Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.9.20

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「大塩の乱関係論文集」目次


『江戸と大阪』
その91

幸田成友著(1873〜1954)

冨山房 1942 増補版

◇禁転載◇


 第五 金 融
  一 両替屋 (7)
管理人註

貸付    送金

 貸出には大名貸と商人貸との二つがある。大名貸は十人両替を 始とし、大両替の専業で信用貸には相違ないが秋季廻米の売上高 から返済を受ける約束である。商人貸の方は信用が基礎で、平生 取引のある商人に対してこれを行ふ。大名貸の利子は年三四朱乃 至五朱にして、商人貸の利子は六七朱であつた。小両替が商人貸 をする場合には何か担保を取ることもあつたが、大両替は担保貸 を潔としなかつた。両替屋が金相場記入のために取引先に手代を やるのは、一方からいへば取引先商店の営業状態を視察せしむる ためであつた。  送金には現送と為替との二種があるが大抵は為替を組んだ。江 戸為替は大阪商人が江戸商人に対し貸勘定となってゐるのを、大 阪町人から在府の諸侯に対する貸付に充てるのである。それで両 替屋は為替の出合に注意し、必要に応じて北浜の金相場会所でこ れを買入れ、一方には江戸藩邸に返金為替を送り、一方には取引 先の江戸両替屋に買集めた為替手形と案内とを出す。さうすると 江戸の両替屋は大阪から送つて来た手形で、江戸の町人から取立 て、また江戸の屋敷では送金為替の到着を待つてこれを振宛てら れた両替屋に通知して正金と引替を命ずる。もし正金が入用でな い場合には両替屋に預けて置く。これが両替屋の利益である。為 替の尻勘定は三月・五月・七月・九月・十二月の五度で、帳簿の 写を交換し、差引残額は次季へ持越す習慣であつた。もし大阪の 商人が江戸への売掛代金を大阪に取寄せたい場合には、大阪の両 替屋に頼んで逆為替を組む。両替屋はその商人を信用すれば直ち にこれを預金に振替へる。尤も信用不明の時は江戸で取立済後に 依頼者の要求に応じた。  【両替屋の店頭(元禄時代) 略】

 


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