Я[大塩の乱 資料館]Я

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◇◇◇ 特別室 ◇◇◇

◆ 地方史研究協議会 大阪大会 B室 ◆

1999年10月16日〜18日


「地方史研究協議会」の第50回大会が、1999年10月16日〜18日、大阪府堺市で開催されます。 その間、随時レターニュースが発行されます。ここでは、大阪大会実行委員会の了承のもとに その一部を掲載します。

『地方史研究協議会 第50回(大阪)大会レター二ュース
−新しい地域史研究の方法を求めて−』

(編集発行) 地方史研究協議会第50回(大阪)大会実行委員会 (担当:藤田・古川)
(事務局)大阪電気通信大学 小田研究室 〒572-8530 寝屋川市初町18-8
TEL(0720)24-1131(呼) FAX(0720)24-0014
e-mail oda@isc.osakac.ac.jp

○協賛金の送り先○

 郵便振替 00930−8−130314  ロ座名:地方史研大阪大会実行委員会   こ面倒ですが、最寄りの郵便局からご送金ください。   若しくはお知り合いの実行委員に直接お渡し下さっても結構です。                     (会計事務担当・堀田暁生)


『地方史研究協議会 第50回(大阪)大会レター二ュース No9』 1999.6.15

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〈私の提言〉
夢のまた夢● 福山昭(大阪教育大学)

 大阪府下において、地方史誌の編纂事業は多くが高度経済成長期に開始され、すでに終了したり、終了の時期を迎えつつある。それらの編纂事業のなかには、文化的アクセサリー作りに過ぎないものも含まれている。その理由の一つは、文書館ないし資料館を設置した地方団体はごく少数にとどまり、編纂の過程で収集された歴史資料・行政資料などの文献資料の保存・利用体制について、多様化しつつある行政責務と極度の財政難のもとで顧慮されることのないのが一般的な状況であることに求められる。地方史誌のうち本文編・通史編は、編纂当時いかに的確な歴史認識のもとに執筆され、地域住民の期待に応えていようとも、いずれ内容が陳腐化する宿命を帯びている。これに対して、文献資料は、貴重な学術研究資料であるとともに、後世に伝えるべき文化遺産でもある。その保存・利用は恒久的な事業であるにもかかわらず、その体制作りの必要性が認識されないのは問題であるといわざるを得ない。

 周知のとおり、情報化と情報メディアの多様化が進展し、コンピュータと電気通信をその基礎構造とする脱工業社会が到来している。すでに岡山大学附属図書館では、岡山藩主池田家文庫藩政史料のマイクロ・フィルム化が行われ、ホームページを通してコレクションの公開・利用が図られている。また神戸大学附属図書館も、『震災文庫』のホームページを開設し、阪神・淡路大震災の直後から収集した震災関連の実にさまざまな資料に関して、検索・一覧を可能にしている。  これらは、学内LANと大学間通信網の結合による大規模大学図書館からのドキュメント・デリバリー・サービスが可能になった今、各附属図書館がアイデンティティを打ち出そうとした試みと判断されるが、今後各地に文書館・資料館が整備され、伝統的なセクショナリズムと沈滞的なイメージが払拭されて、情報化社会の進展と密着した資料情報流通システムヘの取り組みが開始されるのはいつのことであろうか。ネットワークの形成は、当然のことながら互恵の精神によって資料情報資源を共有する考え方が基調とされ、分散型のデータベースがその基礎をなす。そして、利用者にとっては仮想的な巨大文書館・資料館の利用が可能になるはずである。これが「夢のまた夢」に終わってはならないことを確信する次第である。

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●第7回準備研究会御案内●

今回から、準備研究会は大会での報告を充実させるため、報告予定者の報告を中心に実施していきます。 今回は、川口宏海・渡邊忠司・和田康由の三氏の報告です。それぞれの方の報告内容については、報告要旨をご覧いただけばお分かりになると思いますが、大阪と摂津の都市に視座を置き、その構造や支配のあり方を中世から近代にわたり、また、考古学的視点と文献の双方から検討していくことができるのではないかと考えています。多くの方々のご参加と積極的な意見を期待します。

