Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.10.16

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』

その49

香川蓬洲

精華堂書店 1912

◇禁転載◇

第十席 (3)

管理人註
   

            もつとも  成程善右衛門の申す処も正理に思はれると、平八郎もまた自分に一軒づゝ 頼み廻るよりも、鴻池屋善右衛門から豪家の者等へ、出金の事を勧誘して 呉れゝば好都合でございますから。                 まかせ        『然ういふ事なら万事貴公へお委任申す、何うか宜いやう相談をして、       吉左右をお報らせ下さるゝやうに』  『委細承知仕りましてございます』                        やしき  と是れから二三世間話しをして平八郎は、天満の自邸へ立帰り、委細の 事を庄司儀左衛門、其他の者に話しますと、儀左衛門も。  『鴻池で然う云つて呉れゝば、最早十中の八九までは、望みの通り金 調は出来るでございませう』                             こつち  と大きに喜びまして、鴻池からの返答を待つて居りました、此方は鴻池                                 おも 善右衛門、大塩平八郎の立帰りましたる後で、庄兵衛、伊兵衛等を始め重                             このた 立たる者を集めて相談をいたしますと、いづれも大塩平八郎の今度びの思 ひ立ちは、頗る美挙であると賛成しまして。                               いよ/\  『エゝ旦那様、天五様をはじめ加島屋さん、その他のお方々で 愈 御 出金を遊ばす事になりましたる節は、御当家はまづ筆頭の事でございます から、決して負ては相成りませぬ』  『私共の考へでも、斯うして貧乏人の難渋を救ふ事に金を出すのは、 少しも惜しいとは存じません』  と番頭達も大きに慈善心を出して、千両でも二千両でも、出金をしやう と云ふ事になりましたが、兎も角も他家とも相談せねばなりませんから、       したゝ 早速に廻状を認め、至急に御相談の儀があるから、明日早朝より私方迄、 御光来下さるやうにと云ふやうな文意で、天王寺屋五兵衛、平野屋五兵衛、 加島屋久右衛門、同じく作兵衛、米屋平右衛門、炭屋彦兵衛、辰巳屋久左 衛門、其他数名、いづれも当時屈指の豪家の主人を招きました、サア此廻                        ひととほり 状を見ました人々は、何事を協議するのか、コリヤ尋常の事ではあるまい と、大抵は主人が直々に出て参りました、尤も二三軒は病気、また他行中    よんどこ などで 拠 ろなく、支配人を代理として出席いたさせました。

   


『大塩平八郎』目次/その48/その50

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