Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.11.24

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「大塩の乱関係論文集」目次


『演劇脚本大汐噂聞書』
その48

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

八幕目 奉行所白洲の場 (4)

管理人註
  

浄るり 既に斯うよと見へたる所へ 内 山 待うぞ/\○  〔ト 御書を懐に入れ出て 内 山 ヤア、ぎやう/\しい、両人扣へおらう 又兵衛 貴殿は内山彦次郎殿 内 山 今日の内山は私ならず、山城守が名代たる拙者が役目 伊賀守 相役跡部殿の名代とあるからは、先々是へ 内 山 御列座、御免下され  〔ト 居直る 伊賀守 今日、跡部殿急病にて引籠らるゝ故、色々いたはり吟味致せども、    中々白状致さぬ故、只今拷問致す所で厶る 内 山 夫は御苦労千万に存じ升る、只今あれにて承はれば、弓太郎の背    中を割て、鉛の熱湯の拷問の由、お差図相違致して厶らう 伊賀守 黙れ内山、摂津の政事を預り奉る堀伊賀守、反逆人の有家白状さ    せるに、何故お差図が相違致した 内 山 相違の子細申上げん○じたい大塩平八郎を反逆人と唱へる謂れ曾    てなし、夫大塩の所存の程は、万民の困窮を悲しみ、何卒施行致さ    んと日外欠所金、まつたお蔵米借用の義訴へ出たる所、御聞済なき    故、御部下の町人へ金子借用申入れしに、是とても聞入れねば、無    拠市中の焼失は、是天のなす所、彼乱暴の惣大将は今川弓太郎なら    ずや、左すれば平八、反逆人の張本と申謂れあるべきや、其張本た    る弓太郎を目前に置きながら、反逆人の張本の吟味致すが、相違の    一つ 三 人 ヤ 内 山 其大切なる天下の科人、棟梁たる弓太郎を類ひ稀なる拷問にかけ、    若し弓太郎が相果なば、如何致して鎌倉殿へ申訳の召さるゝぞ 伊賀守 サア、其申訳けは 内 山 弓太郎の外、張本が厶るか 伊賀守 サア 内 山 両人共に返答あるか 四 人 サア/\/\ 内 山 両人扣へい 二 人 ハア 内 山 伊賀守殿、如何で厶る 伊賀守 中々潔白な義で厶る○シテ彼等が落着はな 内 山 ハアヽ、恐れながら○  〔ト 御書を渡す、伊賀守披き 伊賀守 スリヤ三平めは磔の刑に行ひ、外の者共は遠嶋とな 内 山 左様で厶る 伊賀守 ハテなア 又兵衛 アヽイヤ未だ大塩が有家相知れざるに、妻子共の落着の義は如何    と存じられ升る 高 橋 併し内山公には、大塩が有家御存じで 両 人 厶り升るかな 内 山 如何にも 女皆々 エヽ 両 人 シテ大塩の有家と申すは 内 山 大塩が有家は日本国中 両 人 何と 内 山 凡日本広しと雖ども、鎌倉殿の残らず旗下、鎌倉殿の御威勢にて、    即座に召捕り御覧に入れん○コリヤ其方共、承はれ、此度平八郎の    挙動、重罪人の妻子なれば、重き刑罰にもなるべき所、御憐愍を以    て、弓太郎、勇、次は隠岐の国へ遠嶋たるべし お勇・お次 スリヤ私共は遠嶋で厶り升るか 内 山 まつた峯、其方は豆州大嶋へ遠嶋申附るぞ お 峯 有難う存じ升る 内 山 三平には、主人大塩へ加担なしたる科に因て、磔の刑罰に申附る    ぞ 三 平 ハツ、元より覚悟の義に厶り升れば、有難くお受け致すで厶り升    せう お 勇 只此上のお願ひは お 峯 せめて此世の生別れに、兄弟 三 平 主従共に暇乞のお許しをば 四 人 偏にお願ひ申升る 内 山 罪極まりし科人へ、暇乞は天下の法度 四 人 スリヤお願ひは叶ひ升せぬか 内 山 なれども遠嶋の出船は、則明日、今夜は揚り屋へ入れ置けば、暇    乞を致さうとも、其義は我々存ぜぬ事 お 峯 お情厚き其お詞 四 人 有難う存じ升る 伊賀守 然らば彼等を揚り屋へ 内 山 今宵一夜は役目の情 四 人 何から何迄  〔ト 息込む 内 山 ハテ、慈悲は天下の○  〔ト 袖を返すが、木の頭 内 山 宝で厶る 四ケ所 立う  〔ト 此仕組宜しく時太鼓にて幕

大塩噂聞書」
(摘要)



















厶(ござ)り
 


『演劇脚本大汐噂聞書』目次/その47/その49

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