■概容
●太陽帝国楽屋裏その零「大局的目的」

 「遠くて近い世界」もしくは「近くて遠い世界」:
 架空世界を楽しむとしても、「遠くて近い世界」もしくは「近くて遠い世界」というファクターは重要だと考える。純然たるファンタジーやSFでないなら、遠すぎる世界ではよほど慎重に組み上げない限り読む側を置いてけぼりにしかねないからだ。
 上記の目的を達成するため、急速に近代化していくアイヌ人、アイヌの影響で限定的な大航海時代へ突入する日本人というイレギュラー以外、なるべく史実の表面的事象をなぞるようにする。特に欧州史の根本的な改変はあえて行わない。近世以降の世界史に大きな影響を与えた欧州史を大幅に改変すると我々が身近とする近代以降の歴史が大きく覆り、我々すべてにとって全くのファンタジー世界のようなものが簡単に現出してしまうからだ。
 ただし、日本の教科書であまり教えない地域、世界史上で影響の少なかった改変は、20世紀に入るまでの世界史に大きな影響を与えない限り対象外とする。北米大陸史も同様。
 また、基本的に史実の事象をなぞっていくのだが、全く同じにするのではない。我々の歴史とよく似た状況の中に全くの異分子を入れることで、遠くて近い世界を実現するのだ。

 アイヌ王国:
 現日本人と少し似ているがどこか違う求心力、価値観を持った民族と、彼らに率いられた近代国家を作り上げること。これに尽きる。近在に対等な近隣者を作ることで、日本人による新たな文明圏を日本人とそれに類する人々のみで無理なく作り上げることができる。
 アイヌ人を改変対象に選んだのは、近隣に日本以外の敵もしくは外交相手がないこと。独自の文化の基礎があること。産業の近代化に不可欠な資源が、域内に辛うじて存在することから。
 また、アイヌの本拠地モショリ(北海道)からユーラシア大陸北部と北米大陸にかけては、中世から近世にかけて強大な政治勢力が少なく領土拡張が比較的簡単という要素も見逃せない。
 なお、建国時から戦国時代以前までの時代は、時代的にたった一人のヒーローの存在やファンタジーが許されるであろう最後の時期なのでこの点を強調。近世、近代との差を付ける。アイヌを、アニメやマンガに出てきそうな、派手で無国籍に近い存在としているのもファンタジーとしての要素を満たすため。
 だからこそ、ユーラシア大陸や北米大陸に大遠征をさせたのだ。

 豊臣幕府開府:
 排他的傾向の強い織田幕府(織田信長)では、アイヌ(近隣の異民族、異文化)の存在を許す可能性が低い。反対に、旧来の武士的な側面の強い徳川幕府では、史実の限定的鎖国に傾く可能性が高い。それ以外の戦国武将では、上記三者以上の政府を作る可能性は低い。消去法から、徳川政権より近代的な行政府を作る可能性があるのが、織田政権もしくは豊臣政権になる。
 また、少なくとも初期の段階で一族の支配力の弱いであろう豊臣政権の下では、初期的な近代官僚達が力を持ち日本そのものを近代に押し出す可能性が高いのではと判断した。
 なお、織田政権が日本統一を走りきった場合、日本型絶対王制が成立し、その後の歴史的変化が大きい可能性が高い。しかし、日本人が日本人のままの場合、日本人に欧州的な絶対王制は似合わないし、今回のテーマでもない。

 海外膨脹:
 主目的は、日本語圏、日本文明圏そのものの拡大。単純な勢力拡大や植民地獲得にはない。
 上記目的を達成するため、20世紀の時点で史実とはそれほど違わない世界の勢力図や列強おパワーバランスを可能な限り維持しつつ、日本人の勢力圏だけを大きくする。
 副目的は、日本人そのものの数的増加。副目的のため、非文明圏、歴史上消滅した国家、勢力に積極的に手を伸ばさせる。
 また、日本社会全体の多極化を作り上げるため、日本人が一度は手にした場所を他勢力に限定的に明け渡し、さらには独立させ、現代に至る過程で再グループ化させていく。
 日本以外の日系国家での多数派は日本人なため、日本人を多極化することに貢献する。

 国家の興亡:
 アイヌ王国は建国から約600年の間、日本は慶長の役から以後約400年の間、実に様々な国を作ったり滅ぼしたりする。
 アイヌの膨脹期にできたユーラシア大陸各地の国々を含めると、建国されたであろう国は数十に及ぶだろう。
 国家の興亡の主目的は、日系の国々や勢力を作ることでの日本文明圏の成立を目指す点にある。しかし、極めて個人的な目的として、架空の国を色々作ってみたかったというのがある。極端な話し、日本が列強にならなくてもよかったのだ。
 まあ、軍艦がいっぱい浮かばないかという思いはあったが、史実で覇をとなえた列強と競り合うような国は結果としてできたら御の字、できなくて当然ぐらいの気持ちでこねくり回した。すべては、私個人のお遊びとしての要素が強くなる。私は、国家の興亡や大戦争などより、そうした「箱庭」が好きなのだ。そう言う意味では、ニタインクル公国やアズトラン連合王国、諸部族連合、この世界のオーストラリアなど、日本ではない国々の方が本格的に設定すると面白そうである。また、西征やアズトラン建国の経緯こそが、本来私が重視したい事象だ。
 正直、第二次世界大戦頃から続く戦争(戦闘)は、たくさんの軍艦を浮かべるという私個人の当初の目的を排してしまうと、読む方々へのサービスという要素が強い。