 日時	7月4日(日) 午後2時より午後5時まで
 場所	大阪電気通信大学 図書館小ホール
		(京阪電鉄京都線寝屋川市駅下車)
・近代大阪の住宅と住宅地について−長屋建住宅の場合−
和田康由氏(大阪市立都島工業高校)

 近代における市街地形成のなかで、郊外や市内の住宅地開発は、その後の都市圏を形づける上において、重要な役割を果たしてきた。大阪における近代化の過程で、庶民住宅の流れを基軸に、一方の極として長屋建住宅、他方の極として一戸建住宅がある。長屋建住宅は、近代以前から建てられていたわが国の住宅形式と云える。大阪では、それらの多くが、労働者やサラリーマン層の借家として供給され、建築物の集団的秩序である都市計画制度や建築規制と深く関わり、生活改善・住宅改良の機運を反映して、他に類を見ない大阪独特の発展を遂げた。長屋建住宅の実態を把握する必要から、戦災を免れた地区の中で主に明治末期・大正期のスプロール地区、耕地整理地区や昭和初期の土地区画整理地区を対象に実地調査を実施し、平面・外観・道路と建物の関係などの分析と長屋建住宅や一戸建住宅を供給した士地会社などデペロッパーに着目し、住宅地開発のメカニズムの解明に努めた。

・近世畿内の地域編成と「支配所」−大坂三郷と周辺幕領農村を中心に−

渡邊 忠司氏(大阪市史料調査会)

 最近、近世畿内の支配および地域編成について、いくつかの論考が出されている。本報告も地域編成と支配について、大坂三郷と周辺農村を素材に大坂市中と新建家・町続き在方(在領)・在方という地域分割の目的を検討し、その一つの根拠として、近世幕領を分担統轄する「支配所」概念を提起してみたい。「支配所」とは、本来郡代や代官の管轄区域を指す用語であるが、これをもう少し一般化して遠国奉行も含む幕領全体の分担管轄概念として措定し、その概点から畿内代官や大坂町奉行などの地域編成や支配を考えてみたい。
 例えば大坂町奉行は三郷を中心に「懇意の百姓・町人」を選定し配置していたが、その分布は三郷内にほぼ集中している。これは大坂町奉行の直接の支配所が三郷であり、その領域を明確にすることが、例えば支配国や広域支配を考える素材となるのではないかと考えている。ほぼ以下の構成で報告する予定である。
 はじめに/1「支配所」概念について/2大坂三郷周辺農村の地域区分/3大坂町奉行所と懇意の百姓・町人/おわりに

・摂河泉における近世都市遺跡の様相−伊丹郷町遺跡を中心として−

川口 宏海氏(大手前栄養文化学院)

 近年調査研究が進む大坂城下町・堺環濠都市遺跡・旧枚方宿遺跡・伊丹郷町遺跡などを取り上げ、これらの近世都市遺跡の様相を通観し、巨視的に見て、発展過程にはどのような差異があるのか、あるいは共通点があるのか、を探る。伊丹郷町遺跡では、17世紀初頭頃までは掘立柱建物が中心で、17世紀後半には礎石建物が主流となる。18世紀前半には建物規模が拡大し、大きな転機が訪れる。18世紀後半から19世紀前半には、総瓦葺きの礎石建物が増え、景観の上で大きな変化が認められる。一方、堺環濠都市遺跡では、16世紀中頃には礎石建物や磚列建物(蔵)、井戸、土器甕の便所のセットが成立している。大坂城下町も16世紀未の成立当初より礎石建物や素掘井戸、木桶便槽のセットが見られる。このように、伊丹郷町遺跡とは、大きな相違がある。旧枚方宿遺跡では、18世紀中頃〜後半に建物規模が拡大し、18世紀末〜19世紀前半には屋根瓦の出土量が増加する。このような変化は、伊丹郷町遺跡に近く、「在郷町型」とも呼べる発展過程を示していると言えよう。

