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大塩の乱関係史料集目次

　　　　　　　　　　　　　　　　　伊勢外宮師職
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　安田図書口上
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　酉二十一歳

一　私儀、当二月十九日、異変之節、御組与力大塩格之助同居養父大塩平八郎に附添参候付、被召捕始末、御吟味御座候、

此段私儀、幼少文学を執心ニ而、相学候得共、国元には師と可頼ものも無之候付、三都之内江罷出、遊学可致と彼是勘弁等いたし居候折�ﾈ、前書平八郎儀は、同州之内足代権太夫懇意ニ而、是迄勢州江罷越、講釈等いたし候儀も有之候処、平八郎儀は、博識之上、行状も宜、当難得人物之由、頻而権太夫賞誉いたし候付、慕敷相成、平八郎方江入門いたし度存、山田御奉行所江は湯治いたし度趣相願、御聞済之上、権太夫世話を以、去申十月当表江罷越、平八郎門人に相成、滞塾之上、学問執行罷在候処、元来同人学風は、専心理之説を以門人共を教諭いたし、別而行状謹慎之儀、厳重に申付候得共、史類等博為相学候儀にも無之、其上平八郎儀は厳威を餝、容易に手元江罷出候儀も難出来、振合ニ而、殊同年十二月頃ハ、絶而講釈等も無之、右之次第ニ而は数年相学候とも、博覧之場には至間敷と、大に望を失ひ、此末々勘弁いたし居候処、平八郎儀、養子格之助江可嫁合積ニ而兼而同居に引取有之女を竊妾にいたし、既一子致出生候趣、於塾中専風説有之、右体之儀は俗人迚も致間敷、汚行ニ付、旁早々退塾致度候得共、平八郎儀は、疑念深性質ニ而、一旦致入門候得は、容易に退塾不承届趣、同門之者共及承居候間、軽率には難申出、折を見合、品能申繕、無事に退塾可致惟々工夫致し居候儀ニ而、当二月十九日早朝、格之助儀塾中江罷越、平八郎儀、同塾に罷在候玉造口御定番御組与力大井伝次兵衛殿伜大井正一郎に用向有之候由申聞、格之助同道、平八郎手元江参り、無程正一郎立帰、竊私江申聞候は、同塾に罷在候井伊掃部頭様御家中宇津木下総弟矩之丞儀、兼而平八郎存意に不応事共不少候間、討果候様被申聞、不得止事致承候儀ニ而、折節矩之丞儀、便所江参居候様子に有之候処、自然討洩候而は、正一郎身分に可拘間、私にも荷担致し、万一迯掛候ハゝ補呉候様申聞、案外之儀とは存候得共、及異議候ハゝ、私儀も可被打殺と怖敷存候、余無拠致同意候得共、素私儀、右体非道之儀に荷担可致所存、更に無之候付、塾外徘徊罷在候処、無程矩之丞儀、便所立出候処を、正一郎儀、平八郎差図之趣声掛候儘、矢庭に及殺害、直様同人手元江罷越候後、私儀も平八郎呼寄候付罷越候処、同人父子、并御組与力瀬田済之助は着込野袴を着し、白木綿ニ而鉢巻を〆、同御同心渡辺良左衛門、近藤梶五郎、庄司義左衛門、前書正一郎、并河州守口町幸右衛門、同州門真三番村郡次、摂州般若寺村忠兵衛、同村伝七、同村源右衛門等も着込或は帯刀致し、一同鑓長刀之類、又は銕炮等を携、外に名前不存百姓共多人数相集、四半等を押立、大筒四挺車に載有之、平八郎申聞候は、去秋以来米価高直ニ而、諸民及難渋候趣ニ付、今般民を吊候大義を存立、当表市中焼払、豪家之者共利倍を以貯置候金銀銭、又は諸家蔵屋敷に積置有之米を、窮民共江配当致し遣、　御城始、両御奉行所、御組屋敷江も致放火候積ニ而、則唯今打出候間、同志可致、若及違背候ハゝ、即座に可切殺旨申聞、不容易企とは存候へとも、無是非同意之趣申答候内、平八郎及差図、屋敷塀を壊、其所大筒押出、其節名前不存向屋敷朝岡助之丞殿宅江火矢を打込、夫中屋敷西町拾丁目辺舩場江押渡り、所々放火及乱妨候次第、後難怖敷相成候付、透を考可迯去と心掛候得共、抜身鑓長刀等之中に被取囲、間合無之、無拠淡路町、堺筋迄付添参候砌、御捕之御人数より銕炮被打掛、既先鋒之者被打殺候様子に相見、迚も難敵対候間、一先迯延候様平八郎申聞、迯出一味之者共一同敗走いたし候、混雑に私儀迯後候処、被召捕、御吟味相成、奉恐入候事、

右之通相違不申上候、猶御尋之儀は、追々有体可申上候、以上、
　　酉四月　　　　　　　　　　　　　　　　　図書