河村与一郎「警世矯俗大塩平八郎伝」53

Я［大塩の乱資料館］Я
2011.7.22

『警世矯俗大塩平八郎伝』
その５３
河村与一郎(貞山)

赤志忠雅堂 1888

◇禁転載◇

其余、目付中川半左衛門、犬塚太郎左衛門、城外ヲ巡警シ、舩手奉行本多大膳ハ、河口ヲ守リテ、往来ノ舟舩ヲ誰何シ、郡山侯　　　ｸﾗｶﾞﾘﾀﾌｹﾞﾄヾハ、馬ヲ暗峠ニ駐メ、先鋒、進デ大阪ニ入ル、諸将、各要害ノ所　　　　ｼﾝ　　　　　　　　　　　　　　　ｲﾁ　ｶﾊニ陣シ、森然トシテ、以テ待ツ、塩党、進デ市ノ側ニ出テ、天満　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾃﾂ橋ヲ渡ラントス、城代ノ兵、鉄砲組同心ト南岸ヲ固メ、橋板ヲ撤　　　　　　　　　　　　ｿ　　　　　　　　　　　ﾀﾍシタリ、仍テ、党兵ハ流ニ沿ヒ、天神橋ニ至ルニ、橋断テ、又渡ルヲ得ザルヲ以テ、更ニ西ニ転ジ、且進ミ、且呼デ、曰ク、老幼ハ速ニ逃レ、壮者ハ来テ、戦ヲ助ケヨト、難波橋ニ至レバ、兵、已ニ四五百ヲ加ヘタレバ、鋭気十倍シ、橋ヲ渡テ、北浜二丁目ニ出テ、鴻池三郎兵衛ノ家ヲ焼キ、次ニ一丁目ニ向テ、島屋市十郎　　　ｺﾎﾞノ家ヲ壊チ、次ニ進テ、今橋二丁目ナル鴻池善右衛門ノ家ニ至ル、　　ﾃｲﾌﾂ　　　　ﾄｳﾛ　　　　　　　　ｷ全家鼎沸シテ、其逃路ヲ失フ、平八郎、摩シテ曰、爾等、速ニ此　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｸﾗ　ﾄｻﾞヲ去リ、迷ヲ取リ、死ヲ求ムル勿レ、人々狼狽シ、猶ホ倉ヲ鎖シ、ｻﾞｲﾊｺ　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾌﾝﾄﾞ財ヲ搬バントスル者アルヲ見ルヨリ、平八郎、憤怒シ、大砲一発　　　　　　　　　ｻﾞﾝシテ、其人ヲ逐ヒ、餐ヲ此ニ伝ヘ、終テ庫蔵ヲ破リ、家屋ヲ焚テ、　　　　　ﾉｺ其一棟ヲモ遺サズ、尚ホ進テ、鴻池他二郎、鴻池庄兵衛、鴻池徳　　　　　ｺﾎﾞ兵衛ノ家ヲ毀チ、南行シテ、高麗橋ニ至リ、三井、岩城ノ呉服店、　　　　　　　　　　　　イヨ／＼嶋屋八郎右衛門ノ家ヲ破リ、愈南シテ、平野町ナル内田惣兵衛、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｵｸｳ平野屋彦兵衛、平野屋佐兵衛、米屋喜兵衛、炭屋彦五郎等ノ屋宇ｿｳﾘﾝ　ﾚﾝｾｳﾎｳｸﾜｲ　　　　　　ｷｸﾜｸ倉廩ヲ連焼崩壊シ、金銀米穀ヲ揮シテ、恣マヽニ貧民ニ取ラシ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｼﾕｸｼｲﾀﾂﾞﾗｺﾞﾄメントセシニ、人皆恐レテ近ヅカズ、平八郎ノ宿志、徒事トナレ　　　　　　　　　　　　ｸﾂｼリ、凡ソ府下ノ富家豪商、屈指ヲ以テ称セラルヽ者ハ、多ク高麗　　　　　　　ﾊﾝｺｳ　　　　　ｾｲｶ橋ノ南北数町ニ蟠亘シ、互ニ其勢価ヲ上下シタリシガ、平八郎、　　　　　　　　ｿｳﾀｳ　　ｸﾋ一タビ怒テ、之ヲ掃蕩シ、悔ナキニ至レルハ、他ナシ、曩ニ貸借　ｾｲｷ　ｼﾔｾﾞﾂノ請祈ヲ謝絶セシ怨ヲ、茲ニ報ゼルナリ、鴻池庄兵衛ノ家ニ、浮杜丹ノ香炉古ヲ珍蔵ス、皆海内無比ノ名物ト称セル者ナルガ此乱ニ灰燼トナル、衆人、特ニ之ヲ惜メリ、

「大塩事件勃発当時の「諸国要塞ノ警備」状況」
「大塩焼図」
「豪商等所在地」

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その５３
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