冥加金
無代納物無
賃人足等
仲間判形帳
株の価
役員
|
株仲間は株許可の御礼冥加として所謂冥加金を上納する。但し
その金高をきめる際に、多くは懸引が行はれ、願人の方では成る
べく少く出さうとし、公儀の方では成るべく多く出させようとす
るので、数回押問答をして居る。通例初年度の冥加金は次年度以
後の冥加金より金高が多い。
冥加金の外に無代納物・無賃人足・川浚・駈付等といふのがあ
る。無代納物といふのは、無代で幕府の入用品を納める。例へば
日本橋の魚市場では幕府入用の生魚を納める。然しこれは全然無
代ではなく、多少の代価を与へられるのであるが、実際の価格に
比して遥かに少く、問屋仲間においてその損銀を負担した。無賃
人足・川浚・駈付、これらはいはゞ労力を提供するのである。江
戸の髪結が非常の時に町奉行所牢屋敷へ駈付け、大阪の髪結が牢
屋敷番を勤め、江戸の土船仲間が御堀の定浚をつとめる類である。
併しながら仲間によつては冥加金・無代納物・無賃人足等の負
担を全然免かれてゐるものもある。堂島の米仲買両替屋の類で、
これ等は営業が非常に広い、国家的の事業であるといふ所から出
たものと思はれる。大阪の下尿引請人も無冥加ですが、これは不
浄物を取扱ふといふ意味で無冥加であつたらしい。
株仲間としては仲間一統の名前書に判形をして町奉行所へ届出
でる義務がある。その帳面の最初に通例前書といつて株数・冥加
金高・営業の梗概、その外一口にいへば総仲間が厳守すべき箇條
書が載つてゐる。この判形帳は仲間中に出入加除があつた場合、
早速訂正せねばなりません。
株数の制限はつまり仲間人員の制限といふことになりますから、
その仲間へ入るにはどうしても明株を譲受けねばならぬ。若しそ
*
の営業が齎らす所の利益が多ければ多い程、株に高価を生ずる。
十組問屋の中、下リ廻船塩問屋は二三千両から四千両、蝋問屋木
綿問屋の中大伝馬町組が千両位、十組以外でも札差は千両株とい
はれ、髪結床のやうなものでも場所により五十両乃至数百両まで
あつた。併しながら株は必ず人員が一定して居るかといふと、さ
うでもない。大阪の質屋・古手屋・古金古道具屋の如きは年々増
減がある、即ち株数がきまつてゐない。この分になると一定の加
入銀を出し、仲間の許可さへ得れば加入が出来る。従つて株に価
はない筈である。
株が価を持つにつれてその書入質入が行はれ、それが家屋敷に
次いで商人の金融を助けた。明和年間大阪で家質奥印差配所が出
来た時、最初は家質証文のみならず、諸株の質入書入証文にも奥
印を加へて印料を取らうとした位です。
既に仲間といへば若干人の集合団体である。十人以内の少いの
もあるが、多いのになると千人以上に達する。従つて仲間を取締
るため申合を作り、また年行事・月行事のやうな役員を置く必要
が生ずる。仲間人員が余り多い場合には幾組かに分割し、組毎に
役員を置く場合もある。
|
*もたらす
|