河村与一郎「警世矯俗大塩平八郎伝」30

Я［大塩の乱資料館］Я
2011.2.25

『警世矯俗大塩平八郎伝』
その３０
河村与一郎(貞山)

赤志忠雅堂 1888

◇禁転載◇

ｹﾞｳｽｲﾄｳｶﾝ　　　　　ｷｽｳ堯水湯旱ハ、時運ノ気数、聖世トイヘトモ、猶ホ之アリ、是レハ、ｶﾐ　　　シモヱンハン　ゲウバツ　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉｶﾞ上暴慢、下怨畔ノ澆末ニ於テハ、実ニ名状スベカラザル流害ヲ　　　　　　　　　　　ﾀﾒｼレザル、古今内外往々其例アリ、天保ノ末年ヨリ徳川政府ノ覇権　　　ﾕﾙ　　　　　　　ﾁﾝﾒﾝ　　　ﾐヽ　　　　　　　ﾒ一タヒ弛ミ、上下太平ニ沈湎シテ、耳ニ砲声ヲ聞カズ、目ニ剣槍　　　　　　ｸﾜﾝｴｲｷﾖｸﾃﾝ　　　　　　　　ｳﾗ　　　　　　　ﾂヲ見ズ、驕奢貫盈ノ極点ニ達シ、神怒リ、人ミ、連年凶荒相踵　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｼﾔｳグ、中ニモ、天保四年八月朔ノ風雨ニ、関東五穀熟セズ、米価翔ｷ貴、非常ニ踰ユ、而ルニ大坂ハ一升ノ価二百文ヲ限トス、是ハ先　　　　　　　　　　　　　　ｼﾊｳ　　　　　　　　ﾄｳｺｸ奉行矢部駿河守現在勘定奉行施方其宜ヲ得テ、来秋登穀マデノ　ﾄﾎﾞ食匱シキヲ告ザルニ由レバナリ、京師ノ如キハ、従来食ヲ大坂近江ニ仰キ、其運戴スル所、僅ニ川舟牛車ニ過ギズ、今年江州路、　ｷﾔｳｹﾝ　　　　　　　　　　ﾀヾ　　ｷｳﾊﾂ　　　　　ﾋヾ亦凶歉ニヨツテ送運忽チ絶ヘ、但大坂ノ給発ヲ仰ギ、惟日ニ運米二千石ヲ限リ、一人ノ糧二合ニ過ルヲ得ズ、東都ハ全国ノ首府ニ　　　　　　　　ｷﾐﾝシテ、戸口百万、飢民モ随テ多ケレドモ、郡国藩邸ノ所在ナレバ、　　　ﾕﾆｳｵﾎﾑ　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾑﾈ　ﾈｶﾞ諸道ノ輸入率ネ通常ノ年ニ減ゼズ、然ルニ駿河守執政ノ旨ヲ希ヒ、多数ノ穀粟ヲ迥漕シ、朝野以テ乏シカラザルヲ得タリ、尋デ七年　　　　　　　ﾜﾀ　　ﾘﾝﾗｳ　　　　　　　　　　　　ｶﾂｲ丙申春ヨリ夏ニ亘リ、霖潦諸国ニ及ビ、三伏ノ暑候モ葛衣ヲ用フ　　　　　　　ﾊﾝﾗﾝ　　　　　ﾋﾀ　　　　ｼｳｼﾌル稀ナリ、河水汎濫、平地水ニリ、道路舟楫ヲ仮ルニ至リシニ、　　　　　　　　　　　　　　　ｼﾕﾝ　　　ﾛｼﾔ本年六八ノ両月、畿甸以東、風雨旬ヲ連ネ、廬舎ヲ例シ、樹木ヲ　　　　　ｺｳｿｸ抜キ、行路梗塞シテ田稲流ス、是ニ依テ石米ノ価銀二百目以上　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　註ニ達シ故老ノ説、癸巳年、米一石ノ価銀百七十目、甲午年、八十目、丙申ノ年、二百目以上、山陽道、今年、綿一本二百五十目、麦一石百目、江戸ノ米価、金一両ニ三斗五升、奥羽地方、金壱歩ニ四升、丁酉年、畿甸、米一石三百目、小豆二百目、大豆百五十　　ﾊﾞﾝﾀﾝｶﾞﾍｳ目、播但、餓殍殊ニ甚シ、クヌギノ葉一升銀五文目ニ至レリト云　　　　　　　ｲｷ海内挙テ凍餓ノ域ニ陥ラントス、

註百八十か。

徳富猪一郎『近世日本国民史』その２２

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その３０
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