 明治革命:
 せっかく作り上げた近世国家(豊臣幕府)を倒すのは、旧来の意味での武家政権、つまり中世的価値観の政府である限り、日本人のような社会の場合抜本的な近代化が難しいから。
 革命による階級社会の打破なくして近代化なしというのは、歴史的にも避けて通れない事象だろう。
 そして天皇という抽象的な象徴君主を再設定し、史実と似通った立憲君主型の近代国家を組み上げるのも目的になる。当然だが、史実を表面的になぞるという理由もある。
 反対にアイヌの伝統的階級は、イギリスのジェントリーとドイツのユンカーの中間的存在としてそのまま残して、日本社会に二つの違った価値観を持たせる。
 多数の価値観の共有こそ、20世紀以後の世界帝国に真に必要なはずだから。

 他民族吸収:
 他民族吸収により民族、国家、勢力としての許容範囲内での揺らぎを作り上げ、日本社会そのものの中長期的停滞を防ぐ。
 また、他民族を取り込む際に日本人化する事で、日本列島の世界帝国化の一助とする。わざわざ東欧まで足を伸ばしたり、行く先々を日本化を前提とした植民地にするのは他民族獲得、吸収のためだ。
 画一的に収奪型の植民地や入植地を増やしても、長期的には日本列島単独の繁栄にはならない。

 最終目的:
 20世紀半ばから以後数世紀にかけての、パックス・ニッポニアの現出。ライジング・サンとシャイニング・サンを全世界にひるがえさせる事だ。だからこそ、表題が「太陽帝国」なのだ。

 具体的には、20世紀後半から以後数世紀において、日本人による世界帝国を日本列島中心に作り上げること。だから、北米大陸に日本人の超帝国ができてもいけない。もちろん、近隣に強大な大陸国家などあっては邪魔で仕方ない。
 そして、現在のアメリカ合衆国のように、情報交換が惑星規模に膨れあがる20世紀半ば以降に相対的な意味での世界帝国を作り上げれば、その地位は一世紀以上安定化しやすい。
 このため、アングロ・アメリカ、チャイナ、ロシア地域には、可能な限り統一的存在を作らせないことも歴史改竄上重要な要素となる。
 太陽は一つで十分なのだ。

 本当の個人的な目的:
 史実と異なる国をたくさん作る事。できれば軍艦もたくさんつくる事。この二点に尽きる。特に歴史上にはない国家や文化、できれば文明が構築できれば最良である。
 箱庭造りが好きな私個人としては、破壊ばかりが先行する戦争は、歴史と文明を作るための手段であっても目的ではない。
 つまり今回のシュミレーションは、架空史であって架空戦記ではないのだ。

■日本とアイヌが作り上げた国家や地域
・14世紀
アイヌ国(アテルイ朝)
・15世紀
なし
・16世紀
アイヌ国(チコモタイン朝)
アイヌ領・ポロモショリ(ユーラシア大陸北部一帯)
・17世紀
メキシュンクル大領(現メキシコ一帯)
キルギシア(仮名。カザフ一帯。※詳細未公開)
 ※中央アジア北部については、詳細設定がいまだ未公開。
雲南王国(後明末裔)
・18世紀
アイヌ王国(イトコノ朝)
テキサシュンクル大領(現テキサスからミシシッピ川西岸)
インドネシア連合王国
・19世紀
諸部族連合(多数派氏族の一つとしてアイヌも連なる)
アズトラン連合王国(現メキシコ一帯)
日本帝国(日本皇国、アイヌ王国、ニタインクル公国、台湾公国、呂宋共和国、レプンモショリ公国、苅間公国、北海道諸侯国、南洋諸侯国)
・20世紀
オーストラリア連合王国
ロシア極東(割譲)、東シベリア残余(割譲)、海南島(割譲)
満州国
内蒙古王国
モンゴル共和国(非共産)
中華連邦共和国(南中国)

■日本とアイヌが征服もしくは滅ぼした国家や地域
・14世紀
オホーツク海沿岸部すべてのアイヌ化
・15世紀
アムール川流域のアイヌ化
東シベリアのアイヌ化
レプンモショリ(アラスカ)のアイヌ化
・16世紀
東シベリア全域のアイヌ化
カシュガル・ジュンガル部(現東トルキスタン西部からカザフスタン東部地域)
キルギス部(現カザフスタン一帯)
イビル・シビル国(現西シベリア西部)
カザン・ハン国(現ウラル南西部)
アストラ・ハン国(現ウラル南部からコーカサスまで)
リトアニア大侯国(現ウクライナ・ベラルーシ主要部)
ニタイモショリ(現北米大陸西海岸北部一帯)
ノヴァ・イスパーニャ北部(現メキシコ)
東南アジア全域から欧州勢力駆逐
・17世紀
アイヌが服属させたユーラシア北部地域の切り離し。
呂宋(フィリピン全土)、馬来(マレー半島)、苅間(ボルネオ島北部)の服属
南洋諸島、新豊島(ニューギニア)、入武諸島(ニューブリテン)、ニタインクル(ニュージャージ)領土宣言
新出雲国(現カリフォルニア)

※1:18、19世紀は明確に滅ぼした国家はなし。逆に、19世紀に北米植民地のすべてとテキサシュンクルを失う。オーストラリアも英国の支配下に。
※2:20世紀、満州、ロシア極東、東シベリアを割譲させている。
※3:20世紀、マリアナ諸島など南洋諸島の一部を購入。

その1へ

topへ