総称して振出手形といふが、それを区別すると、(一)今の預
手形に相当するもの、(二)小切手に相当するもの、(三)差引
に用ふる手形の三種となる。(一)は両替屋から預金者に差出す
手形で、名宛人は勿論何人でも持参者に支払ふ。この手形は甲か
ら乙、乙から丙と順々に流通し、若し不渡となると最後の所有者
の損失となる。(二)は両替屋と取引ある商人から両替屋に振出
す手形で、これを両替屋に持参した時、両替屋に振出人の預金が
あれば異議なく渡す。預金が不足すると落印といつて不渡となる。
預金が不足でも予め両替屋の方で通尻何程迄は請合ふといふ約束
があれば支払つてくれる。この手形には流通を容易ならしめるた
めに本両替の証印がある。これを甲・乙・丙と順々に融通して、
不渡となつた場合には、元へ戻つて甲と振出人との関係となる。
(三)は両替屋間の差引に用ふる手形で、振出人も宛名人も共に
手代であるから、主人の印を氏名の頭へかぶせる。以上三種の振
出手形の雛形は次の如きものである。
(一)
覚
一銀 貫目也
右之通慥ニ請取申候、此手形を以て相渡可 申候、以上
年 月 日 何 屋 誰
何屋誰殿
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(二)
覚
一金 両也
右之金子慥ニ請取候、此手形を以御渡可 被 下候、以上
(右誰殿え御渡可 被 下候、以上)
年 月 日 何 屋 誰
本両替 何屋誰殿 |
(三)
覚
一銀 貫目也
右此誰殿え御渡可 被 下候、以上
年 月 日 印 何 屋 誰
何屋誰殿
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