦隊:「エンタープライズ」
第一水雷戦隊:「シンシナティー」、「デトロイト」、
       「マーブルヘッド」、「メンフィス」
       駆逐艦16隻
第二任務
部隊
第一巡洋戦艦戦隊
「レキシントン」、「サラトガ」、「レンジャー」
第二巡洋戦艦戦隊
「コンスティレーション」、「コンスティテューション」、
「ユナイテッドステーツ」
第二巡洋艦戦隊
「インディアナポリス」、「ポートランド」、
「ペンサコラ」、「ソルトレークシティー」
第二空母戦隊:「ヨークタウン」
第二水雷戦隊:「メンフィス」 駆逐艦16隻
第三任務
部隊
第六戦隊:「アリゾナ」、「ペンシルヴァニア」
第五巡洋艦戦隊
「オハマ」、「リッチモンド」、「トレントン」
第三水雷戦隊:「ミルウォーキー」 駆逐艦16隻
第七水雷戦隊:駆逐艦16隻
(これに、歩兵師団3個師団を輸送する船団が付随する。)
アジア艦隊 (1934年1月時点)
第七戦隊:「ネヴァダ」、「オクラホマ」
第八水雷戦隊: 「ローリー」 駆逐艦14隻
潜水艦群: 潜水艦38隻

第四任務
部隊

大西洋艦隊

第八戦隊:「テキサス」、「ニューヨーク」
第九戦隊:「アーカンソー」、「ワイオミング」、「ユタ」
第四巡洋艦戦隊:)(全艦建造中)
(「ニューオーリンズ」、「アストリア」、
「ミネアポリス」、「タスカルーザ」)
第三空母戦隊:「ホーネット」
第四水雷戦隊:「コンコード」 駆逐艦16隻
第六水雷戦隊:駆逐艦16隻
潜水艦群: 潜水艦36隻


■艦隊編成補補足

 以上が、日米双方の1934年、太平洋戦争開戦時の艦隊編成になります。ご覧になって分かると思いますが、日本側は史実で想定されていた八八艦隊の編成とは変化しているのが分かると思います。
 それに引き替え米太平洋艦隊の編成は、それ程逸脱していないものとなっています。この辺りの事情を編成を見ながら少し見ていきたいと思います。ただ、ここでは日米双方の艦隊編成を紹介していますが、「艦隊」としてのシステム面のみを重点的に紹介します。

◆連合艦隊
 一応おさらいしておきますと、米軍を迎撃するにあたり、日本海軍側が八八艦隊の為に書いた脚本は、歴史的完全勝利に終わった日本海海戦をたたき台とした伝統的な漸減戦術です。
 簡単に言えば、敵地よりはるばる日本近海に襲来する敵艦隊を、様々な戦術、兵器でもって段階的にすり減らし、決戦海域で可能な限り優勢な状態をもって主力艦隊をもって撃滅すると言うものです。これについては、日本海軍が真の外洋海軍とならない限り決して変わることのない、かなり手前勝手な必勝戦術となります。
 そして、ここでもその大前提は変わっていません。ただし、史実同様内南洋が自らの勢力圏となっているので、ココを防衛するのが目的となってしまい、それよりもやや東側のマーシャル群島沖が決戦海域として想定されます。これについては、史実とさほど変化はありません。
 しかし、史実より多少お金持ちなので、その戦略をより柔軟に実現するために、高速給油艦(オイラー)など支援艦艇も出来うる限り整備されている事が、この海域での機動決戦を可能とする重要な要素となります。
 支援艦艇が多数存在するのは、艦隊根拠地の存在しない環礁などに一夜にして拠点を作り上げる、いわゆるサービス部隊を保有しているためです。(マーシャル諸島を決戦海域とした後の史実の海軍も、本来は整備したかったはずです。)

