貸出には大名貸と商人貸との二つがある。大名貸は十人両替を
始とし、大両替の専業で信用貸には相違ないが秋季廻米の売上高
から返済を受ける約束である。商人貸の方は信用が基礎で、平生
取引のある商人に対してこれを行ふ。大名貸の利子は年三四朱乃
至五朱にして、商人貸の利子は六七朱であつた。小両替が商人貸
をする場合には何か担保を取ることもあつたが、大両替は担保貸
を潔としなかつた。両替屋が金相場記入のために取引先に手代を
やるのは、一方からいへば取引先商店の営業状態を視察せしむる
ためであつた。
送金には現送と為替との二種があるが大抵は為替を組んだ。江
戸為替は大阪商人が江戸商人に対し貸勘定となってゐるのを、大
阪町人から在府の諸侯に対する貸付に充てるのである。それで両
替屋は為替の出合に注意し、必要に応じて北浜の金相場会所でこ
れを買入れ、一方には江戸藩邸に返金為替を送り、一方には取引
先の江戸両替屋に買集めた為替手形と案内とを出す。さうすると
江戸の両替屋は大阪から送つて来た手形で、江戸の町人から取立
て、また江戸の屋敷では送金為替の到着を待つてこれを振宛てら
れた両替屋に通知して正金と引替を命ずる。もし正金が入用でな
い場合には両替屋に預けて置く。これが両替屋の利益である。為
替の尻勘定は三月・五月・七月・九月・十二月の五度で、帳簿の
写を交換し、差引残額は次季へ持越す習慣であつた。もし大阪の
商人が江戸への売掛代金を大阪に取寄せたい場合には、大阪の両
替屋に頼んで逆為替を組む。両替屋はその商人を信用すれば直ち
にこれを預金に振替へる。尤も信用不明の時は江戸で取立済後に
依頼者の要求に応じた。
【両替屋の店頭(元禄時代) 略】
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