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○その他の記事
 ・地方史の文箱「古代の和歌山と大阪」和歌山県立博物館・寺西貞弘
 ・「難波雀・浪花袖鑑」出版案内
 ・いずみさの歴史セミナー案内
 ・実行委員会・事務局の活動日誌
  ほか


『地方史研究協議会 第50回(大阪)大会レター二ュース No8』 1999.5.20


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地域に根ざした地域史研究を●       服部 敬

 地方史研究協議会第50回大会に向けて、各地の地域史研究者・団体と研究交流を 深めながら準備を進めてきた。研究会を開くにあたっては、その地の博物館・史料館・ 自治体史編纂室などのお世話になることが多く、あらためて、それらの機関が地域史 研究に果たしている役割の大きさを痛感させられた。

 10年ほど前、ジンデンフィンゲンという、南ドイツの小都市を訪れたことがある。 13世紀に修道院を中心に形成された人口3000人の古い小さな町であったが、近 年ベンツの工場が進出して、急速に人口4万人の都市に発展した。しかし、中心部の 古い町はそのまま残され、人々が生活している。文書館には、古い民家の図面も保存 されており、修築に際して、利用されているそうである。16世紀に建てられた木造 の旧庁舎も、郷土博物館に転用され、郷土教育に活用されている。新庁舎の地下全体 が文書館になっており、博物館とも連携して活躍している。小さい町なので、古い文 書は多くないが、市の公文書はもちろん、パンフレットやチラシなど市が作成したす べての文書、選挙ポスター、新聞の折り込み広告、幼稚園の記念写真から、町の落書 きの写真にいたるまで、町中のありとあらゆる資料がここに集まってくるようになっ ている。専任の文書士が8人もおり、半数は学術的文書士( Wissenschaftliche Archivar)と呼ばれる高度の専門家で、博士号を取得している者が多い。スタッフの 豊富さは他の文書館も同様で、ここだけに限ったものではない。

ドイツの文書館は起源が古く、史料館との区別がない。自治体史の編纂室もなく、 日本のように主として大学に所属する研究者に編纂が委嘱されることもない。町の歴 史の研究は文書士によって行われ、その著作は研究業績として評価されているようで ある。このようなドイツの文書館は、地域史研究・文化財保護・史料保存のあり方に 大きな示唆を与えてくれる。「新しい地域史研究の方法」は地域に根ざした地域史研 究でなければならない。

今回お世話になった諸機関は、人数も少なく、嘱託やアルバイトの人もあって、専 門職としての環境が整っているとはいいがたい。しかし、お目にかかった人たちは、 いずれも意欲的で、地域について優れた見識を持ち、さらにドイツではあまり見られ ない、地元の地域史関係の団体の育成・発展に尽力されている人も多い。準備研究会 に直接関与した機関団体はもちろん、各地の地域史研究機関・団体の研究と運動の成 果を反映させることが、50回大会の大きな課題であるといえる。さらにこれを機に その成果が継続的に地域史研究に反映するような体制を整備する必要もあるだろう。 それは、50回大会の課題であるとともに、今後の地方史研究協議会の課題であると いえるかもしれない。

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今後の準備研究会について

 摂河泉各地の研究者・研究団体等と交流を重ねながら実施してまいりました準備研 究会は、前回の大阪狭山市で6回目を数えることになりました。この間多くの方々の ご協力によって予期以上の成果をあげ、大会の成功に大きな力となるものと心より喜 んでいます。

 ただ、大会まで残すところ4ヶ月余りとなった現在、実行委員会としては大会での 報告そのものの充実のために今後は力を注がねばならないのではないかとも考えてい ます。

 実行委員会では、今後1ヶ月に1度くらいの割で、大会報告予定者の方々による準 備研究会を、回数表示は今までのをつづけながら開催していく予定にしています。現 在の予定を申し上げますと、