 決戦海域は、マーシャル諸島沖。
 では、そこでの戦術はどうなるでしょう。
 迎撃に際して連合艦隊の基本戦術は、日本海海戦のような、第一段:水雷戦隊による襲撃、第二段:主力艦隊による昼間砲撃戦、第三段:水雷戦隊よる夜襲・・・と、カイザー・ラインハルトも真っ青の、まるでパイの皮のような重厚な機動縦深防御陣(日露戦争での連合艦隊の戦術の場合、この名称こそ相応しいと思います。)によって、敵艦隊を文字通り消滅させてしまうものです。
 これは、日本海海戦においては、第一段が波浪が高いためできませんでしたが、しかし第二段、第三段が日本側の戦術ミスが総合的に最小限に留められた事などから、異常なほどうまくいったため迎撃作戦の半分のところで、敵艦隊が実質的に消滅してしまうという程うまく機能しました。
 歴史上これほど海上戦闘が、一方の事前の思惑通り進展した事は稀ではないでしょうか。特に近代においてはこれはもはや異常とすら言えます。ただし、近代日本が建設した『六六艦隊』と連合艦隊が、近海迎撃システムとして完成されていたとも言えるかもしれません。
 では、1930年代におけるこの作戦はどなっているでしょうか? 仮想敵国は、アメリカ太平洋艦隊に変わりましたが、兵器の進歩と秀才参謀たちにより、戦術はさらに磨きがかかり、演習においてなら、まず間違いなく敵艦隊は消滅するよう練り上げられているでしょう。それは、何度も何度も行われた舞台の演劇のように、演習では演じられている事と思います。これは、史実では九段階にもわたる漸減戦術と言う形で完成する事になります。
 史実においてですらそうでした。それなら24隻もの鋼鉄の戦乙女を擁する連合艦隊なら、演習の上なら全く問題なく敵艦隊を殲滅できる事でしょう。
 まさに、日本側から見た場合完璧なシナリオであり、水戸黄門のストーリーよりも分かりやすいお話になる事でしょう。

 しかし、明治と昭和では、技術の進歩がいささか兵器にも変化を強要します。する筈です。ただし、1940年頃と違いまだ航空機は偵察と艦隊上空の制空任務以外では大して役に立たないとされているので、ここでは水雷戦隊と潜水艦と言う事になります。もちろん、富岡参謀が練り上げたとされる、九段階にもわたる迎撃陣とその中核たる超大型戦艦と航空母艦による迎撃陣はまだ存在しません。
 つまり、在るのは相手とほぼ互角の正面戦力を持った八八艦隊を中核とした、実に漢らしい砲雷撃戦を中心に据えた迎撃陣です。つまり、基本的には高度な機動性を維持しつつ砲雷で敵を撃滅するという点において、根本的な変化は見られないと言うことになってしまいます。
 さらにに技術的な変化を見ると、日本において水雷戦術が史実同様八割の比率を克服するために、61cm魚雷の採用と高性能駆逐艦の大量建造で異常なほどの強化が見られます。これは、日本海海戦における水雷戦隊の活躍が影響しているので、八八艦隊においても補助戦力として最も重視すべき戦術となります。(ただし、酸素魚雷はもちろんこの時代ではありません。)
 それは、日本側の方が若干戦艦数が少ない事と、軍縮条約によりそれ以上の戦艦が建造できない事により、戦力充実は確実なものとなります。そうです、史実と同様の流れに沿って水雷戦隊は増強されるのです。
 そして、その就役した膨大な数の水雷戦用巡洋艦と大型艦隊駆逐艦たちを、明治の艦隊編成のまま縛り付け、そのまま主力艦隊と共に運用してはもったいないので一つにまとめあげ、初戦における強力な打撃戦力となるのは、史実においてそうだったように、八八艦隊の存在する世界でも似たような経路を辿る事となります(経路は違うが)。

