其八
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第八は或医者が町奉行所の役人を困らす積で、漢文で認めた願
書を差出した時、願意の可否によらず、其儘に却下しては番所
に読む者が無いやうである、願意の聞届けざる理由を漢文で書
かうと、山城守の許可を得て其通り取計つたといふことで、要
するに是等は皆逸話伝説に過ぎない、大岡越前守忠相が名奉行
であつたとすると、従来幾多の奉行が下した面白き判決を皆忠
相のものと言触らし書流すやうな類で、前記の数條の話は勿論
虚説とは言明し難いが、また悉く実説とも名言し得ない、併し
我等は之によつて平八郎が清廉の人、更に一歩を進めて言へば
峻烈の人で、また事務に黽勉な人であつたことを知る、此点だ
けは総ての逸話を通じて見えて居る、而して次の一節は玉造口
与力坂本鉉之助が同僚柴田勘兵衛即ち平八郎の槍術の師と共に、
平八郎の口から聞いた話で、大に参考に資すべきものと考へる。
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その十
第十は或医者が町奉行所の役人を困らす積で、漢文で認めた
願書を差出した所、願意は聞届難きに決したが、この儘却下し
ては番所に読む者が無いやうである、願意の聞届け難い理由を
漢文で書かうと、山城守の許可を得てその通り取計つたといふ。
要するに以上は皆逸話伝説に過ぎない。大岡越前守忠相が名
奉行であつたとすると、従来幾多の奉行が下した面白い判決を
皆忠相のものと言触らし書流すやうな類で、前記数條の話を一
概に虚説として否定し難いが、また悉く実説とも断言し得ない。
併し我等は之によつて平八郎が清廉の人、更に一歩を進めて言
へば峻烈の人であり、また事務に黽勉な人であつたことを知る。
この点だけは総ての逸話を通して見えて居る。さうして次の一
節は玉造口与力坂本鉉之助が同僚柴田勘兵衛即ち平八郎の槍術
の師と共に、平八郎の口から聞いた話で、大いに参考に資すべ
きものと考へる。
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