人夫
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騒乱には群集を要する、群集の中には主謀者の真意を解する者も
解せぬ者もあらうが、それは差支無い。彼等は潮流に従ひ、群を
為して泳ぐ魚属のやうなもので、魚一尾づゝを離して随意の行動
を取らしめたなら、或は右せんとし、或は左せんとするもあるが、
一団となつては潮流のまに\/同一方針に進む計である、檄文に
は摂・河・泉・播四国の小前百姓及田畠を所持するも生計困難な
る百姓輩、大阪に騒動起ると聞かば早速駈集まるべく、其中にて
器量才力ある者は夫々取立て、不道の者共を征伐する軍役にも遣
ひ申すべしとあるが、更に切実なる手段として、平八郎並に其党
員は施行金を渡すに臨み、天満に火事あらば必ず駈付けよと命じ
たのである、されば平八郎の事を発するに方り、般若寺村百姓及
穢多百余人は卯兵衛の催促に応じ、尊延寺村百姓数十名は才次郎
自ら之を卒ゐ、猪飼野村守口町百姓百数十名は司馬之助孝右衛門
の約に従ひ、其他沢上江村・友淵村・稗島村・植松村・北島村・
弓削村等、平八郎より施行金を請けし諸村の百姓共は、多人数天
満に駈付け、若しくは駈付けんとしたのである、卯兵衛は般若寺
村の日雇稼で、忠兵衛の口入により二月上旬から大塩邸に寝泊し
て居つた、之は邸内の溜池を埋めると号して雇入れた人夫の一人
であるが、実は軍役にしようする目的で、彼等四十余名は当日平
八郎に一喝せられ、唯々として其命に従つた。
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騒乱には群集を要する。群集の中には主謀者の真意を解するも
あり、解せぬもあらうが、それは差支無い。彼等は潮流に従ひ、
群を為して泳ぐ魚属のやうなもので、魚一尾づつを離して随意の
行動を取らしめたなら、或は右せんとし、或は左せんとするもあ
らうが、一団となつては潮流のまに\/同一方針に進む計である。
檄文には摂・河・泉・播四国の小前百姓及び田畠を所持するも生
計困難なる百姓輩よ、大阪に騒動起ると聞かば早速馳集まれ。そ
の中にて器量才力ある者は夫々取立て、不道の者共を征伐する軍
役に使用せんとあるが、更に切実なる手段として、平八郎並びに
その党与は施行札を渡すに臨み、天満に火事あらば必ず駈付けよ
と命じたのである。されば平八郎の大事を発するに方り、般若寺
村百姓等百余人は卯兵衛の催促に応じ、尊延寺村百姓数十名は才
次郎自ら之を率ゐ、猪飼野村守口町百姓百数十名は司馬之助孝右
衛門の約に従ひ、その他沢上江村・友淵村・稗島村・植松村・北
島村・弓削村等、平八郎より施行金を請けた諸村の百姓共は、多
人数天満に駈付け、若しくは駈付けんとしたのである。卯兵衛は
般若寺村の日雇稼で、忠兵衛の口入により二月上旬から大塩邸に
寝泊して居つた。大塩邸では邸内の溜池を埋めると号して卯兵衛
以下人夫四十余名を雇入れてゐたが、彼等は当日平八郎に一喝せ
られ、唯々としてその命に従つた。
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