Я[大塩の乱 資料館]Я
2002.9.27

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大塩の乱関係論文集目次


「大塩事件・天保改革と住友の〃家政改革〃

―〃家宰〃鷹藁源兵衛を中心に―」

その1

中瀬寿一

大塩研究 第14号』1982.11 より転載

◇禁転載◇

一 はじめに ―松本清張『天保図録』ヘの若干の問題提起― (1)

 前稿「大塩事件と泉屋住友の〃家事改革〃(上・下)」(『大塩研究』第五号、第九号、第十号)「大塩事件と特権的門閥町人層の衝撃」(『大阪産業大学論集』第五三号)および「大塩事件の衝撃と住友・三井・鴻池の〃家政改革〃」(『経営史学会第一七回大会報告集』八一年一一月)その他の一連の研究において、私は、大塩事件による大坂船場焼打ちと特権的大門閥町人層の深刻な衝撃を明らかにした。そして「其恐懼シキ事不可云」「今日之大変子細未分明、然国初以来凶変実不可言」と『天保日記』の筆者(加島屋某といわれる)に書かせ、三井をして「誠に絶言語前代未聞之大変にて、難尽筆紙」「全体大塩何故、右之騒動被致候事哉相分不申、偖々不怪儀出来」(『稿本三井家史料−小石川家第六代三井高益』六五〜七〇頁)と叫ばせ、泉屋住友の〃家宰〃鷹藁源兵衛をして、「一昨年之大変幸ひ北方角にて事済候故無故障候得共、万一南辺にて箇様の変事有之候ハ、忽可及大事…常々其備立置不申てハ、其時ニ臨ミ後悔仕候ても不及」「今改革セサレバ主家ノ存亡二関シ黙止シ難」し(天保一〇年一一月一三日付意見書、住友家史『垂裕明鑑』巻之十九)と〃家事改革〃意見書を書かせた―その衝撃の大きさと深刻な危機感を掘りさげた。さらにそこから幕政改革なり、藩政改革と、かなりつながりのある大門閥町人層の〃家政改革〃(いわば当時なりの〃財閥転向〃=幕府一辺倒から面従腹背へ)の試行錯誤の過程が始まることを明らかにし、天保改革や「開国」をへて、やがて明治維新に展開していく、歴史のダイナ ミズムの一歩一歩をさぐろうとした。

 そのなかで、水野越前守と泉屋住友との結びつきの深さを文政年間にさかのぼって年表史的に考察しておいたが、史実に忠実なノン・フィクション作家として定評のある松本清張氏も、歴史的に興味深い作品『天保図録』のなかで、次のようにいきいきとえがいているのが注目され る―。


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中瀬寿一「大塩事件と泉屋住友の〃家事改革〃


「大塩事件・天保改革と住友の〃家政改革〃」目次/その2

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