Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.5.22

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「大塩の乱関係論文集」目次


「教談大塩後素」
その9
野口復堂(野口善四郎)

『通俗教談集 第一集』大倉書店 1912 所収

◇禁転載◇

 管理人註
   

は ゝ          わたくし 養母は如何にも恥かし気に復堂に向ひ「此老僧を、毎年頼むことに、昔し からなつて居るのは外でもありませぬ、吹田の神主で大塩の叔父で大塩の 旗上げが、反り忠のあつた為め、一日早くなつたにより、大塩と一処に乱 暴は致しませなんだが、連判の中に名があるので、捕り方に囲まれ、自分 の玄関で立ち腹を切つた、宮脇志摩に此老僧は書物を教はつた事もあるの                           ことさら で、度々宮脇に連れられて、大塩を見た事のある御方故、特更御回向を、 此老僧に頼むことになつて居るのです」と養母の説明により、老僧は一膝 進み出で「恐くは此近辺で大塩の顔を見覚へて居るものは、馬場村の土肥                 こうかう          きづゝ と、拙僧の二人で」と之れより真偽混淆の噂話、大塩の人格を傷けんとす る幕吏の捏造説、捨札以上の酷評を、下しましたから、励声一番「黙れ老 僧」を口開らきとして、大塩当時の天下の大勢、大塩叛乱の動機、大塩の                               すべ 人格、大塩の学風等滔々として陳べ聞かせました処、老僧は上座を退り 「誠に御主人に御気障りを申上げ、何分にも七十以上の老人、耄碌仕り居                     は ゝ  とりなし りまする、真平御免を願ひます」と漸やく養母の和解で其場を静めました、 後日此老僧が会ふ人毎に「大塩に因縁のある家へは、矢張り大塩見たよう       わい          ござ な人間が来る哩」と申し居つたさうで厶ります。復堂を大塩に比較しては、 大塩が実に気の毒で厶ります、之れより右老僧の物語り中にあつた、馬場                        こと 村の土肥に就いて、復堂が聞き込みました大塩談、特に同人が捕方となつ て、大塩捕縛の為め、大塩が居りもせぬ天王寺へ向ひまする御話等、申上 げたら面白いが、時間に限りが厶ります、先づ今席は之れで、

   
 


「教談大塩後素」目次/その8
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