Я[大塩の乱 資料館]Я
2010.2.19

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「大塩の乱関係論文集」目次


『江戸と大阪』
その152

幸田成友著(1873〜1954)

冨山房 1942 増補版

◇禁転載◇


 第九 株仲間 (6)管理人註

冥加金 無代納物無 賃人足等 仲間判形帳 株の価 役員

 株仲間は株許可の御礼冥加として所謂冥加金を上納する。但し その金高をきめる際に、多くは懸引が行はれ、願人の方では成る べく少く出さうとし、公儀の方では成るべく多く出させようとす るので、数回押問答をして居る。通例初年度の冥加金は次年度以 後の冥加金より金高が多い。  冥加金の外に無代納物・無賃人足・川浚・駈付等といふのがあ る。無代納物といふのは、無代で幕府の入用品を納める。例へば 日本橋の魚市場では幕府入用の生魚を納める。然しこれは全然無 代ではなく、多少の代価を与へられるのであるが、実際の価格に 比して遥かに少く、問屋仲間においてその損銀を負担した。無賃 人足・川浚・駈付、これらはいはゞ労力を提供するのである。江 戸の髪結が非常の時に町奉行所牢屋敷へ駈付け、大阪の髪結が牢 屋敷番を勤め、江戸の土船仲間が御堀の定浚をつとめる類である。  併しながら仲間によつては冥加金・無代納物・無賃人足等の負 担を全然免かれてゐるものもある。堂島の米仲買両替屋の類で、 これ等は営業が非常に広い、国家的の事業であるといふ所から出 たものと思はれる。大阪の下尿引請人も無冥加ですが、これは不 浄物を取扱ふといふ意味で無冥加であつたらしい。  株仲間としては仲間一統の名前書に判形をして町奉行所へ届出 でる義務がある。その帳面の最初に通例前書といつて株数・冥加 金高・営業の梗概、その外一口にいへば総仲間が厳守すべき箇條 書が載つてゐる。この判形帳は仲間中に出入加除があつた場合、 早速訂正せねばなりません。  株数の制限はつまり仲間人員の制限といふことになりますから、 その仲間へ入るにはどうしても明株を譲受けねばならぬ。若しそ     * の営業が齎らす所の利益が多ければ多い程、株に高価を生ずる。 十組問屋の中、下リ廻船塩問屋は二三千両から四千両、蝋問屋木 綿問屋の中大伝馬町組が千両位、十組以外でも札差は千両株とい はれ、髪結床のやうなものでも場所により五十両乃至数百両まで あつた。併しながら株は必ず人員が一定して居るかといふと、さ うでもない。大阪の質屋・古手屋・古金古道具屋の如きは年々増 減がある、即ち株数がきまつてゐない。この分になると一定の加 入銀を出し、仲間の許可さへ得れば加入が出来る。従つて株に価 はない筈である。  株が価を持つにつれてその書入質入が行はれ、それが家屋敷に 次いで商人の金融を助けた。明和年間大阪で家質奥印差配所が出 来た時、最初は家質証文のみならず、諸株の質入書入証文にも奥 印を加へて印料を取らうとした位です。  既に仲間といへば若干人の集合団体である。十人以内の少いの もあるが、多いのになると千人以上に達する。従つて仲間を取締 るため申合を作り、また年行事・月行事のやうな役員を置く必要 が生ずる。仲間人員が余り多い場合には幾組かに分割し、組毎に 役員を置く場合もある。

*もたらす

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