GENOCIDER ANGEL

〔貴様、ゲリラか……?いや、何であれエデンに刃向かう者は皆我々の敵だ!
かかって来い!私は、三番隊副長リップ!〕
レコーダーを再生すると、少しづつ敵の様子が解り始めた。
その中に相手の声も記録されていた。
〔私の名はリリス。おまえ達呪われた怪物共を地獄に追返すために
天界より降りて来た。おとなしく地の底へ帰れ……。〕
その言葉と同時に立体映像でリリスの全身像がうかびあがった。
それはまさしく、川のそばで少年が助けたあの少女の姿だった。
「リップの奴、自分で腕を落としたのか?」
下士官のラミアが不思議そうにつぶやいた。
「そうだ。……この記録を我々に残すためにな!
リリスか……くそっ、堕天使が!今に見ていろ……。」
シオンはリップの腕をつかむとエネルギー波を発射した。
腕は光に包まれて四散した。
「どういう訳なのかはわからんが敵はどうやら一人、
それも強力なバイオアーマーらしい。しかし、七人の屈強な戦士と戦ったのだ。
無傷とは思えない。この周辺を徹底的に調べあげろ!散れっ!」
「はいっ!各員、調査に向かいます。」
五人の下士官は一斉に風のように散って行った。
その中の一人ラミアがコロニーの雑貨屋でいつもの倍の食糧と薬を買った
少年の情報を得るのにそう長い時間はかからなかった。
連絡を受けた隊員達は一様に少年の家へ急いだ。

その頃、負傷したまま眠っていたリリスが意識を取り戻していた。
ゆっくり体を起こすと、美しい銀色の髪が腰まで伸びている。
青い大きな目で周囲を見回す姿はあどけない少女のしぐさだった。
「あっ、だめだよ、まだ起きたりしちゃあ。」
紙袋を抱えた少年が入り口で声をかけた。
「あなたが……私を助けてくれたの?ありがとう。でも大丈夫よ。
傷もみんなふさがったし。」
それを聞いて少年は仰天した。
「そ、そんな馬鹿な!あれ程の傷が?」
「ほんとうよ、ほら」
リリスはボタンを外して胸元を少し開いて彼に見せた。
確かに血の跡は残っているものの、傷口はすっかり治っている。
「信じられない……、あれほど……。」
と、言いかけて彼は急に顔を赤らめた。
少女は下着を何もつけていなかったのだ。
それに気づいた彼女も慌てて目線をそらし服装を正した。
長袖のトレーナー風のシャツと、革の短い上着。
スカートは超ミニで、そのまま座られると目のやり場に困る。
少年は、目をそらしたままつぶやくように言った。
「僕の名は、アッシュ。アッシュ・ゼフィルス。
家族は先の大戦で亡くして、今はこの家に一人で住んでいる。君は?」
「あ、私はリリス。リリス・ガーフィールド。
旅の途中なの。色々心配させちゃったけど、そろそろ出発しようかと思っているの。」「え?もう?別に気兼ねしなくていいよ、ゆっくりして行けば?」
リリスは少し困った顔をした。
「あ……僕も男だし、一つ屋根の下……やっぱり、まずいよね?」
「違う、違うのアッシュ、私がいると絶対迷惑をかけると思うの。
さっき私の傷を見たでしょう?実は今、ある組織と戦っているから、
だからこれ以上ここにいたらきっとあなたが酷い目にあう。」

その頃、アッシュの家の周りは五番隊に囲まれていた。
双眼鏡でリリスの姿を確認したシオンは親指で隊員達に合図を出した。
全員が確認しうなずいた後カーシャが家へ向けて片手を突き出すと
拳が淡い炎のような物に包まれた。エネルギー波だ。
そしてそれは次第に大きな光の塊に変わって行く。
その表面には、放電状の光が幾重にも交錯して、まるで臨界点に達する寸前の
原子炉の輝きにも似て危険な魅力を放っていた。

「ひどい目って、どんな?少々の事なら……。」
「しいっ……。」
危険の匂いを感じ取ったリリスは問いかけるアッシュを制した。
「そうね、たとえば……こんな事!」

と、言った瞬間、アッシュの家は爆発音と共に残骸になっていた。
砂埃がおさまった頃シオンは部下と共に崖の上から舞い降りた。
「出て来い!この程度で倒せるとは思ってない!……確かリリスと言ったな?
私は、五番隊隊長シオンだ!三番隊の復讐戦に来た!」
すると崩れた壁石をはねのけて瓦礫の下からリリスが姿を現した。
アッシュ共々無傷だ。
「ちえーっ、死んだふりは通じないのかぁ……。さすがはシオン。
ふふっ……成長したわね。」

リリスの言葉にシオンは目を見開いた。
「お前……どこかで会ったか?」
リリスは目を細めて軽く笑顔を作った。
「ふん、まあいい。後の話は本部で聞くとしようか。
と、言っても素直について来るとは思えんが。」
隊員達がじわじわと間を詰めて来る。
リリスは手を後に組んだまま斜め後ろのアッシュに耳打ちした。
「……アッシュ、聞いて。今から、奴らを振り切るわ。
合図したら私の体にしがみついて。いい?」
「えっ、いいの?わかった。」
何と無く嬉しそうなアッシュの横で、
リリスは後手に組んだままの両手にエネルギーを集めだした。

「さて、最後通告だ。おとなしく投降するか、それとも我々と一戦交えるのか?
好きな方を選ぶがいい。」
シャルルが余裕の顔で聞いて来た。
「しかし、今度は不意打ちは通用しないぞ?」
 リリスはしばし閉じていた目を静かに開けると周囲を見渡して、
つぶやくようにはき捨てた。
「ふふっ……これだけいれば勝てるとでも思ったの?」
全員の動きが止まった。リリスはさらに続ける。

「まあ……他にも色々と理由はあるんだけどね……。
残念ながら、今日はあなた達と遊んでいる暇が無くてね。」
リリスの後に光が漏れて来た。瞬間、全員が身構えた。
「ごめんねぇ、さよならっ!」
そう言うが早いか、リリスは差し上げた両手で作った巨大な光球を
前方の地面へたたきつけた。轟音と共に辺り一面を閃光が走った。
「奴はっ……!?」
タッチの差で飛びのいたシオンは、砂埃の中で敵の姿を探した。
だが次の瞬間、信じられない光景に彼女は言葉を失ってしまった。
「ば……馬鹿な……!」
リリスはそれまでのバイオアーマーの限界と言われた高さを
遥かに越える跳躍力でその場を脱出したのだ。
しかも、少年一人を小脇に抱えたまま……。その後をマチスとラミアが追っている。
「隊長!リーザが……!」
シャルルの声に彼女が振り向くと爆点に一番近い所にいたリーザは
左腕と左足の一部を失っていた。
もっとも傷は既にふさがり始め、肉が盛り上がり出していた。
「30分位……だな。跡をトレースして来い。」
「すみません……直ちに!」
マチス達を追って、走り去るシオン達。
岩場に座り込んだリーザも体の再生と共に立ち上がると力強く走り出した。


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