コーチングは会話術か

コーチング特有の会話術というのがあります。巷間のコーチング書籍では「スキル」として紹介されているものです。たとえばオウム返し、沈黙、数値化、ビジュアル化、アイスブレーク、・・・といったスキルがあります。コーチング書籍では、単に会話術が紹介されているだけでなく、「コーチング=会話術」といった図式が展開されています。

コーチングのプロになりたい、と私に連絡をとって来たサラリーマンがいました。よくよく話を聞いてみると、キャバクラの女の子にコーチングの「会話術」を試してみたところ、たいへん盛り上がったので、その気になったというのです。えらく軽いですが、「コーチング=会話術」といった考えが浸透しているため、こんなふうに考えるのです。そして、会話術がうまくなればコーチになれると思い込みます。

コーチングの会話術を使えば、どうしても相手の話の聞き手になりますから、もともと話を聞いてもらいたかった相手には喜んでもらえます。また、少なくとも高圧的な説教口調は回避できますので、会話は円滑に進みます。これだけでも結構なことです。

しかし、会話術だけの効能はここまででしょう。仕事や一身上の難問が持ち込まれた場合、会話術だけではとたんに機能しなくなります。

ではコーチングの質を決定するファクターとして、会話術はどれくらい効くものでしょうか。

せいぜい1割です。私に言わせると、「会話術」が占めるウェイトはせいぜい1割程度にすぎません。残りの9割は人間力が勝負です。

ここで言う人間力とは、理解力・分析力・表現力、さらには問題解決力といったコンサルティング能力、幅の広い見方といったカウンセリング能力、このふたつを総称したものです。

そもそも話術は人間力の発露であって、人間力のある人は話術もあるものです。そうすると、コーチング特有の話術のウェイトなど、どう考えてもごくわずかです。

本来コーチングは人間力の勝負なのです。けれど、それを言ってしまうと、人間力が不足している人はなすすべがありません。

「会話術のウェイトは1割。あとは人間力の勝負」

ちょっと考えればこれが常識というものです。しかし、こんなことを言われては、誰も会話術を学ぼうとは思いません。

ですから、教育ビジネスでは、あえて「人間力」を伏せています。その結果、教育ビジネスでは会話術を前面に出して、コーチングは「会話術」だよ、というように話が擦り替わっているわけなのです。教育商品をビジネスにする場合、このほうが断然都合がいいのです。人間力は速成が利きませんが、コーチング特有の会話術は速成が利くからです。

会話術の実習をしている限り、人間力の差はそれほど表面に出てきません。しかし、難問を抱えた人の相手をしたとたん、白日のもとにさらされます。

たとえば、話を聞くだけをとっても、歴然たる差が出ます。あなたは頭の硬いわからずやに多くを語りたいですか?聡明で信義に厚い人ならどうですか?人の話は人間力という器で聞くものです。だから話し方教室はあっても、聞き方教室はないのです。

コーチングがうまくいかない、という声はビジネス・コーチング、パーソナル・コーチングを問わず聞かれますが、大半はコーチングする側の人間力が不足している、と言っていいと思います。

人間力のある人、足りない人とも「会話術」は学べます。ところが同じように会話術を身につけても、人間力のある人、足りない人とではコーチング能力に全く開きがあるわけです。

書店に並んでいるコーチング書籍は、会話術の本が主流です。しかし、会話術はコーチングの質を決めるファクターとしてはごく低いのです。考えたらおかしなことですね。商業主義の結果でしょう。商業主義の特徴は、「お手軽なハウツー」だからです。

だれでもはじめはコーチング業界の「商業主義=会話術」のカラクリに気が付きません。私もそうでした。しかし、いろいろやっていくうちに、コーチングの勝負は人間力であることがわかってきます。会話術は「あればいい」という程度のものなのです。

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