第7回準備研究会  6月下旬  報告者3人
   第8回   〃       7月 〃      〃
   第9回   〃       8月 〃      〃
   プレ大会          9月 〃    全員
となっております。

 詳細な日程・報告者氏名・論題などについては、順次お知らせしてまいります。  各地での準備研究会開催にご協力いただいた方と、ご参加いただいた方々には、今 後3回にわたって開く予定の準備研究会およびプレ大会に引きつづきご参加いただき、 相互の地域史認識をより深めていきたいと希望しております。何とぞご協力たまわり ますようお願い申し上げます。
(事務局長 小田康徳)

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○その他の記事
 ・地方史の文箱「大坂の馬借」近畿大学・胡桃沢勘司
 ・第6回準備研究会(大阪狭山)参加記  埼玉県立文書館・白井哲哉
 ・宿泊のご案内
 ・実行委員会・事務局の活動日誌
  ほか


『地方史研究協議会 第50回(大阪)大会レター二ュース No7』 1999.4.10

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く私の提言>
大阪の歴史学研究の過去とこれから● 原田敬一(佛教大学)

「提言」などという大上段に振りかぶるような言語は持ち合わせがないので、実行 委員会の議論を聞きながら考えていたことを吐露することで責めを塞ぎたい。

地方史研究協議会という伝統ある学会が、1999年に大阪で大会を開くという。 大阪の知的環境は、近代史研究においてはどのようなものだろうか。私は、三つの特 色があると常々思っている。

第一は、府市町村史の分厚さである。大阪市史を長男とし、堺市史を次男と位置づ けることができようか。三男以下は、差し障りがありそうなので。読者のご判断にお 任せするが。またこの長男は、ウルトラマンみたいに、「明治大正」や「昭和」、「続昭和」などの変種ないし、新編という発展種を持っていることでも有名である。 兄思いの三男としては、発展種の育成が課題になり、進行しているところも増えてき た。これらの分厚い歴史は、史料編纂の上でも大きな責献を手堅くもたらしている。

第二は、財界史や企業史の分野でも、専門研究者による着実な蓄積がある。経営者 の伝記や著作集でも、学界に寄与しているものは多い。

第三は、民衆史の視点による研究でも、大阪は戦後歴史学をリードしてきた。社会 運動史に始まり、公害、空襲、自由民権運動史など広く成果があげられた。1990 年に近代都市史研究会を立ち上げた時、東京と大阪の二つを拠点にしようと、あっさ り決まったのは、この3つの特色が背景にあったからだと、今も考えている。これら の蓄積を前提にして初めて、都市の研究が新しい分野として現れ、若い大学院生に魅 カあるものとなったのだろう。

都市の研究は、社会史の視点、人々の体温が伝わるような襞に分け入るような史科 探索が必要なのではないか。衛生や治安、建築土木や鉄道など、従来も一定深められ てきたが、新しく間題設定が可能なテーマは山積している。また軍隊と地域というテ ーマの解明に成功している地域史はあまり多くない。大阪砲兵工廠の研究は進んだが、 それと大阪工業の関係は未解明の部分が多いのではないだろうか。歴史研究の主流は 政治史だよ、などと学生院生達にけしかけながら、自分は依然として侠客や兵食、病 気など社会史的なことにしか興味がわかないというのは、怠慢だろうと思いつつ、一 応擱筆。

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第6回準備研究会ご案内
 身近な「物」から見る歴史 −大阪狭山市の歴史をさぐる− ●

今回(第6回)の準備研究会は、南河内の大阪狭山市でおこないます。狭山は行基 の治水事業で知られる狭山池や『玉葉』などに見られる「狭山庄」、戦国大名の雄北 条氏の陣屋があったことでも有名です。また古くから堺と高野山を結ぶ西高野街道の 要衝地であり、高野山や大峰山に向かう旅人も彼の地で汗をぬぐったことでしょう。 近代から現代にかけて、南海高野線の開通やそれにともなう狭山遊園や狭山二ュータ ウンの建設などがあげられます。このように狭山は大阪の歴史を語る上で重要な位置 を占めてきました。

