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◇◇◇ 特別室 ◇◇◇

◆ 地方史研究協議会 大阪大会 C室 ◆

1999年10月16日〜18日


「地方史研究協議会」の第50回大会が、1999年10月16日〜18日、大阪府堺市で開催されます。 その間、随時レターニュースが発行されます。ここでは、大阪大会実行委員会の了承のもとに その一部を掲載します。

『地方史研究協議会 第50回(大阪)大会レター二ュース
−新しい地域史研究の方法を求めて−』

(編集発行) 地方史研究協議会第50回(大阪)大会実行委員会 (担当:古川・杉本)
(事務局)大阪電気通信大学 小田研究室 〒572-8530 寝屋川市初町18-8
TEL(0720)24-1131(呼) FAX(0720)24-0014
e-mail oda@isc.osakac.ac.jp

○協賛金の送り先○

 郵便振替 00930−8−130314  ロ座名:地方史研大阪大会実行委員会   こ面倒ですが、最寄りの郵便局からご送金ください。   若しくはお知り合いの実行委員に直接お渡し下さっても結構です。                     (会計事務担当・堀田暁生)


『地方史研究協議会 第50回大阪大会レター二ュース No5』 1999.2.4

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大会テーマが変わります
 ●巨大都市大阪と摂河泉 −新しい地域史研究の方法を求めて− ●

本年1月16日大阪市内で開かれた実行委員会で大会テーマについて再検討が行わ れ、全員一致で表記のように変更することとなりました。従来は、「新しい地域史研 究の方法を求めて」をテーマとすることが確認されていました。

テーマ再検討のきっかけは、大阪地域で開くという会場地の地域性を出していくべ きだという指摘と、「新しい」という言葉の内容をもっと具体的に規定できないかと いう指摘でした。

摂河泉地域は、古代難波宮以来、中世の寺内町や堺に代表される「自由都市」、近 世の城下町・在郷町それに大坂三郷、あるいは近代の商工業都市大阪やその衛星都市 など多くの個性的な都市を生み出し、都市と農漁村、あるいは都市と都市との間で様々 な関係をつくりだしてきました。そこには相互の競争・対立もあり、支配・従属の関 係もあります。また、こうした中で近世には積極的な商品作物の栽培や農村工業の早 くからの発展もあり、畿内先進地論の基盤ともなってきました。これらはいずれも摂 河泉地域の大きな歴史的特徴と言っていいでしょう。

一方、大阪地域の歴史を理解する上で現在巨大な存在となっている大都市「大阪」 を考慮することは欠かすことのできない要素です。近世初頭のころその原型である 「大坂」が姿を現わすわけですが、ここから出発する巨大都市が摂河泉地域の歴史に 有する意味は計り知れないものがあるのではないでしょうか。巨大都市大阪およびそ れを取り巻く摂河泉地域を全体としてどう把握すれぱよいのか、地域史研究としてこ れを考える方法を鍛えていく必要があるのではなかろうかと考えたわけです。

ところで、今回の大会は堺市で開催します。堺は中世大いに勢力を伸ばし、見るべ き文化も生みだした都市ですが、大坂の成長とともに微妙な位置を占めることとなり ます。しかし、決して第二大阪になったわけではなく、独自の位置と文化をつくりつ づけてきました。この意味で、堺を知ることは重要ですし、堺からは大阪にいては見 えない大阪も見えるのかもしれません。また、堺はそれこそ摂津・河内・和泉三国の 接するところに位置することからこの三国を見渡す位置をも占めています。今回の大 会テーマは、会場を堺市に設定したことによってますます意味のあるものになると考 えています。

一方、これらの歴史的な状況は摂河泉地域に住む民衆、あるいは住むこととなった 民衆にどんな意味をもっていたのでしょうか。国家と民衆という視点のみならず、都 市と民衆という視点の開拓も重要になってくるのではないでしょうか。

