Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.9.30

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』

その34

香川蓬洲

精華堂書店 1912

◇禁転載◇

第七席 (4)

管理人註
   

 今度大塩平八郎の供をして、江戸表へ下りました英治と云ふのは、同               なにがし じ天満に暮して居ります、窪田某と云ふ医者の忰でございまして、幼年        やしき の頃から大塩の邸宅に居つて、平八郎を主人とも師匠とも思つて居りま す位だから、平八郎が思案に暮れて居りますのを見て、共に心を痛めま して。  『先生、当家の亭主の話しでは、谷村さんは誠にお気の毒な事でご ざいますが、併し私が一応林様の御屋敷の近所へ往つて、全く御病死を なすつたか、聞き糺して参りませう、主人の話しに偽りは無論あります まいが、何だか私に夢のやうな心持がいたしますから』  『デハ英治、お前御苦労だが往つて来て呉れい』  『畏まりました』  英治は直ぐに遠州屋半兵衛に、林大学頭の屋敷を詳しく聞いて出掛け      やが ましたが、軅て立戻りまして。  『先生、全くでございます、私は林様の御近所へ往つて、一二軒聞          こ ゝ   あるじ 合せました処が、当家の主人が云つた通り、去年の師走の廿一日に、御 かくれ 死亡になつたと申します』  『左様か、夫れは残念の事ぢや、谷村氏が居られんとすると、林の        こちら            い 御前にお目通りを願つた処で、此方の希望を述ぶると云ふ訳にも可かん から、是れは断念をして、此上は城州公にお目に掛つて、御意見を承つ て見やう』  と其日に大塩平八郎は、南割下水の高井山城守の屋敷を訪問いたしま すと、折よく山城守には在宿、で大阪から平八郎が出て来たと聞いて、 早速客間へ通し、一別以来挨拶が済みますと、山城守には。


相蘇一弘
「大塩平八郎の
出府と「猟官運
動」について」

相蘇一弘
「天保六年、
大塩平八郎の
「江戸召命」
について


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