■インスパイア・ファイル11「超弩級要塞ヤマト」
 ●原典:「超時空要塞マクロス」

 『超時空要塞マクロス』(ちょうじくうようさいマクロス)は、1982年10月3日から1983年6月26日まで毎日放送をキー局にTBS系にて全36話が放映されたSFアニメ (ロボットアニメ)。

 ストーリー
 西暦1999年、突如宇宙より飛来、地球(南アタリア島)に墜落した物体が異星人の宇宙戦艦らしきものであったことをきっかけに、地球統合政府が樹立されている西暦2009年が物語の出発点。
 (テレビ版)
 宇宙戦艦は人類によって修復され、地球統合軍の宇宙戦艦マクロスとして進宙式を迎えようとしていた。 進宙式の式典のさなか、月軌道上(?)に出現した異星人の宇宙船らしきものを、突如マクロスの主砲が自律的に稼動、撃破してしまう。 この事件が、監察軍による「ブービートラップ」である事を艦長グローバルは直感的に察知し、宇宙戦争に巻き込まれた事を自覚する。 意図せず異星人との交戦状態に突入してしまったマクロスは、発進を余儀なくされる。
 進宙式を見学にきていた主人公や、周辺の市街地市民など多くの民間人を巻き込むかたちで、何故か単発的な攻撃しか仕掛けてこない異星人と交戦しながらマクロスは宇宙を旅することになる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

●インスパイアへ

・キーワード
 突然出現する高度文明の異物。
 突然出現した高度文明の異物を拾った人々。
 異物は戦闘兵器。
 同時に、何かを告げるためのメッセージ。
 技術の解析を始める人々。
 新技術を巡って起こる争い。
 異物の技術を取り込んだ頃、突如始まる戦争。
 異物を中心に敵との小競り合い。
 遂に登場する、絶望的な敵の大軍。
 到来する破局。
 滅亡に瀕する人々。
 起死回生の妙手。
 勝利と希望。
 人々は新たな歩みを始める。

 箇条書きすればこんなもんだろうか。これを架空戦記の成立しうる時代に揃えなくてはならない。
 すべてをインスパイアしようと思えば、かなりの難物だ。架空戦記ということを思えば、原典と同じ異星人の宇宙船などを出すのは止めた方がいいだろう。だいいち、20世紀半ばまでの人類の技術力で数百年単位の技術を解析して、なおかつ工業製品として生産まで持ち込めるとは思えない(21世初頭でも似たようなものだが)。
 ここは架空戦記としての順当さから、タイムスリップネタとすればオマージュは成立しやすいだろうか。どこかに20世紀末の技術レベルを持つ巨大空母などの戦闘兵器を送り込めば、インスパイアとして許容しやすい筈だ。表題通りの戦闘兵器を再現するなら、メガフロートが適当かもしれない。
 また、タイムスケジュールを合わせるなら、第二次世界大戦の10年ほど前にどこかの国の勢力圏に送り込むのが妥当か。

 ただし、天文学的単位の軍事力を持つ戦闘集団と戦う主人公側という図式がどうしても成立しない。あえて例を上げるとするなら、最盛時の米ソ連合対技術力だけ持った日本ぐらいの差だ。
 原典に出てくる地球を破滅させる基幹艦隊も、全天を覆い尽くすほどの戦略爆撃機を出せば、イメージとしてはそれらしいだろう。
 あと主人公側は、巨大空母と先進的な艦載機という図式が一番インスパイアしやすいだろう。

 なお、異なるテクノロジーとその後押し寄せる大軍という図式なら、幕末少し前の日本で成立しやすいかもしれない。

『江戸時代末期の日本に、例年に比しても巨大な台風が到来。そして列島近在の某島には、1隻の最新鋭外輪船が乗員を失った状態で座礁していた。
 これを見つけた幕府と急速に育ちつつあった反幕勢力が技術の独占を狙って対立。内戦に発展してしまう。統合戦争の勃発だ。
 その後日本では数年間の間血みどろの内戦が行われ、内戦を経て新たな統一政府が成立した。
 いっぽうこの頃世界では、18世紀中頃北米大陸で勝利したフランスと、失地回復のためインドへの進出を強化するイギリスが二大強国として世界に君臨。文明世界を二分しての対立状態を作り上げていた。そして日本で座礁したのが、フランス海軍の蒸気船だったのだ。
 艦が修復された19世紀後半の某日、日本列島に突如イギリス艦隊が出現。ちょっとした行き違いから、日本列島と修復された艦は帝国主義渦巻く世界規模の戦争に巻き込まれていく事になる。』

 こんな感じの冒頭だ。地球勢力を日本、ゼントラーディーをイギリス、メルトランディーをフランスと見立て、異文化とレベルの違う文明の衝突にテーマを絞れば、ある程度インスパイアになるのではと思う。
 もっとも、19世紀半ばの技術力ではとうてい日本列島を殲滅する事はできない(まあ、沿岸部の都市を焼き払うぐらいは可能だが)。原典の結末にある大決戦の再現すら難しいだろう。だいいち主役メカたるバルキリーのインスパイアはまず不可能だ。手の込んだ状況再現に絞り込むならともかく、マクロス最大の「売り」の一つであるメカニック的なものを求める人に対するインパクトは弱いだろう。
 また、「マクロス」そのものを機能的な面でインスパイアするなら、おそらく21世紀半ば頃に米海軍で出現するかもしれない、浮体構造物方式の巨大移動基地が相応しいだろうか。大気圏内の水上で運用するという点を除けば、基地、空母、海兵隊拠点、そして移動要塞として使われるであろうウェポンシステムは、宇宙と海の違いこそあれまさにマクロスそのものだ。規模によっては内部に都市すら内包可能という点を加味すれば満点とすら言えるだろう。
 いっぽう、兵器面や戦闘の表面的事象でのインスパイアなら、佐藤氏の「征途」3巻で多くが行われているため同じ道を歩むことはできない。羅門氏の「青き波濤」も、タイムスリップした主人公達(関東平野全域だが)が未来の人類滅亡を回避しようとする点が近いかもしれない。

 よって今回は、タイムスリップや近未来SFをモチーフとしつつ、もう少し他とは違った道を、劇場版、テレビ版二つの側面を切り取りつつ考えてみよう。

 あ、そうそう、当然ではあるが歌が世界を救ったり、「ヤック・デカルチャー」と絶叫するような事象は無視する(笑)

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