「巨大都市大阪と摂河泉 −新しい地域史研究の方法を求めて−」というテーマは、 以上のような問題の解明を求めていると考えます。多くの方々の真剣な研鑚によって 本大会が実り豊かなものになるよう期待するものです。

(大会実行委員会事務局長 小田康徳)

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第4回準備研究会ご案内
西摂地域近世史研究の課題

 今回は尼崎市立地域研究史料館のご協力を得て、尼崎地区で行います。  近世の摂津尼崎研究はおおいに進歩しています。尼崎藩の存在意義が再認識され、 従来の広域支配論のあり方に一石を投じています。また、在郷町の実態調査とともに、 摂津地域の経済活動がさらに深く理解されるようになっています。

午前中の見学会では、尼崎城と城下町の景観を体験します。午後の研究会では、長 年にわたりこの地域の近世史研究に取り組んでこられた4氏に報告をしていただきま す。近世摂津地域の支配構造と地域研究の動向について検討するとともに、史料調査 の課題と方法についても検討したいと考えています。参加に当たっては下記の参考文 献をあらかじめ読んでこられることが必要かと存じます。

日  時 1999年2月28日
場  所  桜井神社
             阪神「尼崎」下車徒歩5分

(A)尼崎市内案内  午前10:00〜  桜井神社集合
   城内小学校・中学校−開明小学校(機銃掃射弾痕)−寺町−本興寺、
   案内と説明:青手木正氏・下中俊明氏・織田正男氏・松藤政治氏

(B)研究会午後2:00〜
   ・岩城卓二氏(大阪教育大学助教授・尼崎市立地域研究史料館専門委員)
     「大坂と尼崎藩」
        西摂の近世史を進める上で、尼崎藩の位置付けは不可欠である。報告では、
        幕府の畿内・近国支配における尼崎藩の役割について、幕府直轄都市大坂と
        の関係を中心に考えたい。
      参考論文 
       「幕府畿内近国支配における譜代大名の役割−摂津国尼崎藩と和泉国岸和田
        藩の役割−」(大阪教育大学『歴史研究』35、1998年)

  ・大国正美氏(神戸深江生活文化史料館副館長)
     「近世大坂と兵庫津の流通と統制」
       大坂とその周辺地域の特色として、非城下町型都市である在郷町の多さがあ
        る。兵庫・尼崎・大坂を事例にした都市間紛争、個別領主の政策論を通じて、
        広域支配論を考える。
    参考論文
       中部よし子「近世におげる都市間の流通の変化」(中部よし子編『大坂と周
          辺諸都市の研究』清文堂、1994年)
        大国正美「西摂海上積み荷争論と尼崎藩大坂留守居」(尼崎市立地域研究史
          料館『地域史研究』27巻3号)
        同「近世前期の尼崎藩浦条目と幕府法」(同『地域史研究』22巻1号)
  
   ・石川道子氏(伊丹市立博物館調査員)
     「関東譜代大名の上方飛地(武蔵国忍藩阿部氏領を例として)」
      武蔵国忍藩阿部氏領については、昭和40年代以降次々と発刊された近隣の
        自治体史でも取上げられているが、各市町村域にかかわる部分的かつ紹介的
        な記述であり、これは他の飛地についても同じである。近世の西摂地方をみ
        るには、関東大名の飛地の存在、他領とのかかわりなどが検討されてよいの
        ではないか。
    参考論文
       「関東譜代大名の上方領」(尼埼市立地域研究史料館『地域史研究』27巻2号)
     「武蔵国忍藩の飛地領陣屋」(伊丹市立博物館『地域研究いたみ』27号)

   ・奥村弘氏(神戸大学文学部助教授・史料ネット代表幹事)
      テーマ未定
        史料ネットの活動をふまえて、史料保存・地域史研究のあり方などについて、
        ご報告いただきます。

