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登殿、麾下の士岡本忠次郎といへる人は有志の士にて、先年正議を
もて罪を得たる人なれ共、既に老年に及び、空しく朽果んこと、い
と惜むべきことに思召され、昨日、執政鵜殿氏へ御筆もて御下知被
為在、今度御守殿御用人古山善蔵の闕へ忠次郎を補せしめんと思召
候間、誠々評議致候様にとの御こと也、この人物は、戸田立原并彪
抔、委細に存居候半との御こと也、今朝、鵜殿氏より示さるゝ間、
局中にて原田へ相談じける内、 召れて 御意ありけるは、岡本を
古山の欠へ補したることも、さまで益ある事にはあらざれども、岡
本も一旦職を得ば、又要路へ出る様にもなりなん、さらば御為にも
可然事なり、されど岡本を補せん事、公辺へは如何の振に申立なば
よろしかるべき、又官途の順次抔も心得なきとの仰ありて後、この
事例の川路へ内々相談すべしとありけるにぞ、帰途戸田氏を訪ひ、
主人と相談し、川路へ一書を贈りて聞けるに、取敢ず事情委細に申
来りぬ、戸田子に而談話 原田も来る、夜二更、既 舎 時に雨ふり
ぬ、
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