大阪の両替
屋仲間の員
数とその種
目
同業者間の
取引
預金
|
大阪の両替屋は本両替仲間・南両替仲間・三郷銭屋仲間の三種
に分かれ、南両替仲間は江戸の三組両替屋に、また三郷銭屋仲間
は番組両替屋に当ります。然し大阪の三種両替屋の人員は遥に江
戸より多く、嘉永頃には本両替百七十九名、南両替五百四十四名、
銭屋仲間六百十七名といふ。またそれ等は株仲間ではあるが人員
は決して一定してゐない。それから大阪では十人両替といふもの
があつて本両替の取締に当つてゐる。十人両替はその名の示す通
り十人を以て定員としたのであるが、時代によつて異同がある。
延宝頃は天王寺屋作兵衛・天王寺屋五兵衛・誉田屋弥右衛門・新
屋杢左衛門・鴻池善右衛門・和泉屋平兵衛・新屋九郎右衛門・鎰
屋六兵衛・助松屋理兵衛・坂本屋庄三郎以上十人です 大阪の本
両替屋が江戸に比して著しく多数なのは注意に価する。
以上三種の両替屋中、真に両替屋といふべきは本両替であつた。
彼等の資産は親子の間と雖も知らしめなかつたけれど、資産の大
小・本家・別家等の関係によつて自ら親両替と子両替とに分れ、
子両替は自分の店の遊金を以て親両替に預ける。自分が取付にあ
へば親両替にあてゝ手形を振る。これを取引といふ。取引には利
子もなく抵当もない。全く徳義上の関係であるから、子両替は親
両替の面目を損ぜぬやうにと、不信の行動を避け、親両替も亦子
両替を保護し、手形を過振して貸越が嵩んでも講責してこれを改
めさせる位でした。
同格の両替屋は互に手形を振出し、年月若くは一ケ月毎に決済
し、借越となつてゐる残額は弁済する。これを差引といふ。
預金は当座勘定だけで、預金者には振出手形を渡す。預金者の
希望により幾枚にも金額を分割して交付することもある。この手
形は何時でも両替屋へ持参すれば正金になるので、兌換券同様に
流通した。預金には利子はつかない。預金の目的は第一は安全な
る保管であつて利殖ではない。第二は成るべく多額の預金をして
両替屋の信用を買ひ、他日資金借入の便宜を得ようとするためで
ある。故に入金があれば直に両替屋に持参し、また支払をする場
合には両替屋宛に手形を振る。取引をしてゐる両替屋が確実の聞
があれば、商人の信用が高まる道理であるから、商人の方では成
るべく信用のある両替屋と取引を開かうとする。両替屋の方では
取引を希望する向の身元をよく調べて、猥に取引は開かない。然
し一旦取引を開くと、両替屋の方でも得意の方でも代々これを継
続する。両替屋は貸出金には自身の所有金を振向け、預金は成る
べく自身の手許に保管する方針であつた。
|
|