儒門空虚聚
語
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儒門空虚聚語二冊は張南軒の言仁録真西山の心経に倣ひ、孔子の
空々顔子屡々空し等の経文に就いて、先儒の諸説を集め、太虚・
虚・又空の文字は必ずしも仏説の中国に将来するを待つて起りし
にあらず、我空と彼空とは本一物にして而も死活の差異あり、仏
氏の徒は大抵鑿心剥性終に枯寂の空となり、中や仁や皆滅び、儒
中の聖賢は克己復礼以て本然の空を全うし、中や仁や皆恙無し、
俗儒斯義に昧く、空字を忌み、之を言へば則ち仏氏の説を奉ずと
為すは誤なりと言つてをる、本書上巻は経語十一則註疏九十七條
を、下巻は諸儒論説百十一條を収め、巻首に天保四年十二月の自
序を載せ、次に附載として藤樹先生致良知三大字真蹟に跋すの一
文がある、箚記及附録抄同様天保六年に至り世上一般に出した本
書は一部三冊で、本文の上欄には猪飼敬所が訂正した訓点の誤謬
を掲げ、第三冊即ち附録は洗心洞学名学則並答人論学書略と同一
で、それより三條多い。
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儒門空虚聚語二冊は張南軒の言仁録、真西山の心経に倣ひ、孔
子の空々、顔子屡々空し等の経文に就いて、先儒の諸説を集めた
ものである。中斎曰く、太虚・虚・又空の文字は必ずしも仏説の
中国に将来するを待つて起りしにあらず。我空と彼空とは本一物
にして而も死活の差異あり。仏氏の徒は大抵鑿心剥性終に枯寂の
空となり、中や仁や皆滅び、儒中の聖賢は克己復礼以て本然の空
を全うし、中や皆恙無し。俗儒斯の義に昧く、空字を忌み、之を
言へば則ち仏氏の説を奉ずと為は誤なりと言つて居る。本書上巻
は経語十一則註疏九十七條を、下巻は諸儒論説百十一條を収め、
巻首に天保四年十二月の自序を載せ、次に附載として藤樹先生致
良知三大字真蹟に跋すの一文がある。天保五年之を家塾に刻した
時は二冊本であつたが、翌六年に至り、書林の手で出たものは一
部三冊で、第三冊即ち附録は洗心洞学名学則並答人論学書略と同
一で、それより三條多い。
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