数学について最近思うこと 

〜 日本の大学受験に端を発する数学教育の問題点〜


〜はじめに〜

 最近マスコミや教育界などの記事で、わが国での子供達の数学嫌いが小学校の4年生位から始まり、年々増加傾向にあるということを目にするようになりました。わが国が技術立国であるということを考えれば、非常に危惧すべき問題であると思われます。また、このことに関連して、国の中央教育審議会での「完全学校5日制の実施案」にともなう「公立中学高校の6年一貫教育制度」や「理数系生徒の飛び級制度」の論議などがあり、学校組織自体が大きく変わろうとしています。

 現在のわが国の子供達の数学力は、諸外国に比べて知識としてはかなりの程度身に付けているけれども、筋道を立てて考え、説明していく力が足りないといわれています。それは「数学オリンピック」などで代表されるコンテストの結果や、(トップクラスの子供達の比較ですが...)文部省の「新学力テスト」の結果をみても明らかです。

しかし、わが国での入試問題を見渡しますと、大学入試センター試験で代表されるように、まだまだ「問題の本質を見抜き、じっくり考えて解く問題」よりも、「いかにしてはやく決められた手順で処理をするかという問題のほうがはるかに多いのが現実です。それにあわせて保護者の要求もわが子を後者を得意とする子供達にしたいということになる訳です。

 私は仕事がら、よく「数学好きにするにはどうしたらよいですか?」と(特に保護者から)質問されます。保護者の立場からすれば「数学が好き」=「数学の試験の結果が良い」なのでしょうが、実際はそううまくはいきません。前述しましたように、数学の試験の結果を良くしたければ、「なぜこのような公式が出てきたのか?どうしてこうなるのか?」という疑問を解決することよりも、特に進学塾において指導、マニュアル化されているような「この問題はこうして解け!!」式の勉強の方がはるかに効果があるのです。

例えば、小学校で習う錐体(すいたい)の体積をとってみても、(錐体の体積)=1/3×(底面積)×(高さ)ですが、なぜ1/3なんてものがでてくるのか?ということに殆ど触れることはないし、(実際小学校で説明するのはちょっと無理?学校5日制となる新学習指導要領では削除の予定)(分数)÷(分数)がいったい何を意味するのか?ということにあまり時間をかけません。


中学校で習う整数の掛け算にしても、(マイナス)×(マイナス)がなぜ(プラス)なのか?とか、二次方程式の解の公式でなぜ「解なし」なんていう解がある(教科書では解なしの問題は削除されていますが...)のか?


高校では、「解なし」は実は「虚数解」と教えられるが、虚数解なんてものがなぜ必要なのか?ユークリッドの互除法でなぜ最大公約数が計算できるのか?などなど...

このようなことをしっかり説明できなくても一定のきまりや公式さえ覚えていれば答えはでてきてしまうのです。逆に、試験で良い結果をだしたとしても、案外ちゃんとした説明をできる子供達は少ないのです。

数学嫌いの子供達にしてみれば、公式を丸覚えし、無味乾燥な処理手順によって結果をだすという行為は、やはりやる気をなくすことにつながるのでしょう。(それでも、たまたま点数がよかったときには、意味がでてくるのかもしれませんが...)逆に、一定の決まりや公式を丸覚えするのではなく、その本質を考え、理由が理解できたときに、一種の感動が生まれ、そのことが子供を数学好きにするエネルギーになるのです。(実際このようなことは皆、少なくとも一度は経験されたことと思います。)

とにかく数学は「できる」と「できない」がはっきりする教科です。例えば、ライバルと思っていた友達にできて、自分にはできないような場面のときに、いちばん「くやしいーっっつ」と思う教科は数学であろうかと思います。数学の成績がよい子にしてみれば、やはり問題を誰よりもはやく解くとか、難問といわれている問題を自分だけが解けたというのは優越感に浸れる、非常に気持ちのよいことなのです。
また、数学は友達に聞いたり、解答を見て分かるだけではなく、自分で解いて理解しなければ意味がないのです。みんなでワイワイ質問しあいながら勉強していくというよりも、孤独で我慢のいる教科であることも数学嫌いの子供が多い一因であると私は思っています。

 私は、元来「数学の問題を処理する能力を身につけること」「数学公式の本質を考え、理解する能力を身につけること」は違うことであると考えています。日本を代表する数学者の中にも、「子供の頃から、数学には大変興味があり大好きであったが、学校での数学の成績は悪かった。」という人が結構いらっしゃいるのです。では、「両方を教育すればよいではないか。」というご意見が聞こえてきそうですが、現在の文部省の学習指導要領で与えられているカリキュラムすべてをこなしていくためには、両方とも身につけるだけの時間は、はっきりいってありません。ですが、私は学習指導要領を変更するだけでなく、わが国を取り巻く社会全体の意識をかえなければ、本当の意味での数学嫌いを減らすことは難しいのではないかと考えます。諸外国に対するわが国の役割も年々大きくなっています。また、価値観が多様化している現代社会において、答えのない問題もどんどん増加していくことでしょう。これからの子供達には、このような答えのない問題に対して逃げることなく、忍耐強く答えを見つけていく力(生きる力)を是非身につけて欲しいものです。


 そんなわけですが、私にできることといえば「数学のおもしろさをご紹介する。」ということくらいです。このページでは、「えっ!!数学って不思議?」「数学っておもしろい!!」と思えるような題材を選んで、学校の数学のことなんて忘れて、楽しく数学に親しんでいただけるものをご紹介していきたいと思います。

おもしろ数学講座


これからも時間の許す限りどんどん追加していきますのでお楽しみに!!



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