役人替名
一 妾お峰 一 柴田勘兵衛
一 奥方お勇 一 杉山三平
一 娘お次 一 堀伊賀守
一 一子弓太郎 一 内山彦次郎
一 八田又兵衛 一 侍二人
一 高橋佐左衛門 一 四ケ所大勢
一 本田為助 竹本連中
造物 高二重襖、通り 青海浪の唐紙 上下落間 屋敷塀
上手に牢屋口、都て白洲の飾附け、尤敷台附き
敷台に為助、勘兵衛、上下に侍二人扣へ、時太鼓にて幕明く
勘兵衛 何と為助殿、先達て召捕りし平八郎が妾峯、様々問状にかくれど
も、平八郎が行衛存せぬと斗り
為 助 中々一筋縄では白状致さぬと相見へ升る
〔ト 向ふより四ケ所一人走り出て
四ケ所 ハアヽ、高橋様、八田様、大塩が妻子の者を召捕り、只今お越し
で厶り升る
〔ト 引返して這入る
勘兵衛 イデ其由を伊賀守様へ
〔ト 奥にて
伊賀守 イヤ聞た/\○
〔ト 襖を引抜き出て
伊賀守 大塩の妻子召捕りしとあるからは、イテ某が詮議の致さん、ソレ
是へと申せ
勘兵衛 ハアヽ
〔ト 顔にて教へる
侍 ○ 御両所、科人召連れ、お越し成されい
両 人 ハアヽ
〔ト 向ふより高橋、次に弓太郎、お勇、お次、八田附て出て
高 橋 コハ伊賀守様直々の御詮議で厶り升るか
伊賀守 如何にも、跡部殿も御同席の所、急病差起り、俄の帰館、夫故某
吟味致さん、ソレ科人、是へ
両 人 ハアヽきり/\歩め
〔ト 舞台へ来り
又兵衛 ハアヽ、仰附けられ升たる守口へ参り、白井幸右衛門が宅へ押入
りしに、早家内の者は逃失せ、幸右衛門は、四五日以前大阪へ罷出
て、未た帰らぬ由、夫より吹田村宮脇志摩は、平八郎が伯父なれば、
早速詮議致せし所
高 橋 平八郎が企の義は、真以て存ぜねども、従類迄もたやされるゝ
は兼ての覚悟と自殺致したれば、其儘相捨、此者共落行跡を手分け
して、やう/\に搦捕り
八 田 まつた附添ふ庄司儀左衛門、手いたく働き候へば、是非に及ば
ず、打取て、立帰り升て厶り升る
伊賀守 ホゝウ、両人共出かされたり、コリヤ、其方共は平八郎の行衛、
真直ぐに白状致せ
お 勇 成程仰せは御尤で厶り升れど、夫平八郎、当月十五日に、私共へ
申升るやう、女子供は屋敷にあつては差へある故、父忠兵衛方へ
参る様との申附けにて、谷有村へ参り升たれば
お勇・お次 私共は一向に存じ升せぬ
又兵衛 ヤアいふな/\、谷有村へ参りし者が、何故吹田村、志摩が宅に
隠れおつたぞ
お 勇 エヽ
又兵衛 上を偽る不届女、イデ此上は拷問せん
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