Я[大塩の乱 資料館]Я
2008.6.11

玄関へ
史料集目次


「大塩の乱新資料紹介」 その17

菊池真一

『甲南女子大学研究紀要 文学・文化編 第44号』
甲南女子大学図書・メディア委員会 2008.3 より転載

◇禁転載◇

          せいじ   ひとう       しの              なん およぶは何事ぞやわれ政事の非道を見るに忍びす役所をはじめ汝じ     のこ 等に及ひ残らずちうしてわざはひをたゝんと先年より事をはかりし   こ り                 へんしん に狐狸にひとしき助右衛門が変心によつて事あらはれ汝らが仕合せ   しごう        らんぼう               てう 我自業といふべし又市中乱妨いたせしはおごりに長じたる」(四ウ)                  はて やからをこらしめの為なりといわせも果ず宇治山いわくだまれ大篠   ほんきやくそくしん くわた           そにん    しゆい めいはく        いまさら 汝じ本逆賊心の企てなる事平井か訴人に其趣旨明白なり然るに今更 しやへん     おそ 邪弁を以て恐れ多くも上をあざけり下々の為なりとはあと方もなき そくげん         さ         じんり           いで 賊言なりよし又左ほと汝じに仁理あらばすみやかに役所に出て申」 (五オ)             あつぱれ しやうふ           さ 開らきいたすべしさある時は天晴大丈夫といひつべし左はなくして                ゐ     こと    さほとしんめい かゝる町家に身をかゞめしのび居る事何事そや左程身命がおしくば       あく            ば をわ 何故かゝる大悪をなすやとこと葉終らぬ中程より大篠いわくやをれ      きく                 とうり 宇治山よく聞べしたとへわれ彼所に出てすみやかに道理をとくとも こうよく 業欲」(五ウ) しやち               り              みゝ            ば ゑき 邪智の者どもなれは其利をきく事あたわず耳なきものにこと葉益な  かつ         や   ゐ        くしん       いのち        をくひやう し且またわれ此家に居る事汝ら愚心に引ては命をしくとも臆病とも         をく           いのち おもふならんわれ臆したるにあらず命ををしみてにあらず今一ツの                 ろけん           せ ひ のぞみあればなり然りといへとも露顕に及へば今は是非なし汝」 (六オ) うつて           ゆうよ 討手の役目なれは猶予におよはず此所へふんごんで見事にめしとる                 ゆうよ べしと有けれは宇治山がいわく某し猶予いたすにはあらず武門のな       ごん  もんとう                  しようじ さけを以て一言の問答に及ぶいかにもふんごんでめし取べし其障子                              なん ひらくべしと有ければ大篠いわく此方より障子ひらくいわれなし汝 じひら」(六ウ)            しやうしひとへ          しやうくはく くべし宇治山がいわく其障子一重内はなんじか城廓いかなるはかり              くんし 事あらんもはかりがたし某し君子にはあらねどもあやうきにちかよ     をく       しやうふ らず汝じ臆せざる大丈夫なればいさぎよく障子ひらくべしとありけ                      それか をく れは大篠いわくさすがの宇治山よくもいふたり某し臆せざる大丈夫 を見た」(七オ)      こ            しやうくはく             とる くは汝が乞ふにまかせわが城郭ひらくべしいざふんごんてめし取べ                           ばうせん  ざ しといふより早く其間の障子を左右へはたとひらひたり只忙然と座             てい            もつ し居たり宇治山こなたより此体を見てじつてい持て立上りろうかづ                       じやうい こへ たひにあなたとこなたよりばた/\と大音上て御上意と声かけこゑ もろ 諸共に」(七ウ)                         ひばち 其間に入よと見へしが大篠親子もいちはやく前なる火鉢へゑんしや                       うつかんで入にける其間に其身をどつかとうつ伏したりたちまちゑ       わた   ゑん     としようじやけ              せう んしやうはち渡りて焔しやう戸障子焼上り今はかのゑん硝しきりな            おとろ       あ     かへ           け りさしもの宇治山大ひに驚き其まゝ跡とへ引返し夫水もてよ消せよ と」(八オ)


 Copyright by Shinichi Kikuchi  菊池真一 reserved


「大塩の乱新資料紹介」目次/その16/その18

史料集目次
玄関へ