柴田勘兵衛様　幸便申上置　　　　　　　　　　大塩平八郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(慶カ)
其後ハ御不信申上候内、追日秋気相催御揃益御勇健被成御座奉□□候、
然ハ此間御稽古日之儀相伺候処、御叮嚀に貴報被下難有委細承知仕、
其後可罷出処、御老中御巡見并雨天勝に而、彼是今日迄御無信并欠席
仕候処、亦々来月兵庫表へ勤番に罷越、則今夕より出立仕候付、来月
中欠席仕候、右体已前御稽古日等迄相伺、被仰示被下候儀に有之候間、
欠席之儀前以御断申上候、尚帰坂之上伺上、万々御詫可申上候、且又
当六月勤番中、姫路御家中何某と申もの、宝蔵院之師範之由二而、西
宮勤番所詰之同心ともへ致教授候付、私にも入身いたし候様申勧メ、
勿論稽古之儀に付素槍を為収入身いたし、面白き稽古を一月中仕、右
之御咄等を参上御咄可申上と奉存候内、又々勤番に而得御咄を不申上、
遺恨不少候、尚其内参上可申上と存候、此段序旁御咄申上候、追々冷
気相募候間折角御自愛専一に奉存候、以上、
　　八月廿九日
尚々幸便にさし上且は多用之御中貴家にハ御免捨可被成下候、以上、

柴田勘兵衛は玉造組の与力にして佐分利流の槍術の師なり、
太郎氏は即ち勘兵衛の後裔なり、兵庫並に西宮勤番は
若輩なる天満組与力の勤むる所なれど、本紙を認めたる年
代は今明ならず、