Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.8.11

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「大塩の乱関係論文集」目次


「大塩平八郎」
その16

真山青果(1878-1948)

『真山青果全集 第4巻』 大日本雄弁会講談社 1941 収録

◇禁転載◇

第二幕 (5)

管理人註
  

   この前、岡田良之進、泣きながら入り来り、松樹の下に佇む。袖も    袴もほころびて、顔の辺などすこし擦りむく。 宇津木 (良之進を見て)岡田、どうかしたのか。 岡 田 庄司さんは……今、直ぐに、見えるさうです。         宇津木 お前、撲たれたのではないか。(庭に下りる) 岡 田 旧塾の大井兄が後から談判に来ます。 宇津木 君の方から仕掛けたのか。 岡 田 旧塾が一致して、先生を……讒謗するんです。僕、それが、口惜    しいんです。(啜り泣く) 宇津木 うむ、僕に関係したことなら、それで好い。暴悪にさからへばわ         ほろ    あらそひ    が善もまた泯ぶ。紛争を厭ふこゝろ、直ちに強者なのだ。痛むかい、    水で冷してあげよう。    宇津木、岡田をつれて井戸の方へ行く。    河合郷左衛門、憤激してセカ/\入り来る。 河 合 まだ庄司に会はないのか。 平 山 (顔を顰めて、低声)君が来ては困るよ。如何にも申し合せたや    うに見えるぢやないか。御門前に待つてゐてくれよ。     かま 河 合 関はん! こつちは死活の問題だ。 平 山 まア、落着けよ。                  おとし 河 合 先生が悪いんだ。われ/\を陥穽にかけるんだ。 平 山 君は忰を退塾させると云つてゐたではないか。 河 合 無論、退塾だ。いま呼び出しを頼んだから、連れて帰る。(プリ    /\してその辺を歩みつゝ)大塩先生は恐ろしい人だ。自分の門弟    をみな餌とする。増長、暴慢、ありや慢心病なのだ。いよいよ組替    になれば、おれは孫子の代まで先生を怨む。          ぬし 平 山 (苦笑)お主にも弱る。口ばかりも慎しめよ。                   あつし    庄司儀左衛門、火薬製造の姿、厚子に縄帯縄襷、顔も両手も木炭の    粉に塗れて、頬被りを取りつゝ出て来る。 河 合 (ツカ/\と進みてその腕を摘む)儀左、儀左。貴公と云ふ人は、    何んたる料簡だ。 庄 司 何んだ……。(呆れて河合の顔を見る) 河 合 跡部さまはひツしと御立腹だ。組替の取り沙汰、聞かないのか。 庄 司 偖ては――。(面色を変じ)お触れ出しになつたのか。 平 山 河合、待てよ。(と間に入り)庄司兄、困つたことになつた。           おかみ 庄 司 然し、過日御上の御口振りでは――           あぐ         平 山 中斎先生にも厭ねるよ。(嘆息)為ることが執拗過ぎる。御奉行    さまの御腹立ちは、尤もだと思ふ。 庄 司 あ。(手の平を叩き)鴻ノ池一統に対する御用金の建白書ではな    いか。 平 山 それだ。(重く頷首く) 庄 司 あの事なら別條はあるまい。お上にほ書面を御覧の上に、文面の    趣は確かに聴き置く、追つて沙汰もあらうと、書状は穏かに格之助    さままで御下げになつてゐるのだ。 平 山 それは庄司兄、第三回の建白書だらう。饑饉救済のために鴻ノ池    はじめ三郷の分限者に六万両の金を御用申し付け、それを淀川運上    に新規の課税をかけて、三箇年賦に弁済するとか云ふ、先生御自慢    の賦金法だらう。それも聞いたが、今度は別だ。 庄 司 (平山の顔を不安さうに見詰めて)はアて?    河合、木戸口に立ちて先程より頻りに忰八十次郎を探しゐたりしが、    遠くその事を見つけたる心持にて、突然大声で叫ぶ。 河 合 八十々々、おうい、八十次郎、八十次郎! 平 山 (舌打ち、河合を見て)喧ましいなア、話があるんだ。 河 合 こつちも用だ。(プンと面を膨らし、手招きしてわざと大声に)    八十、八十次郎、八十次郎!    八十次郎、走り来る。 八 十 お父さん、何か用ですか。      ば ば 河 合 祖母さまが病気だ。直ぐ願つて宅へ下るのだ。 八 十 厭やですよ。炮術の稽古が出来なくなります。 河 合 話がある。こちらへ来い。        ちやううち 八 十 来月の丁打に、みな競争して稽古してるんだから、宅下りなんか、    僕、厭やですよ。 河 合 こつちへ来い、来い。    河合、塾舎の裏手の方に行く、八十次郎、渋々と随ふ。




























































厚子
厚地の綿織物


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