Я[大塩の乱 資料館]Я
2003.4.22

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大塩の乱関係論文集目次


「宇津木静区と九霞楼」

その9

森 繁夫

『人物百談』三宅書店 1943 より

◇禁転載◇


 次で、渙卿はまた鶴洲に属して一文を求め、鶴洲すなはち之に跋を加へた。

 その同日であつたが否かは知らず、静区は、別にまた九霞楼十二景を歌に詠み、之を一景一葉の短冊に揮毫して九霞楼に留めた、その和歌の師承など知るべくもないが、文才縦横の静区として、この風詠あるは敢て異とするに足るまじく、或は、この他にも詠歌の伝はれるものなしとは限らない、この十二枚の短冊は全部完備し、封皮(渙卿の子松田次郎右衛門に宛てたる文書を裏返せる紙)の表面には、渙卿の筆蹟と思しく「短冊十二枚、九霞楼十二景詠歌、天保六年乙未四月廿九日詠子九霞楼、近江彦根藩、宇津木俵二靖 号不息居士」と認め、叮重に保存されてあつたが、其後諸所に離散し今、筆者の視界に儼存せるは、左の七葉のみで、残りの五葉の消息は不明である、其一葉にても知る人あらば題と歌とを示教に預りたい、恐らくは短冊として、珍中の珍に属するものであらう。


「宇津木静区と九霞楼」目次/その8/その10

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