Я[大塩の乱 資料館]Я
2002.1.26

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「大 塩 中 斎」 その27

井上哲次郎 (1855−1944)

『日本陽明学派之哲学』冨山房 1900より
(底本 1908刊 第6版)



改行を適宜加えています。

第三篇 大塩中斎及び中斎学派
第一章 大塩中斎
第三 学 風
 第七 虚偽を去るの説

誠実を尚び虚偽を賎むこと、是れ古今の通則にして、東西の一致する所なり、仏教の十戒に不妄語といひ、「ジヤイナ」派の五戒に欺騙する勿れと 云へり、又摩西の十戒にも「爾の隣人に妄証する勿れ」とあり、凡そ聖人と して尊崇せらるヽもの虚偽を戒めざるはなし、中斎殊に虚偽を戒め、誠 実を守ること」厳なり、学堂の西掲に「入吾門学道以忠信不欺為主本」の文 字を記し、入門の学生には先づ此事を盟はしめたり、中斎が学、良知を以 て其主義となすが故に、己れを欺き人を欺かんか、是れ良知に反するの 所行なり、己れを欺かず、人を欺かず、唯々,誠実の心を以て万喜事を貫かば良知の功用、顕はれずといふことなし、是れ彼れが虚偽を去るの説を立つ る所以なり、箚記の下に云く

又箚記の上に中庸の語を引いて云く、

是れ誠実の心を以て万事を貫き、其思惟する所、其行動する所、毫も不 善の浪迹なきを以て能く此に至るを得るなり、中斎は胸中の誠実、自ら 言貌に現はるゝが故に到底隠蔽すべからずとせり、箚記の下に云く、

是れ孔孟の已に道破する所にして、殊に大学に所謂誠於中形於外は即 ち此事に外ならざるなり、ヤコブ、ボエム氏曰く  

是れ氏が万物に就いて立論せし所なれども、人類の相貌の如きも亦此傾向なしとせざるなり、


井上哲次郎「大塩中斎」その26その28
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