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○その他の記事
・【地方史の文箱】<5> 「「大坂」をめぐる誤解」藤田実
・研究会まめ知識「摂津国尼崎」尼埼市立地域研究史料館・辻川敦
・第3回準備研究会(天満宮)参加記 西田かほる
・実行委員会・事務局の活動日誌
ほか



『地方史研究協議会 第50回大阪大会レター二ュース No4』 1999.1.5

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<私の提言>
大阪大会まで289日!     地方史研究協議会 常任委員長 佐藤孝之

 新年明けましておめでとうございます。

深刻な不況をはじめ“めでたい”とばかりいっておれない昨今の情勢ですが、とり あえず新春のお慶びを申し上げます。明けて、いよいよ地方史研究協議会第50回 (大阪)大会の年を迎えました。すでに、一年余にわたり大会実行委員会と準備研究 会(現在運営委員会)によって準備が進められてきているわけですが、大会テーマ・ 趣意書もほぼ目処がたち、今後秋の大会本番に向けて、さらに本格的な準備活動が行 われてゆくことになります。

 今回の大阪大会は、地方史研究協議会にとっては、第50回という記念すべき節目 の大会ですが、振り返れぱ、本会が大阪で大会を開催するのは2度目になります。1 度目は、1973年の第24回大会で共通論題を「地域概念の変遷と文化財保存」と 銘打ち、豊富な研究蓄積を有する大阪とその周辺(畿内)を中心として、「地域」の 範囲と構造を解明しようとするものでした(『地方史研究』第124号、「第二十三 回大会を迎えるにあたって」)。それから25年余の歳月が流れましたが、ここに再 び大阪を舞台に、大会が開かれることの意義は大きいものと思います。

 この間本会では、各地で大会を開催し、それぞれの地域のもつ地域性や地域像とそ の変遷、地域間交流のあり方などの解明に取り組むとともに、地方史・地域史の方法・ 視点をめぐるテーマも取り上げられてきました。そうした成果を反映させつつ、また 地元大阪における地方史・地域史の研究や運動の蓄積を吸収しつつ、新たな地域像の 構築を目指したい、と大会準備に携わる者のひとりとして、意を新たにしている次第 です。

 さて、お気付きのように、今回大阪大会の実行委員会では、これまでにないふたつ のユニークな取り組みが試みられております。ひとつは、摂・河・泉各地の地元の研 究団体や研究者との交流を目的とした準備研究会の開催であり、すでに2回実施され ています。もうひとつは協賛会員の制度で、協賛金の拠出者にはこの『レター二ュー ス』が頒布されるというものです。どちらも、大会準備の新しい方法として特筆され ましょう。

 地域とはなにか−それは、時間的にも空間的にも、可変的であり且つ重層的な存在 であって、ひとことで規定できるものではないでしょうが、その歴史的過程を常に考 えていゆくなかで、地方史・地域史の新しい視点・方法も生まれてくるものと思いま す。第50回(大阪)大会が、実り大きい大会になりますよう、大会当日はもとより、 今後の大会までの準備研究会や大会テーマ関連の準備研究会などに対しても、多くの みなさま方の積極的なご参加とご支援をお願いして、大阪大会の年の念頭にあたって のご挨拶とさせていただきます。

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第3回準備研究会ご案内
  先輩にきく −戦後大阪地域の史料調査−

今回は、大阪地域における史料の調査を基盤として、活発に研究を展開してこられ た方々のお話をうかがうという企画です。戦後日本近世史学の発展はまさに地域の史 料の発掘によりささえられてきました。そこで大阪歴史学会に深く関わってこられた 福島雅蔵・山口之夫・有坂隆道の三先生をお招きし、大阪地域における史料調査・研 究の開始期について語っていただきます。今後における地域史なり、地方史なりの発 展を求める立場からもぜひ知っておくべきことがたくさん出てくるのではないかと期 待しています。


  日  時 1999年1月17日(日)
  場  所 大阪天満宮
       大阪市営地下鉄谷町線・堺筋線「南森町」、
              JR東西線「大阪天満官」下車徒歩すぐ