近年市制が施行され「大阪狭山市」が発足したのをきっかけに、『大阪狭山市史』 の編纂活動も進められています。今回は狭山池の最新の発掘成果や『大阪狭山市史』 の編纂活動を通じて、新しい狭山史を浮き彫りにしていきます。

狭山といえぱ末永雅雄先生という偉大な研究者を輩出した地です。この度の研究会 では考古学者であり、郷土をこよなく愛した先生の研究姿勢に思いをいたし、あえて 文献研究の報告ではなく、わたしたちの「身近な『物』」から歴史を考えることを テーマに掲げてみました。みなさん奮ってご参加下さい。

 日  時:1999年5月1日(土)

(A)見学会
  集  合:午後1:00(厳守)、
          大阪狭山市立郷土資料館
              南海高野線「金剛駅」下車(急行停車)
              南海バス狭山二ュータウン方面行き「西小学校前」下車すぐ
          郷土貴料館常設展示・観音院など

(B)研究会
  集合:午後2:00、  
        大阪狭山市立公民館多目的室(資料館のとなり)
   
  ・植田隆司氏(大阪府土木部ダム砂防課 狭山池ダム資料館開設準備担当)
     「狭山池を掘る」
        発掘調査によって狭山池の築造時期は7世紀前半と判明し、古代から
        近世にいたるまでの改修の歴史も明らかなものとなった。今回は、調
        査成果をもとに各時代の狭山池の姿を復元する。

   ・田中智彦氏(岐阜聖徳学園教諭)「高野街道沿いの石造物」
        市内を通過する高野街道沿いの石造物を調査・検討することから、地
        域間の結びつき、通行者などについて考えてみたい。

   ・田中久夫氏(神戸女子大学教授)「南河内の民俗−五月の節供を巡って」
        端午の節供の朝露が身体によいといって、朝露を受けたどくだみを陰
        干しにして、薬用に利用する習償が見られる。ここの所を報告したい。

   司会:服部敬(花園大学教授)

  主催:地方史研究協護会第50回(大阪)大会実行委員会・同運営委貝会・
        大阪狭山市教育委員会

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○その他の記事
・地方史の文箱「狭山池と行基」花園高校講師・藤田琢司
・研究会まめ知識「大阪狭山市のシンボル「狭山池」の歴史」 大阪狭山市教育委員会市史編さん担当・吉井克信
・第4回準備研究会(尼崎)参加記 八潮市立資料館・久慈千里
・第4回準備研究会(尼崎)参加記 市史を読む会・青手木正
・第5回準備研究会(堺)参加記 渋沢史料館・井上潤
・実行委員会・事務局の活動日誌
ほか



『地方史研究協議会 第50回大阪大会レター二ュース No6』 1999.3.4


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地域史と生涯学習●    鶴崎裕雄(帝塚山学院大学)

 昨年12月のこと、今年10月に地方史研究協議会の第50回全国大会が行われる 堺市で、生涯学習シンポジウムが開催された。これは画期的なシンポジウムで、堺市 と和泉市に所在する大学・短期大学の7大学が一堂に会して、地域の学習二ーズに応 える大学の役割を考えるといったパネルディスカッションであった。パネラーの一人 として参加した私は、1965年のユネスコ成人教育促進国際委員会におけるラング ランの生涯教育の必要性の提案・1981年の日本の中央教育審議会の生涯教育につ いての答申など、主に生涯学習の歴史を話した。今や地方自治体もこの1981年の 答申に従って生涯学習を推進している。用語も戦前の通俗教育という言葉から成人教 育となり、社会教育となり、生涯教育となり、今では学ぶ者が自ら積極的に取り組も うとする生涯学習へと変遷している。

