楽天的な人生観も正しいし、厭世的な人生観も正しい。しかし前者と後者の相違はあたかも光と闇の相違のごときものである。楽天的な人生観にせよ、厭世的な人生観にせよ、それを把持する人それぞれの立場からは相応しいものであるけれども、この人生観の相違がその人の運命を決定する要素になるのである。その相違によって、それが力の源泉ともなれば、能力開顕（かいけん）の妨害ともなり、安楽と苦痛、成功と失敗を決定する要素ともなるのである。

光明主義の人生観の持ち主は事物を偏って見ないで、十全の相において見、それを正しい関係において見る。これに反して厭世的人生観の持ち主は事物の一面を観察して狭い人生の見方をするものである。前者は知恵によって輝かされて、存在の実相を深く理解するのであり、後者は無知によってくらまされて存在の実相を歪んで解釈しているのである。各自はそれぞれその自己の人生観に従ってその内部から自分自身の世界を築き上げているのであり、こうして築き上げられたそれぞれの人生の成果はその人それぞれの人生観の決定するところである。

光明主義者は、そのすぐれたる叡智と洞察によって、彼みずからの天国を創造しつつあるのであり、彼が自分自らの天国を人生につくり出すことによって、彼の周囲にある世界全体に向かってそこを天国にする貢献を成しつつあるのである。これに反して厭世主義の人生観を持つものは、自分自身の見解の狭さから、彼自らの住む世界に地獄を築き上げつつあるのであると同時に、彼自らの地獄を築き上げた程度に従って、全人類に対して同じような地獄を作り出すための助けを成しつつあるのである。

あなたにせよ、わたしにせよ、楽天的傾向か、悲観的傾向かどちらかの傾向をいっそう強く持っているものである。それだから私たちは時々刻々、自分自身の住む世界に、天国か地獄かを築き上げつつあるということができるのである。そしてそのどちらかを築き上げている程度に従って、爾余の世界すべてに、天国または地獄のどちらかを築きあげるための助けを為しつつあるということができるのである。

天国という言葉は調和ある世界を意味する。地獄という言葉は古代英語のHellという字から来たことばであって、「周囲に垣根をめぐらす」とか「分離する」とかいう意味を持っているのであり、"to be helled"というふうに使われた場合、それは「・・・から遮断せられる」という意味に使われたものであった。

さて、天国の意味するような調和ある世界が存在するならば、その世界は、世界と人間とが正しい関係においてある世界でなければならないのである。なぜなら人と事が正しい関係にあるということが「調和ある姿」であるからである。さらに言えば、もし遮断せられ、閉め出され、隔離されているような世界があるとするならば、そこに住む人々はなにものかから遮断せられ、閉め出され、隔離されているに違いないのである。それが"Hell"すなわち地獄相である。

『無限者との協調』　ラルフ・ウォルドー・トライン　１８９６年　谷口雅春訳

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