Я[大塩の乱 資料館]Я
2005.1.30/2.7修正

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大 塩 平 八 郎 』 その15

幸田成友著(1873〜1954)

東亜堂書房 1910

◇禁転載◇


 第一章 与力
  二 三大功績 上 (4)
 改 訂 版



其三  

第三は高井山城守の命により、淹滞せる訴訟一件を引請けた時、 原告から金銀を入れた菓子箱を贈つて来た、兪々裁決の日に至 り、平八郎は反復丁寧原告に諭してその非を認めしめた後、同 僚に向ひ、諸君は菓子が御嗜好であるによつて訴人より好む所 につけこまれ、従つて訴訟の久しく決せない次第で御座らう、 と例の菓子箱の蓋を明けて一座に見せたといふ事である、賄賂 公行と言つては大袈裟かも知れぬが、随分有勝なことで、当時 の弊風はそれ火事があつたといつて検分に往き、それ変死人怪 我人があつたといつて検使に出ると、必ず其出張先の町から礼 銀を取つたものである、平八郎が金銀入の菓子箱を開いて同僚 を辱しめたのは信じ難いとしても、彼が清廉潔白を以て事に んだは、如何なる事実が有つたかは分明せぬが、御池通四丁目 播磨屋利八が留守中に持来たりたる肴を其町の年寄に突返し、 今度は内分に仕て遣すが、向後心得違なきやう注意致せとの手 紙―巻端に写真版にして載せてある彼の手簡によつて明白であ る、

その五  第五は高井山城守の命により、淹滞せる訴訟一件を引請けた 時、原告から金子を入れた菓子箱を贈つて来た。兪々裁決の日 に至り、平八郎は丁寧反復原告に諭してその非を認めしめた後、 同僚に向ひ、諸君は菓子が御好であるによつて、訴人から好む 所につけこまれ、従つて訴訟の久しく決しない次第で御座らう、 といつて例の菓子箱の蓋を明けて一座に見せたといふ事である。 賄賂公行と言つては大袈裟かも知れぬが、随分有勝なことで、 当時の弊風はそれ火事があつたといつて検分に往き、それ変死 人怪我人がおつたといつて検使に出ると、必ず出張先の町から 礼銀を取つたものである。平八郎が金子入の菓子箱を開いて同 僚に示したは信じ難いとしても、彼が清廉潔白を以て事にん だは、如何なる事実が有つたかは分明せぬが、御池通四丁目播 磨屋利八が留守中に持参した肴をその町の年寄に返し、今度は 内分に仕て遣はすが、向後心得違なきやう注意致せとの添手紙 を送つたによつて明白である。   此肴を播磨屋利八と申ものより、此方留守中持参、   さし置帰侯。不埒の事に候へ共不弁故の儀と被推   候間、丁内へさし戻し遣候條、心得違無之様申渡   し置可申、此度は内分にて右様取計遣し候事                 大塩平八郎        御池通四丁目年寄へ                  (大阪亀岡高胤氏蔵)


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