 私はよく、市町村の教育委員会や公民館から講演を依頼される。依頼される内容は 地域の歴史や文学に関するものが多い。一方で公民館の運営審議会委員を務めている。 年間計画の姐上には地域史に関するものが圧倒的に多い。私は、生涯学習という視点 で、環境問題とか異文化交流、ボランティア活動、高齢化社会といったテーマの講演 や講座を勧めるのだが、今のところ、住民のアンケートなどを見ると、歴史や文化に 関する希望が多く、公民館も参加者の数が多いことを良しとするのは当然である。そ のため年間2コースの市民大学講座などの講演会では、昨年の1コースは外交史に関 するもの、2コースは現代の異文化交流に関するもの、今年の1コースは情報と生活 に関するもの、2コースは地域文化史に関するものを計画し、住民の要求に応え、一 方、生涯学習に役立つであろうテーマを準備している。前述の堺でのシンポジウムの 後、参加した大学・短期大学が共同して、堺市民のための公開講座を開催することに なった。

講座の内容として、1は堺を中心とした和泉国の歴史と文学に関するもの、2は環 境と健康に関するもの、3は教育と子育てに関するもの、4は国際交流に関するもの が考えられている。このうち、堺を中心とした和泉国の歴史と文学では、鳳神社とヤ マトタケル・百舌鳥古墳群と仁徳天皇・家原寺と行基菩薩・和泉国と和泉式部・熊野 街道と小栗判官・日根荘と九条政基・堺衆の文芸と牡丹花肖柏・南宗寺と千利休・『日本永代蔵』の堺町人・タ雲開と木地屋庄右衛門・大和川と中甚兵衛・信田狐と『芦屋道満大内鑑』・堺事件と土佐藩土・チベット仏教と河口慧海・近代短歌と与謝野晶子・泉州タオル産業の興亡・堺臨海工業地と現代産業…といったテーマがあげら れた。堺の住民である聴衆には、百舌鳥古墳群、千利休、与謝野晶子といったところ に関心が集まると想像される。

生涯字習は、従来のような定年退職後の時間の余裕のある人たちだけでなく、今、 第一線て活躍する人も対象とする時代になっている。講演会や市民講座の出席者には 年輩者、高齢者が多く、地域の歴史や文化に対する関心が高いのが現実である。われ われ、地域史研究にたずさわる者が、これからの生涯学習のために何ができるか、何 をなすべきか、今回の「巨大都市大阪と摂河泉 −新しい地域史研究の方法を求めて−」 の大会を機会に考えてみたい。

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第5回準備研究会ご案内
堺 −歴史像の再生にむけて−

今回は大会の会場である堺市で開催されます。

堺は大仙古墳(伝仁徳天皇陵)に知られる古墳時代から始まって、「黄金の時代」 と呼ぱれる中世を経て、現代に至るまで日本の歴史の中で大きな役割を演じてきまし た。

しかし従来の通史的なイメージがあまりに強いためか、考古学や文献史学からの新 たな発見があるにもかかわらず、なかなか新しい「堺史像」にはつながってきません。

 そこで今回の準備研究会では、メインテーマに「堺−歴史像の再生にむけて−」を 掲げ、考古学の新たな成果や地元の研究者の新しい発見の報告、それらに基づいた 「新しい中世堺像」の模索の意義と課題、大阪における堺の役割や大阪と堺の関係、 さらに従来あまり顧みられてこなかった「近世・近代」の「堺」をどのように考える か、「新しい堺の歴史像」は博物館の展示などを通じてどのように市民に提示できる か、などについて考えてみたいと思います。またこれらの問題は最近いわれる「堺学」 というものの再検討にもつながってくると思います。

内容は下記のとおりですのでみなさんふるってご参加下さい。

日時:1999年3月21日(日)
 場所:堺市博物館
       JR阪和線「百舌鳥」駅下車、西へ徒歩6分
       南海高野線「堺東」駅前3番乗場から南海バス堺市博物館前下車徒歩4分