(A)大阪天満宮境内案内  午前10:30〜 大阪天満官社殿前集合
    案内と説明   大阪天満官史料室 高島幸次氏(夙川学院短期大学助教授)

(B)聞き取り・談話会   午後1:00〜4:00
                  (於)大阪天満官境内・梅香学院2階
  [出席者]
        福島雅蔵氏
        1950年頃には大阪府立三国ケ丘高校社会科教諭の傍ら、1950年より
                始まった『狭山町史』編纂に従事し、田中・中林・中川・吉川の各
                家文書や堺市小谷家・土師家文書など調査し、狭山池の水利、村方
                騒動・藩政史あるいは晒加工業などの研究を進められる。
               『幕藩制の地域支配と在地構造』(1987年、柏書房)などがある。

    山口之夫氏
        1950年頃には大阪府立三国ケ丘高校・住吉高校社会科教諭を勤められ
               る傍ら、福島氏と同じく『狭山町史』編纂に従事し、木綿・菜種など
               の研究を進めるとともに、平野郷杭全神社覚帳の調査に力を注がれる。
               「大和川川違えの社会経済史的意義」(『ヒストリア』55号、1970
               年4月)など論文多数。

    有坂隆道氏
        1950年頃は初め阪大助手、後関西大に移り、戦後全国最初の市史編
               纂事業であった『芦屋市史』に従事、続いて『西宮市史』などにも携
               わられる。地方史の編纂にさまざまな先べんをつけ、藤本篤氏との共
               著『地方史の研究と編集』(ミネルヴァ書房、1968年)は有名。

   [聞き役]北崎豊二氏
        服部  敬氏

 主催:地方史研究協議会第50回(大阪)大会実行委員会・同運営委員会

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○その他の記事
 ・【地方史の文箱】<4> 「大阪天満宮」掘田暁生
 ・第2回準備研究会(泉佐野)参加記  福島雅蔵
 ・実行委員会・事務局の活動日誌
  ほか


『地方史研究協議会 第50回大阪大会レター二ュース No3』 1998.12.4

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<私の提言>
 「新しい地域史研究の方法とは」         今井修平(神戸女子大学)

 ○「郷土史」「地方史」「地域史」

 「郷土史」に対する「地方史」の提唱は、地域の歴史を全体史の中に位置付ける積 極的な試みであったと思います。ただ「地方」という言葉のもつ「中央」ヘの従属的 な印象から、近年は「地域史」という用語が多く用いられるようになりました。それ は「全体」を構成する「地域」という意味だと思いますが、単に全体史を構成する一 事例としての地域史では、「地域」という枠で歴史を切り取ることのメリットが活か せないということから、戦後50年の地方史研究協議会の活動成果を総括し、今後の 活動を展望する大会に「新しい地域史研究の方法を求めて」というテーマを掲げた次 第です。その議論に参加した一人として私なりにその意図を説明しておきたいと考え ます。

 ○「新しい地域史研究の方法」の意味

 まず「新しい」という形容詞は「地域史研究」に掛かると同時に「方法」に掛かり ます。そして、どちらかといえぱ後者に重点があり、「新しい方法」を模索すること を通じて「新しい地域史研究」の進展を目指す、という提案であります。

現在の歴史研究が個別・細分化の傾向にある状況を打破する糸口として、「地域史」 そのものが有効な一つの研究方法であると考えました。すなわち無限にある過去の歴 史事象を切り取る方法として、古代史・中世史・近世史・近代史といった時代別の歴 史認識があり、また文献史学、考古学、民俗学といった方法的な切り口があるわけで すが、「地域」を単なるフィールドとしてではなく、歴史事象を切り取る方法として 捉え直す、という意味です。たとえぱ時代枠を越えた通時的な研究が「地域史」では 容易に行えるのではないか。全時代的でなくても各時代間での研究や認識の断絶を克 服することが「地域史」では可能ではないか。地域は、民衆が政治や経済の枠組みの 変化とか変わりなく生活しつづけている場でありその生活実態に則した歴史を解明で きるのではないかと。また「地域」という共通項で括ることによって、新しい研究方 法や分析視角を見つけることができるのではないか。考古学、地理学、民俗学、建築 史などと、単なる協同研究ではなく方法上の融合を試みることができるのではないか。

