Я[大塩の乱 資料館]Я
2010.2.16

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「大塩の乱関係論文集」目次


『江戸と大阪』
その149

幸田成友著(1873〜1954)

冨山房 1942 増補版

◇禁転載◇


 第九 株仲間 (3)管理人註

問屋と仲買 売買取引 諸色大阪積 登高の減少

 商品の生産から消費までの径路は商業によつて色々相違がある が、先づ問屋仲間の手を経るものと見て宜い。問屋は荷主の委託 を受け、口銀を取り、仲買に品物を売り、或は荷主から直に買取 り、損益を自分で負担して仲買に売捌く。仲買は他の商人及び小 売人の注文を受けて問屋から買入れ、これを注文主に売渡し、或 は自分の見込で問屋から買入れ、他国商人及び小売人に売渡す。 これが問屋仲買の一般の仕事であるが、必ずしもさうばかりでは ない。荷主或は仲買から商品を買取り、これを他国商人及び小売 人に売渡すのを問屋といひ、土地及び近国製産者から買集めて問 屋へ売渡すのを仲買といふ場合もある。また単に何商といつて問 屋仲買の区別の無いものもある。問屋仲買といふと通例仲買が問 屋に従属して居るやうに考へられるが、さうばかりではなく、問 屋と仲買と対等の位置に立つもあり、問屋が却つて仲買に圧倒せ                 スアヒ られて居るのもある。尚トンビとか牙とかいふ仲介人を必要と する商売もあつた。  売買取引は口約拍手を主とし、契約書を渡すといつても、それ は簡単な端書を売主から買主へ渡すので、売主買主双方で交換す ることは稀である。それ故買主から故意に紛議を起し、契約を破 らうとする時は、証明に困るのであるが、さういふ場合には売主 は自分でつけた帳面、例へば売上帳とか直組帳とかいふものを以 て証明することが出来る。併し買主にせよ、売主にせよ、一度約 束を破れば忽ち信用が落ちるから、たとへ口約束だといつても、 これを破ることは滅多にない。手附金を要する如きは稀な場合で ある。売買は現品を見てするか、或は見本を見てするのであるが、 マカ 任せ注文といつて、例へば秩父縞を百反送れといふ注文を受ける と、売主は縞柄なり価格なりを吟味して注文主へ送る。見本でき める場合は相場の昇降等で紛議が起ることもあるが、任せ注文に は却つて紛議の起ることがない。双方信用の結果でせう。  かやうに信用を磨いた大阪商人も一方には買占・持囲・出買な どといふ不徳義な仕方をする。品払底のため高直になるだらうと 見込むと、商品を持囲つて売放たない。大阪にゐて入荷をまたず、 瀬戸内まで出張つて往つて直段を糴上げて買取る。これを糴買と もいふ。買占・持囲・出買は幾度も禁令が繰返されてゐる所から                      フナマ 考へると、一向止まなかつたらしい。それから船間といつて入津 が途切れる時に、うんと相場を引上げ、追つて廻着すると相場を 引下げ、荷物を踏倒して買ふ。荷主船頭もわざ\/大阪へ往つて 踏倒されては辛いから、大阪以外へ船を廻したり、赤間ケ関や瀬 戸内で途中売をする。赤間ケ関は船着便利の地であるから船舶が 幅湊する。それを覘つて諸国の商人が寄集まつて高直に引取つて しまふ。瀬戸内の諸所でも同様の取引が行はれ、それが大阪直段 にひゞいて高直となるのです。これは買手からいへば出買、荷主                              船頭の方からいへば途中売である。中には船を大阪へつけても直 マチ 待といつて荷物を預けたまゝ売放たない荷主船頭もある。甚しい のになると仕入金を貸して貰つた問屋の手を経ずに、密に外の問 屋へ売払つてしまふのもある。これらの不都合が大阪へ入る荷物 の減少して来た主な原因の一でせう。  尾州の内海船といふのがある。元は大阪・堺・兵庫などを廻つ て米なり塩なりを買入れ、方々へ積廻して売つたのですが、追々 瀬戸内へ入込み、金主から貸して貰つた仕入金で盛んに大阪行の 荷物を途中で買取り、天保頃には船数二百艘に達したといはれる。 大阪へ入津すべき荷物の一部は他国の商船のために横取せられた といふべきです。












































































糴買。
てきばい


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