 そこで、第一、第二艦隊は従来通りの主力決戦兵力となり、大規模夜間水雷襲撃戦を行うための専門の艦隊が、第三艦隊として再編成されます。
 ただ、第三艦隊まで決戦艦隊にしてしまうと、当初兵力としてフィリピンを封鎖・攻略する戦力がなくなる事になりますが、これは、敵主力艦隊の動員と侵攻が始まるまでに、第一か第二艦隊の一部が派遣される事になります。植民地警備艦隊程度なら、主力艦隊の消耗なしに敵艦隊撃滅は容易い事でしょう。また、フィリピン攻略船団の護衛は第一次世界大戦で誕生している海上護衛艦隊が引き受ける事になります。
 これは、米軍の兵力が平時においては基本的に太平洋と大西洋に分散しており、彼らが太平洋に兵力を集中して太平洋を押し渡ってくるまで時間があると考えられているからです。
 なお、第四、第五艦隊は従来の通り、第四艦隊は内南洋警備、第五艦隊は北太平洋警備の為の哨戒艦隊となります。
 また、潜水艦については、これも基本的には偵察と漸減のための補助戦力ですので、それぞれの艦隊に従属しており、通商破壊などの目的で統一運用される事はありません。特に戦闘初期における役割はその偵察能力と、見えない圧力を加える事で敵を心理的に疲弊させる事にあります。
 実際の役割分担は、大型潜水艦が艦隊を離れて長躯ハワイなどの哨戒を行い、呂型の小型潜水艦が漸減戦力として艦隊の近在に布陣し残敵掃討に従事するになります。
 そして最後に、第二次大戦で大活躍した空母です。各艦隊に従属している空母には、艦隊上空の制空権奪取と偵察のためにのみ存在しており、艦隊攻撃はほとんど考慮されていません。それに、1934年では、航空機はまだまだ非力な存在で、まともな攻撃力を持った攻撃機の完成は望むべくもありません。基地航空隊と連携して、長距離偵察と艦隊防空を任務として艦隊戦力の補助を担います。
 こうして連合艦隊は、第一陣は夜間襲撃を担当する第三艦隊、その後敵主力艦隊に決戦を挑む第一、第二艦隊と言う布陣になります。
 第三艦隊の一番の獲物は、米艦隊前衛で巨大な偵察艦隊を構成しているであろう、レキシントン級を中核とする艦隊です。軽防御しか施されていない彼女たちを、魚雷でもって攻略するのがその主な任務となります。
 その後、第一、第二艦隊を以て、低速であるが重防御を持つ敵戦艦群を機動力でもって有利な位置を占め、撃滅を図ります。
 第二段階がうまくいけば、第一〜第三の攻撃力を残している全艦艇を以て追撃戦を行い、太平洋上からアメリカ太平洋艦隊を殲滅します。また、この段階で潜水艦は落ち武者を狩るように、損傷してわずかな護衛か場合によっては独力で帰還を目指す艦艇の殲滅を開始します。
 なお、戦況によっては第四艦隊も追撃時の予備戦力として、哨戒任務から予備戦力とされ、戦隊単位で追撃戦に参加を行うことになります。

◆アメリカ太平洋艦隊
 一方、米軍の作戦計画は、有名な「レインボー・プラン」。その中の対日戦略を表す「レインボー・プラン・オレンジ」と言う事になります。
 これは、4つの段階からなっており、第一段階は日本軍によるグァム島、フィリピンの制圧でここで米軍は防衛的行動にのみ専念します。続く第二段階でハワイへの兵力集中を行った後、全艦隊を以てフィリピンを救援する部隊を護衛しつつ太平洋を横断し、同時に迎撃に現れるであろう日本艦隊を撃破する事が目的となります。
 そして第三段階でグァム島、フィリピンを奪回し、沖縄に橋頭堡を築きます。
 最後の第四段階は、日本を海上封鎖して資源面から締め付けるという、単に艦隊撃滅だけを目標とした、日本の艦隊決戦プランよりも進んだ戦略的視野も入った計画です。
 また、日本が内南洋を領土に編入した事により、内南洋も中継点として使用できる事から、中部太平洋を押し渡るルートが主要な戦術になります。
 なお、米国にとっては、大英帝国も敵対国の一つとなっているので、南太平洋からの進撃と言う事も可能になりますが、大西洋を我が物顔に行き来する英国を完全な敵とすると、いくら戦力があっても足りないので、オプションとしては危険な事から選択される可能性は低いでしょう。
 その上、英国とは直接戦争をしなくても、最低限北米東海岸を守備する必要もあることから、最初から全艦隊を太平洋に回すことも出来ません。
 さらに、侵攻してくる敵艦隊を撃滅すればいいだけの日本艦隊と違い、できるならフィリピン救援のための輸送船団にもある程度有力艦を割かねばならず、戦力の集中と言う点でどうしても日本に劣るものとなります。なら、輸送船団など日本艦隊を撃滅した後に連れてくればいいだろうと言う意見が出ると思いますが、それでは単に艦隊を撃滅するだけしかできず、本来の重要な目的の一つであるフィリピン救援が遅れる可能性もあり、米軍の目的にあまり合致しません。
 これは、合衆国の領域を敵に委ね、見た目には見捨てたと写ることにより、合衆国国内に厭戦気分が醸成される可能性がある事から、無視できない点です。
 また、支那に圧力を加える日本艦隊を牽制するためと、フィリピンで艦隊保全を行いつつ、日本の下腹部を牽制するためにも、フィリピンに少数でいいから戦艦を派遣すれば、日本に対して大きなイニシアチブを取れる可能性も高くなります。
 ただ、フィリピンにはあまりに有力な艦隊を派遣すると、日本を刺激しすぎることになり、派遣した時点で開戦となり、ヘタをすれば派遣途中に戦争が勃発し、単なる各個撃破のチャンスを日本に与える事になるので、この派遣は最低限の旧式戦艦数隻程度となります。アジア艦隊の艦隊決戦での目的は、敵一個戦艦戦隊を拘束する事にあります。
 もちろん、いきなり大部隊を護衛しつつ、全艦隊をあげて太平洋を進撃するというオプションもありますが、これでは誰が見てもアメリカ側から戦争をふっかけている様にしか見えないので、戦争の正義を欲しがるアメリカ市民、アメリカ政府としては、選択する可能性は低いと言えるでしょう。