 ○大阪大会のもつ意義と可能性

 「大阪」という地域は研究対象として歴史の宝庫であり、従来からの豊富な研究蓄 積を持ち、自治体史の編纂や郷士史研究が盛んであるだけでなく、すでに近世考古学 や歴史地理学、国文学と文献史学との融合を試みる新しい研究成果も僅かながら見受 けられます。

大阪で大会を行うことの意義もその点に求めることができるのではないでしょうか。

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○第2回準備研究会(泉佐野)のご案内
住民から見た地域史研究の課題 −泉南を考える−

 12月13日(日)於:泉佐野
          集合:南海本線 泉佐野駅 海側改札口(改札を出て右側地上)

(A)見学会  AM10:00〜12:00 於:旧佐野町周辺
    見  学  旧佐野町を歩く
   案  内  樋野修司(歴史館いずみさの館長)
   内  容  近世の在郷町・佐野の現在の景観を見学し、中心の寺社などをめぐり
              ます。
   [主なコース]孝子越街道沿いの商店街→町並みのよく残る「車道」(拡幅
         予定地)→復元整備した新川家住宅→今も残っている「いろは蔵」など

(B)展示見学  PM1:00〜2:00  於:歴史館いずみさの展示室
   見  学 歴史館いずみさの常設展示
   案  内 同館学芸員
   内  容 同館は、小規模ながら全国的にも有名な中世の日根荘と泉佐野の歴史
              を市民にわかりやすくするため展示を工夫したユ二ークな博物館施設
              です。

(C)研究会  PM2:00〜5:00  於:歴史館いずみさの地下会議室
  
        報告1 聞きとりから見えてきたもの−繊維産業に働く人たちと地域経済−
      報告者   綿の会 溝口幸子さん・根川真弓さん
      内  容   10年前、名もない乙女たちの糸にかけた思いを書き残したい
                     と聞きとりを始めました。その後、織維産業の厳しい現実を目
                     のあたりにし、地域経済の重要性を考えるようになりました。
                     その手さぐりの活動について報告します。
   
        報告2 わがまちの歴史を知りたい、記録したい 
                          −泉南歴史歴史研究会の活動と特徴−
      報告者  泉南歴史研究会事務局長 松本芳郎さん
      内  容   本会は、泉南市民を中心にした歴史同好サークルであり、地元
                     市民の発想を基礎にした活動をしています。市民の「わがまち
                     の歴史を知りたい、知っていることを記録にとどめたい」とい
                     う意義と活動について報告します。
   報告3 足で探る地域史
      報告者  泉佐野の歴史と今を知る会 井田寿邦さん
      内  容   地域を丹念に歩いた成果に基づいて、古文書では描けない世界
                     を探っていきます。

      報告4  池田谷久吉ど泉州の戦前戦後 −地域社会の変容と郷土史−
      報告者  大阪市史料調査会調査員 古川武志
      内  容   泉州は古くから郷土研究が盛んな地域でした。特に今回報告す
                     る池田谷久吉さんは代々大工の家で、市立泉佐野病院の設計を
                     手掛ける一方、大阪府史跡名勝天然記念物調査員として泉州の
                     文化財保存や顕彰活動を担ってこられました.そんな彼が活躍
                     したのは戦争を挟んだ時期であり、まさに泉州にとっては新し
                     い地域を模索する時期でした。地域社会が変容する中で、彼が
                     何を考え、どのような新しい地域像を提供しようとしたのか、
                     今後私たちは彼らの活動から何を学べるかを考えてみたいと思
                     います。

