Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.10.9

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『演劇脚本大汐噂聞書』
その2

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

序幕 老婆貢住家の場 (2)

管理人註
  

伊予守 主君義元公の英雄と某が、軍法を以て六十余州を掌底に握らんと    参州路迄攻登り、桶狭間に陣を取り、織田信長の小勢如きと侮りし    が大事の元、不意を討れて主従討死、其魂魄、未だ去らず、何卒旗    揚げして、主人の無念を晴さんと思へども、勝時丸の短刀、摂津の    城に籠めあれば、中々立寄る事叶はず、何卒汝旗揚致し、主父の修    羅の妄執を晴らさせよ、 吉五郎 ハアヽ畏り奉る、只今より味方を集め手立を以て勝時丸をば取返    し、追附旗揚げ仕り、今川の世に翻へさん、お心安かれ、親人様 伊予守 ホヽウいじくも申せし汝が詞、此上は系図の一巻、九條の里、十    作の妻こそ其方が姉なれば、名乗り合ふて受取るべし、 吉五郎 スリヤ系図の一巻は、九條の姉が所持するとや、不日に尋ね、受    取り申さん、 伊予守 此上は其方が肌肉に分け入り、大望成就の助力せん、左らば/\  〔ト 大どろ/\になり、吉五郎悶絶すると、伊予守消る、仁助、納戸   より出て 仁 助 扨は吉五郎めは、今川家の余類よな、くゝつて、役所へ連て往た    ら、褒美の金、日頃の敵、ヲヽさうじや  〔ト 吉五郎にうゝる、又どろ/\になり、すっくと起て、一寸立廻り   あつて、仁助を見事な投げる、上手障子を明け    ヲヽ忰、委細の様子は聞升た、今こそ渡す父御の魂ひ  〔ト 大小を差出す 吉五郎 ハアヽ有難き父の魂ひ、お譲り下さる上からは、追附け父の苗字    を受継き、伊藤伊賀之助と名乗るべし、気使ひあるな母人様    ヲヽ頼母しい/\、イデ此上は母が餞別  〔ト 懐剣を咽へ突立る 吉五郎 ヤヽ何故の此自害    大望の企に此母は足手纏ひ、其方の本心見る上は、心の残る様は    ない、追附け花々しい旗揚げを草葉の蔭で見物仕升る 吉五郎 アヽ是非もない、母の最期、此上は一本立、心の儘に味方を集め、    追附け旗揚げを仕らん    ヲヽ○早左らば 吉五郎 お左らば  〔ト 仁助起きて 仁 助 吉五郎、うぬ  〔ト 一寸立廻りあつて、仁助を抜打に切る、貢落入る、此とたんにて   宜しく幕

   
 


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