 では、実際進撃を行う米艦隊の編成ですが、恐らく低速の有力な戦艦を全て一つにまとめた巨大な打撃艦隊を中核として、レキシントン級からなる重偵察艦隊、輸送船団を伴う護衛艦隊という構成になります。
 まあ、戦況によっては、輸送船団はないかも知れませんが、ここでは米軍が短期決戦を目指す戦術を採り、ゆえにマーシャル攻略の船団を伴っていると仮定します。
 ただ、日本が巡洋戦艦を主力艦隊と共に行動させている対抗上、レキシントン級を含む艦隊も主力艦隊と共に行動する可能性もありますが、これは本来レキシントン級が本格的な戦艦との砲撃戦を前提としていない事、敵を早期に発見し決戦に及ばないといけない事から、有力な偵察艦隊を前衛に配するしかないという米軍の戦術により、ちまたの小説のような運用をされる可能性は低いのではと考えられます。また、計画当時のアメリカ海軍のドクトリンにも、巡洋戦艦を戦艦と真っ正面から殴り合う戦力としての運用は、あまり考えられていません。
 そう言う意味では、日本の第三艦隊は格好の標的と映るでしょう。アメリカの巡洋戦艦は基本的に巡洋艦を狩るためのものかでなければ、敵主力を誘い出す為のものだからです。
 なお偵察は、米軍も潜水艦の役目と思われるかも知れませんが、敵地のど真ん中で16〜18ノットの高速で動き回る日本艦隊を捕捉し、近距離から敵の概要を詳しく偵察するには、潜水艦ではいかに重厚な偵察を行っても、前線偵察において役不足となります。これは、日本海軍が史実と違い第一次世界大戦から対潜戦術も重視している事もある程度影響します。

 次に、米軍の全体の戦術はどうでしょうか。これについては、今まであまり論じられているのを見たことありません。
 見受けられるのも、大東亜戦争での史実のように、単に米軍お得意の力押しで、全艦隊を日本艦隊にぶつけて敵を撃砕してしまおうと言うものばかりです。
 確かに、米軍が旨とするのは、物量戦をもってする横綱相撲ですが、「侵攻海軍」を旨としている以上、偵察と後方支援についても重視する傾向があるので(と言うかそれが当然だが)、この世界では、レキシントン級を中核とする偵察艦隊、過半の戦艦が集められた主力艦隊、輸送船団を伴う本隊が、それぞれそれなりの距離を開けて進撃している事になるのではないでしょうか。
 各艦隊がある程度離れている理由は、偵察艦隊はその俊足を活かし前線で広範な偵察活動を行うためで、輸送船団は、万が一敵艦隊に捕捉される可能性をより低くしておくためです。
 ですが、偵察艦隊は大きな砲力を持ったレキシントン級を6隻も含む以上、敵主力艦隊発見後は本隊に合流し、決戦においては、遊撃戦力として活躍する事がやはり想定されているでしょう。
 簡単に言ってしまえば、アメリカ海軍が目指しているのは、輸送船団の事を考えなければ、英独が繰り広げたジュットランド沖海戦の焼き直しです。
 海軍の戦術傾向として、最新の戦闘の例から戦術を構築するという向きがあるので、これはかなり確実なのではと考えます。
 これは、第二次世界大戦の史実の地中海で、英伊との間で発生した大規模海戦でも似たような状況があった事から、欧米での一般的な戦術と言えると思います。
 日本海軍のように日本海海戦を第一の戦訓として、巡洋戦艦と戦艦を組み合わせた機動(決戦)戦術の方が、いかに有効であったとしてもむしろ異端と言えるでしょう。
 


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