三田村鳶魚校訂 『未刊随筆百種 第6』米山堂 1927 収録
◇禁転載◇
米価、 |
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一 かくて米の価はます\/貴くて、江戸市中鳥目百文に米三合をかゆるに至り、京師もおなじく、今宿直する浪花市中四合といへり、
されば江都には御救小屋所々に立て賎民とめくませらる故に、みな\/市中粮食にとて大根の葉迄も米に交、粥にして食ふ、大坂は長町といへるには乞食人も多く宿をしけるが、此程は日に増して乞食人多く、或は京師よりのがれ来てこゝもとに住もあり、玉造あたりのうら町に住む者にても、世渡りかねて乞食に成るも有り、されば市中物貰ひの人多く、町家は施しの人少くなるまゝに、あらたに乞食する者はなをさら生命をたもちかね、ちまたに餓死する者日々に一両人なき事なし、
京師宿直の五分の一と唱へる物の壱石に弐百目余ときけり、是は是其事にあづかる町人のあくまで利を得て、後の直段なりけるが故に、実は此上へ五十匁も増すべし、