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○その他の記事
 ・【地方史の文箱】<3> 「中央公会堂の失われた神像」船越幹央
 ・研究会まめ知識 「泉南地域の歴史と現在」近藤孝敏(泉佐野市史編さん室)
 ・第1回準備研究会(八尾)参加記  古川武志
 ・実行委員会・事務局の活動日誌
  ほか


『地方史研究協議会 第50回大阪大会レター二ュース No2』 1998.11

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<私の提言>
 「アジア史の中の日本」   佐久間貴士(大阪府教育委員会文化財調査事務所)

 ○外国人研究者の日本への関心

 だいぶ以前から外国の研究者の参加する研究会にはよく出るようにしている。外国 の研究者がどんな問題意識で、何を研究しているのか、直接聞いてみたいからである。 ポーランドのSさんが、日本の蒙古襲来を研究しているので「なぜですか」と尋ねた ら、「ポーランドは負けたけど、日本は勝ったから」と答えてくれた。

 なるほどポーランドは元寇はもちろん、たえず他国から侵略を受けてきた。中国社 会学院のLさんは日本近代教育史の講演をされた。「日本の近代化に教育が果たした 役割が大きい。中国の近代化のためにそれを学びたい」と答えてくれた。

 二人からは、ポーランド人として、中国人として問題意識を強く感じさせられた。 つい先日は、イギリスのMさんからイギリスの都市と日本の都市が似ているので、両 方の都市を研究してみたいといわれた。私も都市史に興味があるので、ヨーロッパ人 がなぜ日本の都市なのか、この次はもっと深く聞いてみようと思っている。

 ○各国の研究状況 私の専門は考古学だが、日本で考古学でご飯を食べている人は、文化庁の統計では 6000人を超えている。外国の考古学研究者に会うと、「あなたの国の考古学研究 者はどれくらいですか」とよく質問する。私の聞いた印象では、中国は日本の半分ぐ らい、韓国は1000人をまだ超えていないのではなかろうか。ベトナムは100人 くらいと答えてくれた。

  日本は研究者の数も多いし、印刷される報告・論文も多い。アジアでは2番目に研 究者が多い中国では、論文を書いても印刷されるまでかなり待たなくてはならないし、 研究雑誌に書ける枚数もかなり限定されている。私の知っている範囲では、ベトナム やタイで考古学の論文が印刷できる機会はたいへん少ない。こうした傾向は文献史学 にもある程度あてはまるのではなかろうか。

 ○地域史の新視点

 こうした日本に来る外国の研究者と話をしていると、それぞれの国の人が日本に寄 せる関心は、たいへん明確である。そこでアジアでダントツの専門家がおり、書く機 会の多い日本では、中国や朝鮮だけでなく、もっと広くアジアの歴史に関心を持って いいのではないかと思っている。地域史研究者が、日本の中の地域史だけでなく、ア ジア史の中の日本史(地域史)という視点があってもいいのではないかと思う。

 このところ考古学の世界ではアジア各地で共同の発掘調査がふえ、研究者の交流も 盛んになってきた。私もアジア史の中の日本というテーマで勉強してみたいと思って いる。

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○その他の記事
 ・【地方史の文箱】<2> 「北野一切経奥書と摂・河・泉」尾崎安啓
 ・研究会まめ知識 「高安城」
                  「河内の郷土文化サークルセンター」
 ・実行委員会・事務局の活動日誌
  ほか


『地方史研究協議会 第50回大阪大会レター二ュース No1』1998.10

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●創刊にあたって● 大阪大会実行委貝長 北崎豊二

地方史研究協議会の記念すべき第50回大会が、1999年10月16・17・ 18日に大阪で開かれることになったのは、誠に喜ぱしいことである。

かつて私は、「地方史は地方の民衆の歴史である。したがって地方の民衆の生活や たたかいの中に問題を見出し、書きつづられたものであってこそ『真の地方史』とい える。」と記した。(「近代地方史研究と研究者の姿勢」『地方史研究』97号)

