Я[大塩の乱 資料館]Я
2015.12.7

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「大塩の乱関係論文集」目次


「大塩中斎」
その4

磯村野風

『法華伝奇集』平楽寺書店 1931 所収

◇禁転載◇

大塩中斎(4)

管理人註
  

 中斎はこの落し文を各所に撒き散らし、天保八年四月十七日を以て義軍 を起し、東町奉行跡部山城守、西町奉行の堀甲斐守の両人を討取り、同時 に鴻池善右衛門、住友吉右衛門らの富豪の邸宅を片つ端から襲うて、貧民 を救はうと企てたのであつた。然るに同志の一人平山助四郎と云ふ与力が、 不図変心して、二月十八日の暮れ方、東町奉行跡部山城守の役宅へ訴へ出 でたので、茲に一切の計画は画餅となつて了つた。  其晩跡部山城守の役宅へ当直で泊つてゐたのは矢張中斎の同志、瀬田斎 之助と小泉延次郎と云ふ二人の与力であつた。             くはだて  『オイ、瀬田、どうやら計企が露顕したやうだぞ』  『ウム、どうも先刻から可笑しいと思つたゐた所だ』  『先んずれば人を制すだ、先方が手を出さん内、此方から一つ斬込んで、  跡部をやつて了はうではないか』  『よからう』  二人は立上つて身支度に取かゝつた、その時、  『ミシリ/\』  と廊下を忍び足で踏んで近づくものがある。  『来たぞ、油断するな』  『心得た』  二人は一刀を引ぬいて大上段に振かぶり、びたりと左右の襖に身をくつ つけて、息を殺してゐると、がらり襖を引開けて、  『瀬田、小泉、御用だツ』  と言つて飛込んで来たものがある。  『えいツ』  待構へゐた二人は、さつと斬り下した刀で、捕手の二人は血煙と共に左                  おもて 右に倒れた。二人は勢よく飛出すと、戸外はもう一面の提灯の火だ。  『己れ手向ひ致すな、斬り捨てゝも苦しうないぞ』  『何を猪口才!』  血気の小泉は、囲を蹴破つて。跡部の側へ近寄らうとしたが、多勢の為 めに遂に斬倒された様子、瀬田は兎に角この事を大塩に知らせなけけばな らないと思つたのて、一方の血路を開いて、ドン/\天満四軒長屋の方へ 駈け出した。  『せ、先生、た、大変でございます』  『大変?』  『大望が露顕いたしました』  『さうか……訴人は大方平山であらう』  と云ひ当てた中斎の眼力は非凡であつた。  『此上はいかゞ遊ばします』  『運を天に任せて、最初の思立ち通り遂行する迄の事でござるよ』  『然し人数が ? 』  『止むを得ぬ、集まる丈けでやつゝけよう、梅田氏、梅田氏』  『はツ』  『予ての用意を……』  『心得ました』  梅田源左衛門は、予て拵へて置いた貼抜筒に弾薬を込めて、庭前の敷石 の上に据ゑ、筒先を淀川向うの東町奉行の屋敷へ向けて置いて口火を差し      た ま こんだ。弾丸は轟然たる響と共に、天満の建国寺の庫裡ら落ちて炎々と燃 え上つた。




西町奉行は
堀伊賀守


平山助四郎
平山助次郎
が正しい、同心




瀬田斎之助
瀬田済之助

小泉延次郎
小泉淵次郎


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