■ 「黙ってついてこい」式の指導法はもはや通用しない
(前略)
例えば、ある従業員の長所と短所を理解したとする。その場合、短所についてはもう諦めるしかない。短所を諦めて、いかに長所を伸ばしていくか。過度の期待をかけず、いかに少しずつ伸ばしていくか、ということがポイントなのだが、それにはまず、今の若者にはどういうタイプが多いのかそれを理解しておく必要がある。
では、いまの若者はどうなのかというと、いわゆる新人類。その新人類とは、欧米の社員の根性がなくなった奴、これが新人類だと思って間違いない。野心を持ってると言っても大したことがないし、自己主張といっても大したことがない。さりとて、日本的な忠誠心を貫くかというとそうでもない。言うなれば、欧米の社員から根性と迫力を取り除いた根なし草。これが新人類と考えていい。
野心があって自己主張もするんだけれど、欧米人ほど根性と迫力がないものだから、何をやってもやり遂げられない。そういう新人類を相手にする場合には、忍耐と愛情プラス「こいつは新人類なんだあ」という理解と諦め、これが必要だ。手っとり早く言えば、褒めて讃えて持ち上げる。そうでもしない限り居つかないし、育たない。今はそういう時代なのだ。
厳しいお父さん、お母さんに育てられ、逆境を雄々しく乗り越えていくだけの強い精神力と根性を身に付けている若者はあまりいない。時にはいるかもしれないけれど、それは宝物のような人で、ごくごくわずかでしかしかない。豊かな時代、根性のない時代、それが現代という時代であり、中途半端に欧米化された中に日本の古来のものが残っているのが、今の日本社会である。日本古来のよさが薄まってしまい、欧米のよくないところがこれまた薄まって入ってきて、いいところもあるんだけれど日本に徹しきれず、欧米にも徹しきれてないという現代社会。その中で育ってきたのが新人類なのだ。
それでも魂の奥には日本の精神が息づいている。だから、ゆっくり時間をかけて育てていけばわかってくるのだが、昔流の「黙ってついてこい」式のやり方では新人類は育てられない。褒めて讃えて、野心と自己主張を認めてやって、ジョブ・ディスクリプションを示してやらなければいけない。
「君の役割はこうでね、こういう仕事をしていくんだ。これを1年か2年やったら、次はこんな仕事があるからね。見たところ、君にはこういう長所があるみたいだし、将来性があると思うから2年間、これを辛抱しなさいね」
「5年辛抱したら係長か課長代理か課長になるから、そうしたらいまの給料がこれくらいになって、部下が何人ぐらいつくようになるからね。海外にも行けるしね」
「部下は、上司や目上に対してこういう態度で接しなければいけないよ。2年たったら君にも後輩ができるはずだ。そのときのためにも今、部下の育て方を勉強しなければいかんよねえ」
「重要なポジションの人間は管理部門と営業部門、両方の仕事を把握してなければいけないんだ。両方きちんとできたら取締役になるんだよ。それにはだいたい10年ぐらいはかかるよ。ウチも会社が大きいわけではないから、君のような優秀な人が10年やったら、きっと取締役になれるよ」
そのように、ジョブ・ディスクリプションをはっきり示して、夢と希望を与えつづける必要がある。それをやらなかったら、
「何のためにこんな会社にいるんだろうか、何のためにやっているのだろうか、こんな会社にいたって将来がないじゃないか」
「何で忍耐しなければいけないんだ。こんな仕事に何の意味があるんだろうか」
と、仕事に対する興味とか意義を見出せなくなる。すると意欲を失って、すぐに辞めちゃうわけだ。なぜこんなことをやらなければいけないのか、その意味がわからない。興味が湧いてこない、将来性がないと思う。この3つの理由で辞めていくのだ。
だから、「黙ってついてこい」とか「おれの言う通りにやればいいんだ」というのは、もはや絶対に通用しない。中小企業にやって来る若者は、単なる新人類ではないのだ。新人類プラス屈曲型。そういうのが中小企業に来るのだから、旧来型の指導法はこの際、あっさり捨てたほうがよい。
これほどまでの時代の変化。それが読み取れない中小企業の社長は、どんな人も使えない。中卒とか高卒とか大学の中退で、裸一貫でやってきた社長は、ジョブ・ディスクリプションの論理と説明の仕方を勉強しなければいけない。相手のレベルに合わせて「なるほどそうなのか」と納得できるようにわかりやすく、かつ忍耐と愛情をもって説明できるように自分を磨かなければいけない。
それができなかったら、それはもう社長自身の能力的限界としか言いようがない。ではどうしたらいいのか。くどいようだが、ジョブ・ディスクリプションを明確に提示するしかないのだ。
(後略)
『人づきあいで人を動かす』 深見東州 2001年 たちばな出版
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