Я[大塩の乱 資料館]Я
2003.4.15

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大塩の乱関係論文集目次


「宇津木静区と九霞楼」

その8

森 繁夫

『人物百談』三宅書店 1943 より

◇禁転載◇


 渙卿、後にまた佐藤一斎に請うて一章を得、之を九霞楼後記となし、而して、この前後二記を首め、多数の雅客の風藻に対し、これに序を付することを思うたが、未だ其人を得ず其機を得なかつた、

偶々在津の杜多鶴洲、一日静区相伴うて九霞楼を訪問した、主人の歓びはたとふべくもなく、歓待と雅談に時を移した、蒐集癖の主人が此珍客を逸するの理なく、希望の儘に静区は一詩を賦しが、渙卿の慾念は単に之に止まらず、此際に当つて、予て企画せる九霞楼序を、静区に覓むべく請うて止まなかつた、時に恰も二十七歳の壮年であつた静区に対ひ、五十一歳の渙卿が、至嘱々々を口にしたのを見ても、如何にその為人に服してゐたかゞ想像せられる、かくて再三辞退の末に、筆を執つたものが次記の九霞楼序である、鶴洲の所記によれば、「卒爾閣筆」とあるから、恐らくは立所に成稿したものであらう、

此序の原本は、今、田中宗一氏の所蔵に帰するところ、巻子となり、原寸竪九寸、長五尺七寸三分、筆致の荘重典雅なる、巻の箱書をなせる山本梅崕翁が

と題せるは、共鳴を禁め能はざるところである。


「宇津木静区と九霞楼」目次/その7/その9

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