Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.1.18

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「大塩の乱関係論文集」目次


「大塩平八郎」
その1

田中貢太郎(1880-1941)

『大塩平八郎と佐倉宗五郎』
(英傑伝叢書10)子供の日本社  1916 所収

◇禁転載◇

〔監修者のことば〕 管理人註
  

     学校と家庭へ  読物の及ぼす影響の大きなことは、最近幼少年の思想調査の結果を見て も明かである、欧米諸国では、夙に此点に注意して、相当知名の学者、教 育家、文学者で、幼少年の読物に筆を染める人が少くない、我が国でも、 最近幼少年の読物調査に関する運動が盛んになつて、優良な読物がボツボ ツ刊行されるやうになつたが、まだ/\欧米のそれに較べると、比較にな らないほど寂しいものである。  読書は精神の営養である。営養の良否が、身体の発育に大きな影響を与 へるやうに、読物の善し悪しが、幼少年の精神に至大の影響を与へること は、想像以上である。近時新聞紙上に現はれる、幼少年の犯罪の大部分が、 不良の読物の悪影響であるのを見ても、この問題が、一日も等閑に附すべ からざることを、発見するであらう。  近ごろ少年保護会や、少年裁判所などの特設を見たが、事は事前に予防 しなければならぬ。病にかゝつて薬をもるのは、労して効少きものである。 病にかゝらない前に、十分予防して、健康を保持するやうにしておくのが、 却つて賢明な手段ではあるまいか。世の為政者、教育家、乃至父兄が、こ の点に留意しないのは、寧ろ不思議である。  幼少年に、健全な読物を提供したいといふ考へは、ずつと以前から持つ てゐた。時たまたま、文行社主の懇請があり、この方面の大家の賛同を得 たので、こゝに本叢書の刊行を見た。  本叢書の誇とするところは、現在我が国に於ける、斯道の大家を網羅す ることが出来たといふことである。教育家あり、文学者あり、童謡童話の 大家あり、何れもこの方面にオーツォリテイをもつてゐる人ばかりである。 しかもそれ等が、連帯責任をもつて、叢書のすべてに、絶対の責任を負つ てゐるといふことは、この種刊行の物として、未だ嘗て見ない偉観であら うと思ふ。  不肖僭越ながら、多年教育の実際にたづさはつてゐたといふところから、 推されて監修の重責を負ふことゝなつた。この叢書が、幸に時弊をすくひ、 幼少年の精神的滋養となつて、小さき人々へ、好影響を与へることが出来 たら、執筆者一同の、この上もない仕合である。               監修者  友納友次郎識




















営養
栄養に同じ




































斯道
(しどう)
学問や技芸などで
この道、この分野
 


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