重 扇助 『演劇脚本摘要録 第1』中西貞行 1895 所収
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五幕目 |
小泉淵次郎は、平山助次郎を訪ふ、助次郎の父助左衛門、面会し居る所へ、助次郎帰り、小泉は、助次郎へ、明日伊賀守巡見、跡部も同道ならん、浅岡助之丞方に休息の折を見て、火術を以て兼ての鬱憤を晴さん、との大塩の内意を、密に伝へ帰へる、助次郎は、妻お律に茶を持てといふを、お律、外の間に居て茶を汲み来る、又料紙、硯を持てと命じ、取りに行きし跡にて、蝿を殺し、茶の中へ入れ置き、お律、紙、硯を持ち来ると、茶碗を見て、蝿が入つてある故、汲み替へ参れと命ず、助左衛門出て、お律の麁忽を責め、離退する、お律、是非なく立出でたれど、様子を怪しみ、門外に忍び、様子を聞居る、助左衛門は、助次郎がお律に難義かけまい為、離別して、大塩に加担する決心を察し、斯くは計らひしなり、助左衛門は、助次郎に順逆を説き、思案せよとて奥へ這入る、助次郎、終に父の意見に附き、大塩が悪事の訴訟を認め、出行うとするを、お律出て止める、一間には、助左衛門、切腹して居て、妻は去り、親もなければ一本立ちなり、忠義を忘れなと励ますお律も自害して、助次郎を励ます事、
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