●ターニングポイント「契約」:
1942年の春、日本国中が勝利に湧いている頃、ある者が命を賭した祈りは「何者か」に通じた。
その「何者か」は、不遜にも自らを呼び出した者に一定の評価を下し、魂を代償として三つの願いを叶えようと言葉をかけた。
ただし、人の時間で五十年以内で出来ることであり、契約は五十年後に自動的に終わると「何者か」はそう付け加えた。呼び出した者の価値がそれだけだったからだ。
だが呼び出した者は躊躇せずに願った。
五十年もの時間は全く不要の願いばかりだった。
「日本海軍に勝利を」
「日本を泥沼の戦争に追いやった支那に破滅を」
「日本を米英から守らしたまえ」
あい分かった。
そう言った「何者か」は、力強く言うが早いか自らを呼び出した者の魂を旨そうに咀嚼し、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。
さて、どうやって「契約」を果たしてやろうか。
一度交わされた契約は、呼び出された「何者か」にとっても神聖にして不可侵なものだったが、解釈は自由自在だった。
|