河村与一郎「警世矯俗大塩平八郎伝」45

Я［大塩の乱資料館］Я
2011.7.2

『警世矯俗大塩平八郎伝』
その４５
河村与一郎(貞山)

赤志忠雅堂 1888

◇禁転載◇

ｱｼﾀ晨に及ベハ、僕友蔵ニ之ヲ託シ、之行シテ故郷ニ帰ラシメシガ、ｵﾎﾂ　　　　　　　　　　　　　　　ﾐﾁﾌｻ大津ニ至テ、大坂ノ動乱ヲ聞キ、進退路塞ガリシ所、代官所ノ巡　　ｽｲｶ　　　　ﾊﾞｸ　　　　　　　　　　　　　　　ｿﾉﾖ按ニ誰何セラレ、縛ニ就テ、大坂ニ押送セラレタリ、厥夜、矩之　　　　　　　ｼ　ﾊﾅ　　　　　　　　　　　　ﾌｼﾞ允、会ニ列シ、次ヲ離レ、進ンデ曰、諸君、僕ノ不似ヲ以テセズ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｸﾁ告ルニ大事ヲ以テセリ、退テ之ヲ熟計スルニ、先生、口ニ孝敬ヲ　　　　　　　　　ﾆﾃｲﾒﾝﾒｲ唱ヘ、平生、師弟ニ耳提面命スル所ト、大ニ其趣ヲ異ニスルアルヲ覚フ、蓋シ先生ノ志ハ、大ニ可ナリ、其所行ニ於テハ、不可ナ　　　　　　　　　　　　　　　　ｷﾖｸﾜｲリト謂ハザルヲ得ズ、請フ、諸君、虚懐平心、之ヲ聴レンコトヲ、　　　　　　　　　　　ﾅﾗﾋﾞｵｺﾅ凡ソ上位ニ在ル者ハ、威恩並行ハレテ、以テ天下治マルヲ得ベシ、　　　　　　　　　　ﾅ若シ寛ニ過レバ、愚民狃レテ畏レス、法ヲ被リ、罪ヲ犯ス者、衆　　　　　　　　　　　ﾊﾝﾀﾞ多ナラバ、刑罸、是ヨリ煩多ナラン、而ルニ、官吏、法ヲ弄スル　ｸﾁ　ｼ　　　　　　　　　ﾁﾕｼﾞﾕヲ口ニ藉キ、玉石ヲ混レテ、誅鋤セントスルハ、竊ニ甘心セザル　　　　　　　　　　　ﾃﾝ　　　　　　　　ﾂｶｻ　　　　ｿｳｼﾞﾂ所、又賑恤ヲ行ナハザル点ニ至テハ、物各其司アリ、主者倉実ヲﾊｶ　　　　　ﾔﾌﾞｻｶ量リ、其出納ヲ吝ニスルトモ、大老閣老モ之ヲ強ル能ハズ、況ヤ城代奉行ニ於テヲヤ、而ルニ、之ヲ咎メ、其罪ヲ問ハントスルハ、不理ナラズヤ、昇平爰ニ二百五十年、数代ノ恩禄ニ飽クモ、猶ホ　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｺｳｶｳ　　　　　　　ﾀｷヾ足レリトセズ、事ヲ万一ニ図リ、天下ニ抗衡セントスルハ、薪ヲｲﾀﾞｲ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾏﾀｶ抱テ火ニ向フゴトク、一トシテ不敬ナラザルハナシ、又夫ノ富戸豪家ノ施財セザル如キ、之ヲ責ルハ、有司ニアリ、先生、徳高ク、　　　　　　　　　　　　　　ｶヽ望重キモ、今ハ隠逸ノ身、之ニ係ルヘキ勢地ナキヲ奈何セン、思　　　　　　　　　ｶﾝ　ｻ　　ﾀﾝ　ｲｶ　　　ｾｳｲヒ此ニ至ラズシテ、肝ヲ裂キ、胆ヲ怒ラシ、焼夷シテ、其怨ヲ報　　　　　　　　　　　　ｱﾋｿﾊゼントスルハ、言ト行ト、相副ザルニ非ズヤ、聞タガ如キハ、府下ノ戸口十万ニ下ラザルモ、富戸ハ、百分ノ一ニモ居ラズ、一ヲｺﾗ　　　　　　　　　　　ﾔ　　　　　　　　　　　ﾄヾｸ　ｶヽ懲サントシテ、火ヲ街巷ニ行ラバ、貧戸窮民併セテ其茶毒ニ罹ラ　　　　　　　　　ｲﾂﾞ　　　　　　　　　　　　　　　　ﾀﾝｹﾝン、救恤ノ意、其レ焉クニ在ル、先生ノ明ハ、日月ノ如キモ短見ｻｻｸ　ﾆﾊｶ　　　　　　　　　　　ｼﾞﾖｼﾔｳ左策、遽ニ此ニ至レル者ハ、想フニ如傷ノ熱心ト諸君ノ勧説ニ依　　　　　　　　　　　ﾊ　　　ﾀﾂ　　　　ﾒｸﾞレルナラン、願ハクハ、幡然、其轍ヲ正道ニ廻ラシ、一死以テ、其身ヲ潔ヨクシ、祀ヲ存シ、家ヲ伝ヘラレンコトヲ、弟子、死ヲ　　　　　　　　　　　ﾌﾙ　　　　　　　　　　ｳﾂ犯シテ諌メ奉ルト、涙ヲ揮ヒ、声ヲ励マシ、席ヲ撲テ諫争ス、衆、相視テ言フコトナシ、

幸田成友『大塩平八郎』その１２５

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『警世矯俗 大塩平八郎伝』 その４５ 河村与一郎(貞山)

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その４５
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