Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.12.2

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『演劇脚本大汐噂聞書』
その56

重扇助

中西貞行 1894

◇禁転載◇

大 詰 油懸町三好屋の場 同奥座敷の場 阿波座堀捕物の場 (8)

管理人註
  

  造物 二重 襖 通り 張交の唐紙 上下 落間 板塀 二重側障子   上手に柴垣 手水前 例の所 客路次 綟張りの戸、此左右葛磨塀、   都て隠居座敷の飾り附け、独吟にて道具納る  〔ト 障子を蹴破り、久七、袴にて飛で出ると、跡から五郎兵衛、袴に   て刀を持て出る 久 七 申々、旦那様、私は切らるゝ覚へは厶り升せぬ 五郎兵衛 ヲヽ其方に咎はなけれども、殺さにやならぬ今日の切羽 久 七 そりや又何故 五郎兵衛 大恩受けた大塩様のお身替りは、此五郎兵衛と思へとせも、格    之助様の身替りがなきに、祝言に事寄せて着物を着替へさせたのは、    格之助様のお身替り、娘の婿になるからは、舅の為に御主人同然な    れば、其方が為にも、御主人同然諦めて、命をくれい 久 七 エヽ死にともない、アレエ/\ 五郎兵衛 エヽ聞分けない、時が延びては返らぬ事、寧そ○  〔ト 両人色々立廻りあつて、トド久七を切倒し、止を刺す、此時どん   /\になる 五郎兵衛 ヤヽ、あの太鼓は討手の向ふと覚へたり、イデお身替りに  〔ト 捕手一人出て 捕手一 様子は聞た  〔ト 一寸立廻りあつて、捕手を膝に引敷き、刀を腹へ突立、引廻はす、   是にて浅黄幕を切て落す、橋掛より花四天十人出て来り 捕手○ 何と、何れも草を分つて詮議致せし 捕手× 大塩には格之助を手にかけて 捕手十 平八郎が自殺の死骸 捕手一 重役方にも見分せしに 捕手二 上を偽はる彼等が似せ首 捕手三 殊に只今の注進には、平八郎親子の者 捕手四 是なる道へ落しと聞く 捕手五 時刻移れば詮議の手おくれ 捕手□ 然らば何れも 捕手九人 イザお越し被成れ  〔ト 皆々上手へ這入る、跡祭りの鳴物になり、浅黄幕切て落す   造物 平舞台 真中に朱の鳥居 左右同じく玉垣 向ふ宮の遠見   所々に地口行灯 紅葉の釣枝 都て祭りの飾附け   爰に平八郎、格之助、以前の捕手十人と立廻りの見得にて、道具納る  〔ト 切抜の立廻り随分あつて、トド捕手を両花道へ追込み 格之助 如何に親人、一旦内山殿の情に依て、一命助かるとは申せども、    斯く討手向ふ上は、最早運命尽きたる我々 平八郎 如何にも、其方の申如く縄目の耻を受けんより 格之助 親子諸共屑く 平八郎 此場に於て  〔ト 二人、刀を腹へ突立様とする、上手より 彦次郎 アイヤ御両所、先待たれよ  〔ト 出来る 平八郎 ヤ、貴殿は内山 二 人 彦次郎殿 彦次郎 先刻受取りし勝時丸の御剣を、直様上へ差上げし所、君にも甚御   満足、罪科は則御赦免なるぞ 二 人 エヽ忝い 彦次郎 殊に出家の其許親子、上に於てはお搆ひなし 平八郎 左りながら、一旦罪を犯せし我々 格之助 是より深山へ身を隠し、矢張り大塩親子の者は 平八郎 天命尽て相果しと、世上に流布を致す時には 格之助 天下の掟も相立申さん 彦次郎 流石は御両所、遖れ/\ 平八郎 然らば是にて 格之助 お別れ申さん 彦次郎 門出を祝して 二 人 ハツ 彦次郎 目出度い/\  〔ト 居並らび、宜しく幕           演劇脚本大汐噂聞書 終

大塩噂聞書」
(摘要)

綟張(もじば)り
歌舞伎で,一部
に紗布を張り,
後ろの俳優や風
景などが透き見
えるようにした
大道具。 



















寧(いっ)そ














花四天
(はなよてん)
歌舞伎で、はな
やかな所作事や
時代物に出る軍
兵や捕り手









































屑(いさぎよ)く



































遖(あつぱ)れ
 


『演劇脚本大汐噂聞書』目次/その55

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