電気工事屋時代の話

その2

 暑い・その@  名古屋は暑い。その隣の大府市も暑い。夏の日盛りに電柱の上にいると脳味噌が溶けて
しまいそうになる。知らない人もいると思うので言っておくが高いところが涼しいとは限らない。
風の無い日中のアスファルトの照り返しを受ける電柱の上は蒸し風呂以上だ。汗の塩分が
乾いて作業服に幾筋もの縞模様をつける
事はざらだし感電防止のために履いているゴム製の
長靴に汗が溜まって危険極まりない。やむなく柱の上から水を捨てる。足を上げるだけだが。
 暑い・そのA そんな状態で仕事をしていると頭もボケようと言うもの。街灯取付工事をしていたら気のせいか
電気が流れているような気がした。上の同僚に「電気死んでるよなー?」(注・専門用語で停電
している、の意。)と聞いたところ「えー?あ、わりいわりい、繋いじゃった」おいおい。
殺す気か?まあ100Vだから比較的安全だが。ちなみにこの同僚暑さでダウンした。
ちくしょう、これじゃあ俺が倒れるわけにはいかなくなったじゃないか(爆
 目の怪我 柱の上で作業中、電線を引っ張っていた工具の付属金具が突然外れて碍子を直撃。うち1個が
破断してしまった。新しい碍子を地上から上げようとしているとどうにも視界がおかしい。
そのうち同僚がこちらを指差して顔を引きつらせた。割れた碍子の破片が左目を直撃していた。
やむなく柱の上で手袋をはずして自分で引っこ抜いた(汗)仕事中に病院に行ったのは
言うまでも無い。幸い未だに視力は普通程度、ある。
 夢遊病者 さて、暑いとガテン系の連中は飲むのである。先輩達と夜中まで飲みまくった。最終的には何が
どうなったのか記憶に無い。ところで翌日初秋の風にくしゃみ一発、目覚めた時私は見も知らぬ
田畑の中に立てられた電柱の上で仕事をしていた。らしい。不思議な事に意識が戻ると自分が
何をすべきなのかがわからない。やむなく柱の下で片付けをしていた班長に事の説明を求め、
自分が夢遊病のように出社し道具の用意をし作業車を運転して現場へ来て仕事を始めた事を
知る事となった。そんな状態の奴に運転とか仕事をさせるなよ。あとで班長に聞いたところ
電気屋にはそんなん珍しくないので気にしなかったとか。ねえ、私って一人前になったの?(違
 台風、来襲 台風には当たり年なんてものがあるらしい。次々とやってくる台風に備えて会社に泊まりこみ
待機する。台風が通過したら俄然忙しくなるのが電気屋の宿命だ。2日3日の徹夜もありうる。
ところで台風で停電している時修理に出ている我々に苦情を言う客が結構多い。停電の理由は
誰が見ても我々ではないはずだ。気持はわかる。が、徹夜も3日を過ぎるとキレそうになる。
て言うか、キレた。(爆) 要するに客を怒鳴りつけたのだ。もはやそれは必然だったかも。
 手直し 工事に不備があったら「手直し」と呼ばれる再工事をしなければならない。無論工事代はそれを
やった事業所の負担。そしてそれについては全社に回覧が回る。冬の便りが聞こえ始めた頃、
長野支社から回ってきた一件。それは「谷間に張られた配電線に電柱がぶら下がった」とか
そう言う書き方だった。山中に電柱を立てて電線を張った訳だが一番低い所の地盤が非常に
堅くて電柱を埋める穴がなかなか掘れなくてとうとう電柱の埋没部を切断して法定寸法以下の
埋め戻しで立ててしまったらしい。普段は電線があるので倒れる事は無い。しかし北陸の冬は
早く、折からの寒波で電線が収縮しかろうじて埋まっていた電柱を引き抜いた、と言う事だ。
長い会社の歴史の中でも前代未聞の珍事だったらしい。担当者はさぞかし大目玉だろう(笑
 転勤 左遷とも言う。(笑) まあ、他にも色々とあった事はあったのだけど一番の理由は多分先日の
台風時の一件が尾を引いたとのだと思う。理由は示されなかったし特に内示も無かったので
厄介払いをされたと言うところか。住み慣れた大府をあとに春日井へ。住居は小牧にあった。
この頃から漠然とした会社辞めちゃおうかなみたいな気分が湧き出し始めていた。
それと同時に酒の量も増え始めていた。
 凍える… 季節も真冬のさなか、山の中の変電所脇で夜中の停電工事。風すら吹かず雪も降らない程の
寒さに凍えながら電柱の上で仕事をする。地上に据えた1000ワットの投光機に時折体を向け
暖を取る。夜明け前になると寒さもピーク。もう声もまともには出ない。スピードが落ちる両手を
気遣いながら何気に作業服を見ると……目の前で自分の体に霜が降りていった。いや、これは
もしかしたら汗などが作業服の外に出る時に凍り付いているのでは……?このままだと死ぬ。
本能的にそう感じた。手足がまともに動かないので仕事が終わっても地上まで降りるのに
かなり時間がかかった。全員で投光機の前に集まると一斉に全身から湯気が立ち上った。
 初イベント 鶴舞公園の一角にある名古屋市公会堂。ここでコミックカーニバル4が開催された。最近では
イベントでの行動に規制が多かったりするが当時は無法状態だった(笑)
会場内はBGM持ちこみ可だったせいかアニメ音楽が鳴り響き机の上ではゼンダマンが踊り
全盛期だった初代ガンダムのコスプレ集団は公園内になだれ込み連邦側とジオン側に分れ
何故か「花いちもんめ」を踊るのがお約束だったらしい。訳わかんねー(笑)
 入会 コミカ4の時に見かけたサークルが近くにあったので入会する事に。いよいよ引き返せない道に
突入していった感じだ。いきなり原稿の締め切りを告げられて焦る事に(笑)
正直レベルは高くなかった。いや、多分低かったのだろうが競い合うにはちょうど良かったかも。
 断酒 新年会で飲んでいたら後輩が私から借りていった指輪を紛失。その金の指輪は高校時代から
付合っていた女の子からの贈り物だった。申し訳無さに断酒を宣言。
それまで平均一日あたり一升瓶一本ずつ空けていたのにもかかわらず一滴も飲まなくなった。
 夢を見る 情けない話だが夢の中で何度も酒を飲んでは慌てていた。自分が実はアル中寸前だったのかと
その時初めて気がついたのだった。
 別れ 私を同人の道に引き込んだ女の子から手紙が届いた。大きな失恋をしたらしくて男と関わりたく
無いので私のことは忘れてください・・・・・・みたいな事が書かれていた。
釈然としない部分もあるが彼女の意思を尊重してそっとしておく事にした。残念だが仕方ない。
 挟む 仕事中、電柱の立替の際に古い電柱から電線を移す作業をしていたら片方の電柱が傾いて
二本の電柱の間に指を挟まれる(泣) お陰でその指は今でも爪の色がひとつだけ違う。
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