今、地方史研究協議会が第50回の大会を迎えるにあたって、出発当初の目的をも う一度確認し、上記のような確固とした問題意識をもって、それぞれの研究を深める ことが何よりも必要ではないだろうか。ともすれぱひとりよがりの研究に陥りやすい 現状を反省し、大阪大会が地方史研究協議会発足の原点を踏まえた大会になることを 願望する次第である。

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【大会テーマ】 「新しい地域史研究の方法を求めて

第50回(大阪)大会のテーマをどう決定するか。実行委員会では種々の議論を重 ねました。大阪で開くということで大阪という地域を取り上げる意義が明らかになる ようなテーマにすべきであるという認識の下、大都市の問題、周辺地域の問題、他地 域との関係、交流の問題、民衆の問題などが浮かび上がってきました。しかし、これ らを一つの短い言葉としてテーマ化するのは、なかなか困難であり、ある問題を強調 すれば他の問題が見落とされるということで、うまくまとまりませんでした。

今回のテーマはこうした議論の中から生まれてきたものです。地域に目を据えその 歴史をどのように認識するか、とりあげるべき地域の設定、特徴の把握、その地域を つくりあげた力、他地域との関係などに目を向け具体的な認識を深めていきたいと考 えています。

歴史研究は現在さまざまな面で飛躍のための努力が求められています.地域史なり 地方史なりの研究が果たす役割もまた大きくなっています。特に注目すべき動きとし ては都市化の進展する中で地域に生きるおおぜいの人々が地域の歴史認識の深化のた めに取り組み始めていることです。

また、考古学や民俗学はいうまでもなく、隣接諸科学の発展と共にそれらの成果を どう取り入れるか。逆にそれらにどんな貢献をすることができるのかも問われていま す。

地方史研究協議会が創設されてまもなく50年を迎えようとするいま、地域史研究 の新たな可能性を切り開く努カが求められているのです。

現在の問題点を指摘し、それを克服する方法や問題意識にあふれた研究をすすめる 中で第50回(大阪)大会の成功を目指したいと考えています。多くの方の積極的な 参加を呼びかけるものです。

1998年9月25日

大会実行委員会事務局長 小田康徳

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実行委員一覧

 実行委員は以下の方です。(敬称略、あいうえお順、事=事務局員)
  
  実行委員長 北崎豊二(大阪経済大学)
  今井修平(神戸女子大学)       尾崎安啓(寝屋川市教育委員会、事)
  小田康徳(大阪電気通信大学、事務局長)河合賢二(大阪高校)
  胡桃沢勘司(近畿大学)        小山靖憲(帝塚山大学)
  佐久間貴士(大阪府教育委員会、事)  芝村篤樹(桃山学院大学)
  白石玲子(神戸市立看護大)      杉本弘幸(大阪市史料調査会、事)
  塚口義信(堺女子短期大学)      辻川 敦(尼崎市立地域研究史料館)
  鶴崎裕雄(帝塚山学院大学)      服部 敬(花園大学)
  原田敬一(佛教大学)         福島雅蔵(花園大学)
  福山 昭(大阪教育大学)       藤本 篤(大阪市史編纂所)
  船越幹央(大阪市立博物館、事)    古川武志(大阪市史料調査会、事)
  堀田暁生(大阪市史編纂所、事、会計)

なお、地方史研究協議会本部の準備委員は下記の通りですc

 委員長  中野達哉(板橋区史編さん室)
      井上  潤(渋沢史料館)   久保田昌希(駒沢大学)
      小林一岳(明星大学)    佐藤孝之(東京大学史科編纂所)
      白井哲哉(埼玉県立文書館) 西田かほる(学習院大学史料館)

