あなたの貴重な体験は、他の人たちとの生活の関連において得られるものなのである。それゆえあなたは人との交際を進んで行うのがよいのである。

あなたは自分の願望とするものの供給を得るには、まずそれを実現するに相応しい心を持つことができねばならぬだけでなく、その夢が実現する媒体となる働きをする人たちと進んで交際する意思を持たねばならぬのである。これは何も人を利用するということではなく、人間相互の生命の交流に対し心を打ち開くという意味があるのである。

人々はあなたを知らなければ、援助の手を差し伸べることはできぬのである。あなたの方も彼らと交際していなければ、彼らのために働きを提供することはできぬのである。あなたは人とよく交際しているであろうか。

それとも、あなたはあんな腹黒で利己的かつ卑しい奴らはごめんだとの信念に依怙地に固執して、一歩もそこから出ないでいるのであろうか。もしそうなら、あなたは彼らに対し恐怖心を持っているのではないか。また彼らもあなたを恐れているのではないだろうか。あなたは彼らに疑わせるような態度をとっているのではないだろうか。あなたは彼らと意思の交流を計るべく、できるだけのことはせねばならぬが、それをやっているであろうか。

今ひとつの根本法則はこうである。 --- あなたは受ける前にまず与えねばならぬのである。与えると言っても私は全くの自己否定をせよとか、人類の崇高な大目的にのみ時間を消費せよということを説いているのではない。あなたの全身を貫流する生命の躍動を感ずるには、まず与えることが重要だということを言っているのである。

あなたがあたえることを嫌がるならば、この世界には欠乏というものがあると、あなたは信じていることを意味するのである。与えるといっても、浪費するならば、それは失敗せんと欲する自分の意志を人生の舞台で実演しているのである。

しかしあなたが真に正しい意味での「与える」ことを学ぶとき、あなたは枯渇することを知らぬ善の湧出するチャンネルとなることを知るのである。その善は、貨幣、愛、創造的才能など、その他いかなる形をとろうとも、あなたにおいてそれが実現することになるのである。

あなたが与える意義を充分知って与えるとき、供給の主幹線と直結することになるのである。なんとなれば供給が流れ入りつつあることを信ずるということは、あなたの生命力に点火するスイッチを入れることになるからである。

あなたは今、人生に与えることを行じているであろうか。与えるときは、これを報酬を求める気持ちで与えてはならぬのである。あなたは自分の力に応じてただ与えておれば、必要に応じてそこからいつでも引き出せる無尽の宝庫を持つことになる、ということを充分自覚して与えねばならぬのである。

あなたは健全なる方針に立脚しない人や主義に金銭を寄付しても、あなたの善意にかかわらず、金を浪費することになるのである。あなたは自分で過去の悪行と思っている行為の罪滅ぼしのために「あがないの賽銭」を与えるには及ばぬのである。与える価値のあるところに与えよ。なんらかの善を真にもたらすところにのみ与えるべきである。

与えるということは自分の稼ぎを超える無謀の消費をすることではないのである。あなたは与えるにも知恵を働かせ、循環の法則を学ばねばならぬのである。そうすれば、あなたは真に繁栄するとはどういうことであるか知るにいたるのである。

あなたは自分で考える以上の生活水準に達することはできぬのである。それゆえ、あなたは自分の人生で占める位置を向上すべく、自覚を更新して大きく成長したいと欲するならば、人生を雄大な規模で闊歩している人たちの持つごとき人生観を学ばねばならぬのである。あなたはそのような人たちと交渉を持つようにし、彼らの雰囲気に交わり、彼らについてできる限り学ぶべきである。

そして彼らの進んで差し伸べる援助の手を拒んではならぬのである。彼らの差し出す援助の手が、あなたの持つ道徳的感情に何ら違反せぬ限り、彼らの好意を拒絶してはならぬのである。あなたは偉大なるものを扱うことができるようになるためには、あなた自身がまず偉大にならねばならぬのである。

『心の力の秘密』　ユージン・ロイ・デービス　１９６４年　伊藤正・谷口雅春共訳

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