跡部山城守は小泉、瀬田の両人を召捕らんとせしに、瀬田は早くも遁
れ、小泉は踏止まつて防戦しけるが、武道は中々練磨しけれども未だ
十八歳の小腕なれば、遂に大勢にて打取りたれども、大塩父子の動静
心元なしと思ひ、直に捕吏を遣はして逮捕せしめんなどゝ議し居ける
中、早くも天満街頭黒煙天を蔽ひて、砲声耳を襲ふに驚き、すは大塩
が押寄せ来るはと恐るゝ事大方ならず、堀伊賀守と計りて急ぎ登城な
し、城代土井大炊頭に前日来の顛末を上申し、是が鎮撫の為に兵衆を
差出されんことを乞ひしに、大炊頭も驚かれて、直に近隣の諸藩へも
命令を伝へ、兵を出して夫々持場を定め、警戒せしめりけり、
御本丸御殿 大御番頭 菅沼織部正人数 玉造口の手 御定番 遠藤但馬守人数
同所桜御門 北條遠江守人数 青屋口の手 二御加番 井伊右京亮人数
土井大炊頭名代 京橋口 一御加番 土井能登守人数
大手口 家老鷹見十郎右衛門人数 同 四御加番 小笠原信濃守人数
米倉丹後守名代 京橋口番所 米倉丹後守人数
山里丸の手 大生仁右衛門人数 山里丸南
土井大炊頭家老 仕切御門 山口惣太郎人数
藤瀬郡右衛門人数 山里丸北
大手先柵外
同番頭 朝倉藤左衛門人数 仕切御門 川尻庄九郎人数
尼木御門 三御加番 米津伊勢守人数 築地門柵外 遠藤但馬守人数
東切手御門 米倉丹後守人数 大手先南手 尼ケ崎 松平遠江守人数
郡山 松平甲斐守人数 同 西手 伯 太 渡辺越中守人数
玉造口加勢 高取 植村伊勢守人数 本町口備 岸和田侯 岡部美濃守人数
青木甲斐守人数 天神橋南詰 堀伊賀守人数
京橋口加勢 永井飛騨守人数 天満橋南詰 土井大炊頭人数
稲葉丹後守人数
斯く部署を定めて厳に防禦を備へしめたれど、急遽の事とてその混雑
言ふばかりなし、
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