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 ○1998年度大会(第49回)大会のお知らせ

本年度大会は下記の通り開催されます。皆さん奮ってご参加ください。

 共通論題 都市・近郊の交流と変容 −信仰と遊山−
 会  場 川崎市市民ミュージアム
      〒211-0052 川崎市中原区等々力3049−1
      TEL(044)754−4500
      JR南武線・東急東横線武蔵小杉よりバス「市民ミュージアム」下車
 日  程 10月31日(土)〜11月2日(月)の3日間(但し2日は巡見)
      巡見地は大山・日向薬師方面
 公開講演 相模国と江戸 −その政治的・社会的関連性について−
                      相模原市立博物館長 神崎彰利氏
      相模国の霊場信仰        明治大学教授    圭室文推氏

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 ○地方史研究協講会第50回(大阪)大会準備研究会
−第1回− 河内の歴史を探る

 地方史研究協議会第50回(大阪)大会にむけて、本実行委員会ではこれから随時 準備研究会を開催していきます。その際、摂津・河内・和泉の各地を訪問し、地元で 地域研究に努力している諸団体・諸個人の皆さんと研究交流を行い、問題点を出し合っ て地域史研究の方法、あるいは当該地域に関する認識を共に深め、さらにいわゆる大 阪像の認識の深化に役立てたいと考えています。今回は、その第l回目です。今回は、 河内を中心に熟心な活動を長年にわたって積み重ねておられる「河内の郷土文化サー クルセンター」と共催し、また、八尾歴史民俗資科館のご協カを得て実施します。古 代山城として注目を受ける高安城跡の発掘もこのグループの一員である高安城を探る 会によって可能となる道が開かれたものです。今回はこの高安城跡の見学会も行いま す。積極的なご参加をお待ちしています。

 

11月8日(日)  於八尾
 (A)見学会……一高安城跡(雨天決行)
       集合  午前10時00分  近鉄ケーブルカー「高安山」駅
 (B)研究会……一午後2時より5時まで (於)八尾市立歴史民俗資料館
             近鉄信貴線「服部川駅(「山本駅」で乗り換え一駅目、
             「鶴橋」駅から約30分)より北の方向へ徒歩10分。
    報 告
       1、東京都板橋区史編さん室 中野達哉氏
            「地域史研究の動向と地方史研究協議会」
       2、河内の郷土文化サークルセンター会長 三村正臣氏
            「河内の郷土文化サークルセンターの15年」
       3、高安城を探る会代表 岩永憲一郎氏
            「高安城を探って20年」
       4、八尾市立歴史民俗資料館友の会 鹿崎良俊氏
            「古文書と取り組む」
    討 論

     *なお、研究会場の八尾歴史民俗資料館では、平成10年度特別展:
      「高安城と古代山城」を開催しています。
       研究会開始前の休憩時問中にでもご見学ください

主催:地方史研究協議会第50回(大阪)大会実行委員会・ 河内の郷土文化サークルセンター・     地方史研究協議会常任委員会第50回(大阪)大会準備委員会

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○地方史研究者の皆様
                    第50回(大阪)大会実行委員長
                             北 崎 豊 二

        協賛金について(お願い)

 大阪大会成功に向けては多額の経費が必要となります。
 当実行委員会では、多くの方のご協賛を得て、実施していきたいと考えております。
 つきましては下記により、ご協賛をいただきたく存じます。
 なにとぞご協力下さいますようお願いいたします。

              記

 ・入金の方法 同封の振り込みをご利用下さい。
        実行委員に直接お渡しくださっても結構です。
 ・特典    協賛金をいただいた方・団体にはこの会報及び研究会の案内をお送
                りいたします。
 ・金額    一口 2000円
                                     以上

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         大会会場のご案内  【 地図 】
  場所:サンスクエア堺
         〒590-0014 堺市田出井町2番1号
  日時:1999年10月16・17・18日

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○その他の記事
【地方史の文箱】<1> 「真田山の陸軍墓地」 堀田暁生


地方史研究協議会大阪大会 ◆A室/B室

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