(A)見学会  堺市博物館常設展示見学
    集合:午前10:30、博物館正面玄関
    (但し、入館に際しては年齢にかかわらず入館料100円をご準備ください。)

(B)研究会  堺市博物館会護室
 1:00〜4:30

   ・佐久間貴士氏(大阪府文化財調査事務所)「考古学から見た中・近世の堺」
     三方向の町なみをもった中世都市堺から、整然とした近世都市堺への変遷
        を明らかにする。

  ・小西瑞恵氏(大阪樟蔭女子大学)「中世堺史研究の課題」
      中世都市堺についての研究史は、戦前の堺市史に始まり、現在まで長く、
        関連する論文も数多い。その動向は、中世都市研究の展開と、密接に関連
        している。研究の現状をまとめ、今後の課題を考えたい。

  ・中野亀美子氏(堺古文書研究会主宰)「堺における新田開発の史実から見え
      てくるもの(堺古文書研究会の活動を通して)」
     泉州北部を中心に近世新田開発の関係古文書19家92通を堺古文書研究
        会々友60名によって翻刻し歴史資料として発行した。近世を初期・中期・
        後期に分け、この作業を通して、各時期の特色を把握することができた。
        またこれらの新田開発に汗を流した農民の苦闘を知り、まさしく「土を生
        む群像」を目にする思いである。この翻刻を会友全員参加で成し遂げ、そ
        れぞれに解説を添えることが出来たことと、本会の16年に及ぶ足跡も少
        し付け加えたい。

  ・吉田豊氏(堺市博物館学芸第2係長)「堺のまちと海辺 −都市の拡大−」
     江戸時代には湊新地が、近代には大浜リゾートが、堺のまちの海岸部につ
        くられた。両者の形成過程を、大坂(大阪)の事例などと比較しながら考
        えたい。

  司会:古川武志(大阪市史料調査会)

 追記:研究会終了後、懇親会を予定しております。こちらもふるってご参加下さい。
  5:00〜、堺市博物館前レストラン「GORYO」会費:5000円

  主催:地方史研究協護会第50回(大阪)大会実行委員会・同運営委貝会・
        堺古文書研究会・住吉古文書サークル

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実行委員会一覧

 第1号でご紹介しましたが、その後人数が増えていますので、再度お知らせします。

北崎豊二 大阪経済大学  実行委員長  杉本弘幸 佛教大学大学院生  事務局 小田康徳 大阪電気通信大学 事務局長  塚口義信 堺女子短期大学 乾 宏巳 大阪教育大学         辻川 敦 尼崎市立地域研究史料館 今井修平 神戸女子大学         鶴崎裕雄 帝塚山学院大学 尾崎安啓 寝屋川市史編纂室  事務局  服部 敬 花園大学 河合賢二 大阪高校           原田敬一 佛教大学 北泊謙太郎 大阪大学大学院生  事務局  福島雅蔵 花園大学 小谷利明 八尾歴史民俗資料館 事務局  福山 昭 大阪教育大学 小山靖憲 帝塚山大学          藤田 実 大阪市史編纂所   事務局 佐久間貴士 大阪府教育委員会  事務局  船越幹央 大阪市立博物館   事務局 重岡伸泰 寝屋川市史編纂室  事務局  古川武志 大阪市史料調査会  事務局 芝村篤樹 桃山学院大学         堀田暁生 大阪市史編纂所  事務局会計 白石玲子 神戸市立看護大学

 以上のほか,次の方々が事務局を手伝っています。

大久保雅央(寝屋川市史編纂室)、狩野直敏(大阪市史料調査会)、木原弘美(同)、 藤田琢司(花園高校)、松本貴裕(佛教大学学生)

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○その他の記事
・研究会まめ知識「「堺の歴史」と「堺市の歴史」」大阪市史料調査会・古川武志
・実行委員会・事務局の活動日誌
・宿泊のご案内
ほか


地方史研究協議会大阪大会 ◆A室/C室

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