Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.2.24

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「大塩の乱関係論文集」目次


「大塩平八郎の再生」
その4

川島文郎

『戦争によつてのみ貧乏人は救はれる』
(新興戦争文学集) 天人社  1931 所収

◇禁転載◇

第二幕 第一場 管理人註
  

  鵬化山洪秀全の居城、秀全の書院、正面に三流の白旗を飾る。その各々  に次の四大文字が墨痕鮮やかに書かれてゐる。「天厭満清」「失明再興」  「官迫民変」。見下ろす山麓には数十流の白旗翻翻として風に靡き、人  馬の声、爆竹の音等、山谷に谺して物凄い。   大塩父子(朱九濤、洪秀全)話してゐる。 九濤 潯州府攻撃は見事であつたな。 秀全 恐れ入ります。 九濤 あの攻撃に成功したのは、実に愉快なことだ。顧元トの奴、今頃は  清朝政府へ泣きついてるだらう。 秀全 此の度の挙兵は全く機会が宜かつたのです。周章狼狽した顧元トの  奴が、吾々の救恤、炊き出しを暴徒の集団と間違へたなどは、全く支那  人らしいタワケでした。韋昌輝を暴徒の首魁として投獄し、私をまで捕  縛しようとしたんですからな。 九濤 渡支以来抱擁しつゝあつた大意図実現の機会に逢着した訳だ。 秀全 潯州府を焼き打して、韋昌輝を無事に助け出したことは、吾々の士  気を鼓舞する最高の賜でした。韋昌輝の激怒は絶頂に達してゐます。  (一流の旗を指ざして)御覧下さい。韋昌輝が、怒髪天を衝きつゝ書い  たものです。官迫民変、実に簡明なる旗標です。 九濤 ハツハ……面白くなつたぞ。 秀全 大坂での旗揚げが偲ばれてなりません。 九濤 そうだ。大坂での旗揚げは、災害に苦しむ同胞を救ひ、諸役人の悪  政を矯正し、天下の為めに血族の災禍を絶たんとしたのであつた。それ  はつまり、内を清め正しくするのであつた。然し此の度のは外の発展―  ―日本民族の跳躍である。このことは常々云つてゐたやうに、渡支以来  の企図である。名を上帝に藉りて同志を結合し、清朝政府を覆し、吾等  日本民族の天地を拡張する。――先づ外を清め正しくして、その力を以  て、内に及ぼさうといふのである。それこそ真の天下光宅である。此の  ことを忘れぬやうにしなくてはなりませんぞ! 秀全 ハイ。お父上の御意図、充分に肝銘して居ります。 九濤 それでは此の一巻を渡さう。本日諸大将満座の中で一読すべきもの  である。此度挙兵の趣旨を開陳し、彼等の帰依心を繋ぎ合せる妙法だ。  (卷物を渡す、秀全恭しく受取る)ハツハ   ……幕

石崎東国
「大塩平八郎−太
平天国の建設者
大塩格之助−靡(なび)き


























































藉(か)りて




天下光宅
則天武后
(武則天、624-705)
(武則天)の「曳鼎
歌」にあり。
「天下光宅,海内雍
熙」
天下は大きな家と同
じように平和に治ま
り、全国は調和がと
れ隆盛しているの意
 


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